MAMOR(マモル)2022年3月号

MAMOR(マモル)は、防衛省が編集協力をしている唯一の広報誌です。
防衛省の政策や自衛隊の活動を分かりやすく紹介し、国民とともに防衛を考える広報誌を目指しています。

特集

知将の陰に名参謀あり
勝つために幕僚がいる! 
歌舞伎のマモリビト・中村獅童が統幕副長と語り合った!

Military Report

敵の侵略を想定し全陸自隊員が参加する実働演習
「陸演」いざ九州へ

編集後記

編集長 高久 裕

防衛庁が「省」に昇格した2007年1月に月刊『MAMOR』は創刊されました。

07年といえば、安倍首相が突然辞任し、中越沖地震に自衛隊が災害派遣され、テロ対策特措法が期限切れとなってインド洋上で給油活動をしていた海上自衛隊が撤収し、6カ国が北朝鮮の核無能力化で合意し、米軍がイラク駐留の兵力を2万人以上増強し、ハマスがガザを制圧した年です。

あれから15年。わが国を取り巻く安全保障環境は、ますます複雑かつ危機的状況になっています。多くの、とくに若い国民の皆さんに、日本の防衛政策や自衛隊の活動について知ってもらうための雑誌『MAMOR』の使命は、より一層強くなったと感じています。

15周年記念号の特集は「幕僚」。幕僚とは、作戦などを企画立案・実施し、指揮官を補佐する者のことです。

特集では、歌舞伎役者の中村獅童さんにも登場いただいて、歴史上の参謀から、自衛隊の幕僚まで、重層的に特集しました。

平和な日本を守るため、われわれ国民全員が「幕僚」となって自衛隊を補佐すべく、知識を深めたいと思います。その一助になれば、と特集しました。ぜひ、ご一読あれ!

特集

知将の陰に名参謀あり
勝つために幕僚がいる! 
歌舞伎のマモリビト・中村獅童が統幕副長と語り合った!

ライター 古里 学

今回、幕僚に関してお話をうかがった前統幕議長の河野氏によると、司令官は常に上機嫌で前向きでなければならない、陰気だったりネガティブ思考の人は統率者に向いていないが、幕僚に関しては必ずしもそうではないということ。一例をあげていただいたのが連合艦隊司令長官の山本五十六と、その主席参謀だった黒島亀人少将です。黒島は艦艇の自室に裸で閉じこもって、食事も風呂も抜いてタバコばかり吸って真珠湾攻撃のプランを作成したという変人。この黒島の力量を山本は非常に高く評価し、黒島は戦後に山本未亡人を援助するなど、お互い厚い信頼関係を築いていました。

しかしこのような幸福な司令官と幕僚の関係はそんなにあるわけではなく、トハチェフスキー元帥を粛正したスターリン、SAのレームやロンメル将軍を排除したヒトラー、劉少奇や林彪を追い落とし鄧小平を何度も失脚させた毛沢東など、歴史上ではトップに嫌われた優秀なナンバー2も多くいます。ただその後に必ず組織の混乱と弱体を招いてしまうのも部下の能力の高さゆえでしょう。

一人の司令官を大勢のスタッフが支える幕僚制のもう一つの典型がアメリカ大統領です。クリントン大統領をモデルにしたという映画『パーフェクト・カップル』では、いろいろスキャンダルに襲われる大統領候補を選挙参謀たちが必死でサポートするさまが面白く描かれています。笑いながらも考えてしまうこの作品、ご参考までに。

カメラマン 荒井 健

今回はインタビュー中の写真を撮らせていただきました。

インタビュー中は話を聞いているのですがすごく集中しているというわけではなく、かといって聞き流すというのでもないなんというかニュートラルな感じです。なので、被写体の話し声や目の印象と、新しい発見があると強く印象に残ります。このインタビューでは「初めて知ること、私の勘違い」が多くそれぞれの命令系統の意義を知り、自分の勘違いを正すことができ、印象に残る話を多く聞けました。そして今回歴史家の方にもお話を聞いているので、歴史的観点からのアプローチも面白く歴史を振り返り、理解を深めることになる良いきっかけになるのではないでしょうか。それぞれの役割命令系統はなかなか普段の生活では理解しにくいかもしれないですが、このインタビューが理解を深めることに一役買ってくれることでしょう。さらに歌舞伎界からは数々の歴史の偉人を演じてきた中村獅童さんが登場しますので期待してください!

Military Report

敵の侵略を想定し全陸自隊員が参加する実働演習
「陸演」いざ九州へ

ライター 臼井総理

今回の「陸演」。各種報道を見聞きすることで、どんな演習を行ったかの概要はわかったのだが、一方で疑問もたくさん湧き上がった。特に、どの媒体でも強調されている「約30年ぶりの大規模演習」という点に引っかかった。

「なぜ30年ぶり?」
「前回は何をどのくらいの規模でやったの?」
「陸演以外の大規模な演習は存在しなかったの?」
そんなとき、運良くMAMOR編集部から取材・執筆の依頼が舞い込んだ。残念ながら諸般の事情で実際に全国各地に赴いての現地取材はできなかったが、さまざまな資料を読み、防衛省の担当者へインタビューを行ったことで、自分なりに陸演の全容を掴むことができた。先の個人的疑問の答えも含め、誌面の制約はあるものの、最大限記事化できたと思う。

今回の「陸演」で得た知見を国防にどう活かすかは、これからの課題。陸上自衛隊のさらなる努力に期待したい。

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