防衛力整備計画
Ⅵ 防衛力を支える要素

1 訓練・演習

 各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米の共同訓練・演習に加え、オーストラリア、インド、欧州・東南アジア諸国等との二国間、多国間の訓練・演習についても計画的かつ目に見える形で実施し、力による一方的な現状変更やその試みは認められないとの意思と能力を示していく。その際、事態に応じて柔軟に選択される抑止措置(FDO)としての訓練・演習等の充実強化を図るとともに、円滑化協定(RAA)の整備等を踏まえ、海外の良好な訓練環境を活かした訓練内容の充実や新たな訓練の実施を図る。

 また、有事において、部隊等の能力を最大限発揮するため、北海道を始めとする国内の演習場等を整備し、その活用を拡大するとともに、国内において必要な訓練基盤の整備・充実を着実に進める。米軍施設・区域の自衛隊による共同使用や民間の空港、港湾施設等の利用拡大を図るとともに、南西地域の島嶼部等に部隊を迅速に展開するための訓練を強化し、島嶼部における外部からの武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃に適切に対応するため、警察、海上保安庁、消防、地方公共団体等との共同訓練、国民保護訓練等を強化する。

 こうした訓練を拡大していくためには、関係する地方公共団体や地元住民の理解や協力を得る必要があるため、訓練の安全確保に万全を期しつつ、北海道を始めとする国内の演習場等を含め、訓練基盤の周辺環境への配慮をしていく。

2 海上保安庁との連携・協力の強化

 あらゆる事態に適切に対応するため、海上保安庁との連携・協力を一層強化する。このため、海上保安庁との情報共有・連携体制を深化するとともに、武力攻撃事態時における防衛大臣による海上保安庁の統制要領の作成や共同訓練の実施を含め、各種の対応要領や訓練の充実を図る。

3 地域コミュニティーとの連携

 自衛隊及び在日米軍が、平素からシームレスかつ効果的に活動できるよう、自衛隊施設及び米軍施設周辺の地方公共団体や地元住民の理解及び協力をこれまで以上に獲得していく。日頃から防衛省・自衛隊の政策や活動、在日米軍の役割に関する積極的な広報を行い、地元に対する説明責任を果たしながら、地元の要望や情勢に応じた調整を実施する。同時に、騒音等への対策を含む防衛施設周辺対策事業についても、我が国の防衛への協力促進という観点も踏まえ、引き続き推進する。また、各種事態において自衛隊が迅速かつ確実に活動を行うため、地方公共団体、警察・消防等の関係機関との連携を一層強化する。

 地方によっては、自衛隊の部隊の存在が地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献し、あるいは、自衛隊による急患輸送が地域医療を支えている場合等が存在することを踏まえ、部隊の改編や駐屯地・基地等の配置・運営に当たっては、地方公共団体や地元住民の理解を得られるよう、地域の特性に配慮する。また、中小企業者に関する国等の契約の方針を踏まえ、効率性にも配慮しつつ、地元中小企業の受注機会の確保を図るなど、地元経済に寄与する各種施策を推進する。

4 政策立案機能の強化等

 自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の「戦い方」とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。

 また、国民が安全保障政策に関する知識や情報を正確に認識できるよう 教育機関等への講師派遣、公開シンポジウムの充実等を通じ、安全保障教育の推進に寄与するほか、安全保障に係る研究成果等への国民のアクセスが向上するよう効率的かつ信頼性の高い情報発信に努めるとともに、多様化が進むソーシャルネットワークの一層の活用や、外国語によるものも含む情報発信の能力を高める各種施策を推進する。また、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究・教育機能を一層強化するため、国内外の研究・教育機関や大学、シンクタンク等とのネットワーク及び組織的な連携を拡充する。