第1章 わが国自身の防衛体制
わが国に対する侵攻への対応など
- 海に囲まれ長大な海岸線を持つわが国は、本土から離れた多くの島嶼(しょ)や広大な排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を有しており、そこに広く存在する国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空と多くの資源を守り抜くことが課題である。また、資源や食料の多くを海外との貿易に依存するわが国にとって、自由で開かれた海洋秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することも不可欠である。
- 防衛省・自衛隊は、統合作戦司令部の一元的な指揮の下、陸・海・空の領域と宇宙・サイバー・電磁波の領域における作戦能力などを有機的に融合させるとともに、陸・海・空自の部隊を連携させて統合作戦を行い、わが国に対する侵攻を阻止・排除する。
- また、侵攻への対処だけでなく、力による一方的な現状変更やその試みなどにも対応するため、平素から常時継続的に情報収集・警戒監視を行い、領空侵犯や領海侵入に対しても迅速かつ的確に対応する態勢を維持している。
- 2025年度の緊急発進(スクランブル)回数は595回(中国機に366回、ロシア機に214回)であった。同年度中は、12月には中国戦闘機による空自戦闘機に対するレーダー照射などの事案が生起したとともに、中露爆撃機による共同飛行も確認されており、小泉防衛大臣は、同月に発生したこれらの事案について諸外国に説明し、強い懸念を表明した。
- さらに、偽(にせ)情報の流布や、政府の信頼低下、社会の分断を狙った情報の拡散などにより、人の認知に働きかけ、世論や政府の意思決定に影響を及ぼす「認知領域を含む情報戦」にも対応し、その中心的な役割を担う情報本部が必要な措置を講じている。
- このほか、国連安保理決議に違反する北朝鮮の「瀬取り」への対応や、わが国の重要なシーレーンの安定的利用を確保するため、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処や中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な取組も継続して行っている。

緊急発進の対象となったロシア機と中国機の飛行パターン例(2025年度)
わが国の防衛力の抜本的強化
- 相手の能力に着目し、抑止力と対処力を高めるために、「スタンド・オフ防衛能力」、「統合防空ミサイル防衛能力」、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」の7つの分野を重視して、わが国の防衛力を抜本的に強化している。
- スタンド・オフ防衛能力の強化としては、25(ニゴ)式地対艦誘導弾、25(ニゴ)式高速滑空弾、極超音速誘導弾の着実な整備のほか、目標収集情報などに関する取組も進める。
- 統合防空ミサイル防衛能力の強化としては、迎撃アセットやセンサー・ネットワークなどの強化を行う。迎撃アセットの強化としては、陸自03(マルサン)式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型への改修や日米で共同開発した、イージス艦に搭載するSM(Standard Missile)-3ブロックIIAの取得、イージス・システム搭載艦の建造などを着実に実施していく。
- 領域横断作戦能力の強化としては、宇宙領域を活用した情報収集能力などの強化、宇宙領域把握(SDA)の強化を行うとともに、宇宙領域が単なる監視活動の対象ではなく作戦行動を行う領域となることを踏まえ、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」へ改編する。
- また、サイバー防衛体制の強化、防衛産業におけるサイバーセキュリティ対策の推進、戦闘機(F-35A/B)などの取得、小型無人機や巡航ミサイルなどへの対処に関してミサイル対処用レーザーシステムの研究などを行う。
- さらに、南西地域における防衛体制を強化するため、陸自第15旅団を第15師団に改編する。
- 無人アセット防衛能力の強化としては、2027年度中の無人アセットによる多層的沿岸防衛体制SHIELD(Synchronized, Hybrid,Integrated and Enhanced Littoral Defense)の構築を目指し、安価かつ大量のUAV、USV、UUVを取得する。

イージス・システム搭載艦(イメージ)

