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巻頭特集 未来につながる安全保障

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未来につながる安全保障

日本の安全保障環境は厳しい状況に置かれています。

日本への侵攻を考える相手に「侵攻はやめた方がよい」と思わせる体制をつくることが重要であり、防衛省・自衛隊は、防衛力の一層の強化と変革を進めています。

この特集では、なぜ防衛力の強化と変革が必要かに簡単に触れながら、そうした取組が私たちの生活や経済にもよい影響を与えていくことをわかりやすくお伝えします。

最先端技術と安全保障のつながり

写真 EPA=時事

写真 EPA=時事

この写真は、多数の人工衛星が並んで空を横切る様子をとらえたものです。多数の小型人工衛星を連携して運用するシステムを「衛星コンステレーション」といいます。

このような技術により、私たちは、安定的で切れ目のない宇宙からの観測、通信サービスを利用することができます。

また、安全保障という側面からは、作戦の行方を左右する戦況把握や遠距離に所在する部隊間の通信にも活用できるものです。

未来への不安を希望に変える

私たちは今、少子化、物価高、緊迫する国際情勢、そして地方の衰退などの課題に直面しています。

こうした不安を希望に変えていくため、政府は様々な分野に投資し、成長につなげる取組を進めています。

防衛省においては、防衛力の強化・変革に取り組んでいますが、防衛分野に投資をすることは、経済的な成長にもつながっていきます。

はじめに、いま、世界で起きている出来事から見ていきます。

新しい戦い方の登場

科学技術の進歩などにより、これまでとは異なる新しい戦い方が次々に生まれています。

ウクライナ侵略では、安価で多様なドローンが数多く使われています。これは、敵の位置を探したり、高価で重要な装備を攻撃したりするために活用されています。また、ミサイルと安価なおとりドローンを組み合わせることで、相手の対処を難しくするなど、複雑な攻撃も行われています。

さらに、ウクライナでは、カメラを積んだドローン、衛星などをネットワークでつなぎ、多くの情報を集めています。集められた情報はAIで分析され、部隊が今どういう状況にあるかといった、指揮官の判断に必要な情報がすぐに共有されます。その結果、現場では迅速で的確な対応が可能となっています。

このほか、偽の情報を広め、相手を混乱させるといった戦い方も行われています。

このように、今の戦いでは、技術と情報の使い方がより大きな意味を持つようになっています。

装備や戦い方も、とても短い時間で次々に変化しています。そのため、すばやく、状況に合わせて技術を更新していくことが、より重要になっています。

例えば、戦いにドローンが使われるようになったことにより、次はそのドローンに妨害電波を当てて飛行不能にする攻撃が広く行われるようになりました。すると、これに対応するため、電波の影響を受けないよう、光ケーブルでつないで動かすドローンが使われるようになりました。このケーブルはとても細く、長いものでは数十キロメートルにも及びます。

ロシアによるウクライナ侵略は4年以上も続いています。装備や物資などについて、平時から十分に確保するほか、万一の場合には増産できるようにするなど、持続的に対応できる力を持つことが、これからの国の守りではより大切になっています。

日本を取り巻く厳しい安全保障環境

日本を取り巻く安全保障環境は、近年、大きく変化しています。

領土の獲得などを目的として、国際社会のルールに反する形で、軍事力などを使い、現状を一方的に変えようとする動きが見られます。

インド太平洋地域に目を向けると、中国や北朝鮮が軍事力を高めています。中国の国防費は十分な透明性を欠いたまま大きく増え続けており、北朝鮮も、核兵器や、撃ち落とされにくいミサイルの開発を続けています。

また、中国とロシアは、共同で行う軍事演習の内容を充実させたり、長距離にわたって爆撃機などを共同で飛行させたりするなど、連携を深めています。

さらに、北朝鮮とロシアの間でも、軍事協力が深まっています。北朝鮮は、武器・弾薬の提供や兵士を派遣するなどウクライナ侵略でロシアを支え、その見返りとして、ミサイルなどの兵器に関する技術を獲得するおそれがあり、深刻に懸念されます。

東シナ海などにおける中国の活動

尖閣諸島周辺における中国の動き

●中国海警船などの勢力増強

●中国海警船などの勢力増強

●中国海警船などの年間接続水域内確認日数

●中国海警船などの年間接続水域内確認日数

●中国海警船などの年間領海侵入件数

●中国海警船などの年間領海侵入件数

海軍艦艇が尖閣諸島周辺で恒常的に活動しています。

無人機の活動の活発化

●無人機(推定含む)の活動公表回数 ※東シナ海以外の活動も含む

●無人機(推定含む)の活動公表回数

中国は、軍事力を背景に、力または威圧による一方的な現状変更の試みを強化しています。

こうした中国の軍事活動は、日本の安全に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

こうした中国の軍事活動は、日本の安全に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

中国空母の太平洋への進出

中国とロシアの軍事連携

① 海軍共同演習「海上協力」

中露海軍は2012年以降、ほぼ毎年共同演習を実施。年々演習内容は充実。

※近年の例では、2024年に南シナ海、2025年は日本海で実施。

(図示は2025年の例)

