第II部 わが国の安全保障・防衛政策
2 わが国の防衛の基本方針
防衛大綱は、わが国の防衛の基本方針について、次のように定めている。
1 基本方針
わが国は積極的平和主義の観点から外交力、防衛力などを強化し、日米同盟を基軸として各国との協力を進め、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本方針に従い、文民統制の確保や非核三原則を守ってきた。このような平和国家としての歩みを決して変えることはない。また、わが国がこれまでに直面したことのない安全保障環境の現実の中でも、国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空及び主権・独立を守り抜くといった国益を守っていかなければならない。
防衛の目標は、望ましい安全保障環境を創出するとともに、脅威を抑止し、万が一、わが国に脅威が及ぶ場合には、これに対処することである。これらの目標を達成するための手段として、①わが国自身の防衛体制、②日米同盟、及び③安全保障協力をそれぞれ強化していく。また、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における優位性の早期獲得を含め、これらを迅速かつ柔軟に行っていかなければならない。
また、核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、わが国は米国と緊密に協力していくとともに、わが国自身による対処のための取組を強化する。同時に、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていく。
2 わが国自身の防衛体制の強化
防衛の目標を確実に達成するため、あらゆる段階において、防衛省・自衛隊のみならず、政府一体となった取組及び地方公共団体、民間団体などとの協力を可能とし、わが国が持てる力を総合する防衛体制を構築する。
わが国の防衛力の強化については、厳しさを増す安全保障環境の中で、軍事力の質・量に優れた脅威に対する実効的な抑止や対処を可能とするため、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力を構築していく。これらの取組によるわが国の防衛力は、図表II-2-2-2（防衛力が果たすべき役割）にあげた役割を平素からシームレスかつ複合的に果たせるものでなければならない。
参照図表II-2-2-2（防衛力が果たすべき役割）
3 日米同盟の強化
日米安全保障体制はわが国の安全保障の基軸であり、また、日米同盟は国際社会の平和と安定及び繁栄にとっても重要な役割を果たしている。このような観点から、日米同盟の抑止力・対処力の強化、幅広い分野における協力の強化・拡大及び在日米軍駐留に関する施策の着実な実施のための取組を推進する必要がある。
4 安全保障協力の強化
「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進する。その一環として、防衛力を積極的に活用し、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流などを含む防衛協力・交流に取り組み、また、グローバルな安全保障上の課題への対応にも貢献していく。また、こうした取組の実施にあたっては、外交政策との調整を十分に図るとともに、日米同盟を基軸として、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々との緊密な連携を図る。
