国家防衛戦略
Ⅵ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組

1 国民の生命・身体・財産の保護に向けた取組

 我が国が備えるべき事態は、力による一方的な現状変更やその試み、そして我が国への侵攻のみではない。大規模テロやそれに伴う原子力発電所を始めとした重要インフラに対する攻撃、地震や台風等の大規模災害、新型コロナウイルス感染症といった感染症危機等は、国民の生命・身体・財産に対する深刻な脅威であり、我が国として、国の総力をあげて全力で対応していく必要がある。

 それらの対応に当たって、防衛省・自衛隊においては、抜本的に強化された防衛力を活用し、警察、海上保安庁、消防、地方公共団体等の関係機関と緊密に連携して、大規模テロや重要インフラに対する攻撃に際しては実効的な対処を行い、大規模災害等に際しては効果的に人命救助、応急復旧、生活支援等を行うこととする。また、外国での災害・騒乱等が発生した際には、外交当局と緊密に連携して、在外邦人等を迅速かつ的確に保護し、輸送する。

 防衛力を活用しつつ、このような対応を円滑に実施するためには、平素から関係機関と連携態勢を構築しておくことが必須である。地方公共団体やインフラ事業者を含む関係機関と共に、各種計画等を踏まえつつ、その実効性を担保するために、総合的な訓練を実施する。また、このような連携態勢を活用し、我が国への侵攻が予測される場合には、住民の避難誘導を含む国民保護のための取組を円滑に実施できるようにする。

2 国際的な安全保障協力への取組

 我が国の平和と安全のためには、国際社会の平和と安定及び繁栄が確保されていなければならない。そのため、防衛省・自衛隊としても、抜本的に強化された防衛力を活用しつつ、国際協調を旨とする積極的平和主義の立場から、世界各地における紛争・対立の解決に向けた努力、気候変動等に起因する国際的な大規模災害に際しての人道支援・災害救援、大量破壊兵器の不拡散等の国際的な課題への対応に積極的に取り組んでいく必要がある。

 国連平和維持活動(PKO)を始めとする国際平和協力業務、国際緊急援助活動等の国際平和協力活動については、平和安全法制も踏まえ、必要に応じ、遠隔地であっても、情報関連機能を用いて精緻な情報を収集し、機動展開能力により必要な部隊を迅速に移動させ、我が国が得意とする施設、衛生等といった分野を中心として活動を実施していく。また、高い専門性を有する自衛官の特性を生かし、引き続き、現地ミッション司令部要員等を派遣していく。加えて、これまで蓄積した経験を活かし、能力構築支援を実施していく。

 我が国を取り巻く安全保障環境を改善する観点からは、核兵器・化学兵器・生物兵器といった大量破壊兵器等の軍備管理・軍縮及び不拡散についても、関係国や国際機関等と協力しつつ、取組を推進していく。その際、防衛省・自衛隊の知見を活かし、国際機関や国際輸出管理レジームの実効性の向上に協力していく。