② 爆撃機の共同飛行

2019年以降、爆撃機の共同飛行を毎年1~2回実施。

さらに、2025年12月には、中露の爆撃機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して、共同飛行としては初めて太平洋上を四国沖まで長距離にわたり飛行した。

(図示は2024年および2025年の例)

●2025年12月共同飛行の様子

●2025年12月共同飛行の様子

③ 艦艇の共同航行

2021年以降、共同航行を毎年実施。活動海域は拡大。

(図示は2021年および2023年の例)

●2021年10月中露共同航行の様子

●2021年10月中露共同航行の様子

④ 軍事演習への相互参加

北朝鮮とロシアの軍事協力

ウクライナ侵略が続く中、北朝鮮は、弾道ミサイルを含む武器や弾薬をロシアに提供しているほか、兵士をロシアに派遣するなどして、ロシアとの軍事協力を進めています。

こうした協力を通じて、北朝鮮の軍事力が高まるおそれがあります。例えば、ウクライナに対する攻撃に使われている弾道ミサイルに関しては、ロシアから提供されたデータによりその精度が向上したと指摘されるなど、更なる性能向上が懸念されます。加えて、ドローンなどを使った新しい戦い方も経験しており、教訓が北朝鮮軍全体に普及されるおそれがあります。

また、ロシアへの支援と引き換えに、核兵器やミサイルに関する技術が北朝鮮に移転するおそれについても、深刻に懸念されます。

わが国を守るために

ここまで、世界で生まれつつある新しい戦い方や、日本を取り巻く安全保障環境について見てきました。こうした状況を踏まえ、日本を守るために何をすべきかを考える必要があります。

まず、ウクライナ侵略の例では、ロシアのように高い軍事力を持つ国が、ある時点で「他国を侵略する」という意思を持ったことに注目すべきです。国家の考えや行動を外部から正確に把握することは難しいため、相手の意図だけでなく、持っている能力を前提として、対処に必要な防衛力を整えておくことが重要になります。

防衛力の強化は、十分な防衛力を備えることで侵略を未然に防ぎ、国民生活の大前提となる平和と独立を守るためのものです。また、経済が成長するためにも、平和と独立は欠かせません。防衛力を強化することは、日本が安定した環境の中で経済成長を続けていくための基盤を整えることにもつながっています。

SHIELDの構築

「意思決定の優越」の確保

情報通信分野では、大量のデータをリアルタイムでやり取りし、AIなどを活用して処理や分析を行うことができるようになっています。

技術を活用することで、指揮官が、相手よりも早く、かつ正確に意思決定を行えるようになり、「意思決定の優越」が確保された守り方が可能になります。

防衛省・自衛隊でも、さまざまな通信回線を活用して通信妨害に備えたネットワークの整備を進めるとともに、カメラを積んだドローンやAIを活用し、必要な情報を適切なタイミングで処理・分析できるシステムの構築に取り組んでいます。

さらに、こうした取組に民間企業の先端技術を取り入れ、改善を行うことで、民間分野における技術の進展にもつながることが期待されます。

わが国全体での連携

日本を守るためには、防衛省・自衛隊の取組だけでなく、日本全体で連携して対応することが重要です。

例えば、自衛隊が使用する多くの装備は、様々な企業が製造に携わっています。

そのため、自衛隊の活動に対し監視や妨害などをする目的で、自衛隊の装備を製造する企業にサイバー攻撃が加えられ、装備に関する秘密の情報を盗まれたり、自衛隊の機能に支障が生じるおそれがあります。

そして、このようなサイバー攻撃は、自衛隊や関係企業だけではなく、日本のすべての企業や組織で発生するおそれがあります。

このようなリスクには、自衛隊だけで対応するのではなく、わが国全体で連携する必要があります。

日本のすべての企業や組織のセキュリティを向上させることが、平和な暮らしを守ることにつながります。

同盟国・同志国との連携

日本の防衛に日本が自ら取り組むことが重要なのは言うまでもありません。しかし、厳しい安全保障環境の中では、今やどの国も、一国だけで平和を守ることは難しくなっています。