多層的沿岸防衛体制(SHIELD)(イメージ)
国全体の防衛体制の強化
- 政府は、防衛力の抜本的強化に加えて、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合し、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて国全体の防衛体制を構築することとしている。
- このため、総合的な防衛体制の強化を進めることとし、「研究開発」、「公共インフラ整備」、「サイバー安全保障」、「わが国と同志国の抑止力の向上などのための国際協力」の4つの分野における取組を推進することとしている。
- このほか、平素からの常時継続的な警戒監視や宇宙領域に関する取組、大規模災害や在外邦人等の保護措置・輸送への対応なども、国の総力を挙げて対応すべき取組であるため、防衛省・自衛隊は、関係省庁などと緊密に連携して各種活動を行っていく。
- サイバー安全保障に関しては、2025年5月にサイバー対処能力強化法と同整備法が成立したことを受け、防衛省・自衛隊は、関係省庁と連携して政府の取組に積極的に貢献していく。
- また、災害派遣に関して、2025年度は、台風、地震などによる災害派遣などにおいて、関係省庁と連携して活動を行った。
わが国自身による防衛体制を強化するための訓練・演習など
- 防衛省・自衛隊は、様々なハイレベルの共同訓練・演習や他省庁・自治体を交えた各種演習を積極的に行い、抑止力・対処力のさらなる向上に努めている。
- 2025年6月には、硫黄島において初めて無人機による実機雷処分の試験を行った。

無人機による機雷処分の瞬間
第2章 日米同盟
日米安全保障体制の概要
- わが国は、民主主義、人権の尊重、法の支配、資本主義経済といった基本的な価値観や世界の平和と安全の維持に関する利益を共有し、経済面においても関係が深く、かつ、強大な軍事力を有する米国との安全保障体制を基軸として、わが国の平和、安全や独立を確保することとしている。
日米共同の抑止力・対処力の強化
- わが国の防衛戦略と米国の国防戦略は、あらゆるアプローチと手段を統合させて、力による一方的な現状変更を起こさせないことを最優先とする点で一致している。
- 日米の役割・任務・能力に関する議論をより深化させ、日米共同の統合的な抑止力をより一層強化していく。

日米首脳会談(2026年3月)【首相官邸ホームページ】
同盟調整機能の強化
- 日米両国による整合的な共同対処を切れ目のない形で実効的に対処することを目的として、同盟調整メカニズム(ACM)を設置している。以降、例えば、熊本地震や能登半島地震、北朝鮮の弾道ミサイル発射や尖閣諸島周辺海空域における中国の活動について、日米間ではACMも活用しながら、緊密に連携している。
- 国家防衛戦略では、ACMを中心とする日米間の調整機能をさらに発展させるほか、日米同盟を中核とする同志国などとの連携を強化するため、ACMなどを活用し、運用面におけるより緊密な調整を実現するとしている。

日米防衛相会談(2026年5月)
在日米軍の駐留に関する取組
- 日米同盟がわが国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることや、在日米軍が緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢がとられていることなどが必要である。
- 日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するとともに、沖縄をはじめとする地元の負担を軽減するため、在日米軍再編に向けた取組を着実に進めていく。
日米共同訓練・演習など
- 日米同盟は、わが国の安全保障にとって不可欠であり、その抑止力・対処力の強化にあたり、日米共同訓練は重要な役割を果たしている。
- 自衛隊は、各軍種間の共同訓練や日米共同統合演習(実動演習および指揮所演習)を着実に積み重ねており、自衛隊の戦術技量の向上や米軍との連携強化などを図るとともに、地域の平和と安定に向けた日米の一致した意思や能力を示していく。

米陸軍との実動訓練「ノース・ウインド26」(2026年1月)
第3章 同志国などとの連携
多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進
- 力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出していくため、同盟国のみならず、一か国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要であり、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現のため、多角的・多層的な防衛協力・交流を推進していく。
- インド太平洋、欧州、中東・アフリカ・中南米など、様々な地域の国々との間で、ハイレベル交流、共同訓練、能力構築支援、防衛装備・技術協力を行う。さらに、円滑化協定(RAA),物品役務相互提供協定(ACSA)などの制度的な枠組みの整備など、多様な手段を適切に組み合わせ、二国間・多国間の防衛協力・交流を多角的・多層的に推進し、望ましい安全保障環境の創出につなげていくことが重要である。
同志国との訓練・演習など
- FOIPの実現に向けた取組として、広くインド太平洋地域において同盟国・同志国などとの共同訓練を積極的に推進していく。
- 特に、共同訓練などといった共通の取組を同盟国・同志国などと行い、各国の能力・練度の維持・向上および共同・連携による抑止力・対処力の強化により、相乗効果を発揮することで、力による一方的な現状変更やその試みを許さない安全保障環境の創出を図っていく。