例えば、地理的には遠いヨーロッパで起きているウクライナ侵略も、日本と無関係ではありません。特に、北朝鮮とロシアの軍事協力を通じて、日本周辺の安全保障環境を悪化させる可能性があります。

こうした状況を踏まえると、平和と安定を維持するためには、法の支配といった価値やルールに基づく秩序を守ることが重要であり、わが国そして地域の抑止力の向上を目指し、同盟国や同志国と連携を強化していくことが欠かせません。

プロフェッショナルな自衛隊員

防衛力の中核を担うのは、自衛隊員です。

自衛隊員には、陸・海・空で 部隊を動かす自衛官のほか、政策や法律を立案する事務官、技術を活かして装備品の研究や施設の整備を行う技官、さらには安全保障に関する研究や教育を行う教官などがいます。

厳しい安全保障環境において、国民の皆様の命と日常を守り抜くためには、隊員一人一人が自分の持ち場において、専門的な知識や技術を備えたプロフェッショナルになることが求められています。

すべての隊員が高い士気と誇りを持ち、それぞれの能力を十分に発揮できる環境を整えるため、給与や生活・勤務環境など、処遇の改善 にも取り組んでいます。

今後も、新しい守り方を実現するため、例えば、新たに導入されるドローンのような装備を使いこなせる人材など、多様で質の高い自衛隊員の確保を進めていきます。

持続的な対応能力の確保

ウクライナ侵略が長期化する中で、各国は、長期間戦いを続けるために物資や装備を生産し続けられる能力の重要性を認識し、自国内の生産基盤を強化しています。日本も、侵攻しようとする相手に「事態を長期化させれば侵攻が成功する」と思わせないことが重要です。

そのため、他国との協力も含め、持続的に、粘り強く国民を守り続ける対応を支える生産能力を確保するため、平素の生産能力を維持強化するとともに、必要に応じて、さらに拡大できる体制を整える必要があります。

また、防衛と民間の両方に使える(デュアルユース)構成品や技術が広がっていることを踏まえると、防衛力を強化するため、製造の基盤などに投資することは、国内外の市場において日本企業の競争力を強くすることにつながります。そしてまた、国内外の市場を通じて強化された基盤が防衛に用いられ、装備の質と量の向上につながることも期待されます。

例えば、ドローンは民間分野でも、人手不足が深刻な分野を中心に活用が進んでいます。このような状況を踏まえると、今後、防衛力を強化するために、国内の事業者からドローンを調達することは、国内の事業者が製造を行う基盤を整え、競争力を高めることにつながり、ひいては 「経済成長」にも貢献すると考えられます。

技術的優越の確保

最先端の科学技術を装備に迅速に活用することは重要です。また、デュアルユース技術とよばれる民間技術の取込みも欠かせません。そこで、各国は、研究の担い手である大学や、国立研究開発法人、小規模で発足間もないものの高い技術力を持つ企業(スタートアップ)などと連携しています。

防衛省・自衛隊では、将来、防衛分野での活用が期待される技術を育成するために、先進的な技術の基礎研究を支援しているほか、スタートアップが政府と迅速に契約できる仕組みも構築しています。

こうした取組により、デュアルユース技術を装備に取り込むことが防衛力を強化するため不可欠であるほか、最先端の科学技術の発掘・育成が進むことで日本の競争力が高まり、経済成長にもつながることが期待できます。

写真 セコム株式会社

写真 セコム株式会社

「デュアルユース」技術の例

この写真は、敷地内に侵入した不審者をAIで検知し、自動で追跡する警備会社のドローンです。

防衛省・自衛隊は、民間の技術・製品を装備品目的にカスタマイズする「スピンオン」と、装備品用に研究開発した技術を民生分野で活用する「スピンオフ」によって、デュアルユース技術が育成されていくことは、技術基盤の維持・強化の観点から極めて利点が大きいと考えています。

このドローンは民生で実用化レベルにあった技術を防衛装備庁の事業において実証した「スピンオン」の事例であるとともに、安全保障分野で研究開発したその技術を再び民生分野でも活用した「スピンオフ」の事例であるということもできます。

おわりに

現在、日本を取り巻く安全保障環境は、厳しさを増しています。こうした中、防衛省は、私たちの生活にとってもっとも重要な平和と独立を守るため、さまざまな取組を進めています。

これまで見てきたように、これらの取組の中には、直接、または間接的に、私たちの生活や経済に良い影響をもたらすものがあります。

防衛白書の本文では、国際情勢や防衛政策について、さらに詳しく、分かりやすく解説しています。

引き続きご覧いただければ嬉しいです。