第12回ADMMプラス(2025年11月)
国際平和協力活動への取組
- エジプトとイスラエルの停戦監視を任務とする多国籍部隊・監視団(MFO)や、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に、司令部要員などの派遣を継続していく。
- 国連事務局やPKO訓練センターなどへの職員派遣、国連三角パートナーシップ・プログラム(UNTPP)への支援などを通じ、国連の国際平和に向けた努力に対して積極的に貢献していく。
- 自衛隊は、国際緊急援助活動について、被災国からの緊急の要請に対応できる態勢を常時維持する。

英空母打撃群(CSG)展開に伴う共同訓練(2025年10月)
国際社会全体との連携
- 防衛省・自衛隊は、軍備管理・軍縮・不拡散にかかわる国際的な体制整備や訓練に、積極的に参画していく。
- 大量破壊兵器などの拡散防止や自衛隊の対処能力の向上などの観点から、各種訓練や会合の主催、他国の行う同種活動への参加など、拡散に対する安全保障構想(PSI)を含む不拡散体制の強化に向けて取り組んでいる。
- 女性・平和・安全保障(WPS) について、基本的人権の尊重および法の支配の確保を追求する諸外国の国防当局などと協調しつつ、防衛省としても、国際社会の責任ある一員として、WPSを推進し、インド太平洋地域、ひいては国際社会の平和と安定に寄与していく。
- 海洋国家であるわが国にとって、自由で開かれた海洋秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することは、必要不可欠であり、海賊対処をはじめ、海洋状況監視などの海洋安全保障に関する取組を推進していく。

第2回日ASEAN WPS協力プロジェクト(2025年7月)
第4章 地域社会や環境との共生に関する取組
地域社会との調和にかかる施策
- 防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となるものであり、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていく必要がある。
- わが国の安全を確保するうえで極めて重要な要素である在日米軍が安定して駐留するためにも、周辺地域の理解と協力を得ることは不可欠である。
- 2025年に開催された日本国際博覧会(大阪・関西万博)においては、防衛省・自衛隊は、7月、ブルーインパルスによる展示飛行を行い、大阪府夢州会場上空および府内各地において演目を実施するなど、必要な協力を行った。

万博会場上空を飛行するブルーインパルス
気候変動・環境問題への対応
- 防衛省・自衛隊は、気候変動や環境問題の各種課題に対応し、解決に貢献するとともに、自衛隊施設や米軍施設・区域と周辺地域の共生について、より一層重点を置いた施策を進めていく。
- 2025年7月には、地球温暖化対策計画を踏まえ、防衛省の事務・事業に関する温室効果ガスの排出削減計画を策定し、2013年度を基準として、防衛省の事務・事業に伴い直接的・間接的に排出される温室効果ガスの総排出量について、2030年度までに50%、2035年度までに65%、2040年度までに79%削減するといった新たな目標を設定した。
情報発信や公文書管理・情報公開など
- 防衛省・自衛隊は、活動や取組などを国民に理解してもらえるよう、公式ホームページ、SNS、動画配信、広報誌『MAMOR(マモル)』の編集協力、報道機関への取材協力のほか、各種イベントや広報施設などにおいて様々な方法で積極的に広報活動を行っている。
- 防衛省・自衛隊は、例年、全国から多数の部隊・装備を一か所に集結させ、観閲式、観艦式、航空観閲式を行ってきたが、わが国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面していることから、わが国を取り巻く安全保障環境が大きく変化しない限り、観閲式、観艦式、航空観閲式を実施しないこととした。
- 行政文書の電子的管理を推進するとともに、行政文書管理や情報公開請求への対応を適切に行っている。

広報誌『MAMOR(マモル)』

撮影協力の様子(Prime Original映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』)
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