防衛力整備計画
Ⅲ 自衛隊の体制等

 計画の方針に基づき、各自衛隊の体制等を1から5までのとおり整備する。

1 統合運用体制

  1.  各自衛隊の統合運用の実効性の強化に向けて、平素から有事まであらゆる段階においてシームレスに領域横断作戦を実現できる体制を構築するため、常設の統合司令部を創設する。この際、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることを踏まえ、速やかに当該司令部を創設するとともに、共同の部隊を含め、各自衛隊の体制の在り方を検討する。
  2.  サイバー領域における更なる能力向上のため、防衛省・自衛隊のシステム・ネットワークを常時継続的に監視するとともに、我が国へのサイバー攻撃に際して当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化し得るよう、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を保持する。
  3.  また、南西地域への機動展開能力を向上させるため、共同の部隊として海上輸送部隊を新編する。

2 陸上自衛隊

  1.  保有すべき防衛力の水準
    1.  作戦基本部隊に関して、南西地域における防衛体制を強化するため、第15旅団を師団に改編するとともに、各種事態に即応し、実効的かつ機動的に抑止及び対処し得るよう、その他の8個師団、5個旅団、1個機甲師団については機動運用を基本とする。また、専門的機能を備えた空挺部隊、水陸機動部隊、空中機動部隊を機動的に運用する。
       この際、良好な訓練環境を踏まえ、統合輸送能力により迅速に展開・移動させることを前提として、高い練度を維持した1個師団、2個旅団、1個機甲師団を北海道に配置する。
       こうした施策の前提として、組織の最適化を徹底するとともに、中長期的な体制の在り方を検討する。
    2.  スタンド・オフ防衛能力を強化するため、12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持するとともに、島嶼防衛用高速滑空弾を装備した部隊、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)及び極超音速誘導弾を装備した長射程誘導弾部隊を新編する。
    3.  多様な経空脅威から重要拠点等を防護するため、03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型を装備した高射特科部隊を保持する。
  2.  基幹部隊の見直し等
    1.  領域横断作戦能力を強化するため、対空電子戦部隊を新編するとともに、島嶼部の電子戦部隊を強化する。さらに、情報収集、攻撃機能等を保持した多用途無人航空機部隊を新編する。また、サイバー戦や電子戦との連携により、認知領域を含む情報戦において優位を確保するための部隊を新編する。
    2.  持続性・強靱性を強化するため、南西地域に補給処支処を新編するとともに、補給統制本部を改編し、各補給処を一元的に運用することで後方支援体制を強化する。
    3.  スタンド・オフ防衛能力、サイバー領域等における能力の強化に必要な増員所要を確保するため、即応予備自衛官を主体とする部隊を廃止し、同部隊所属の常備自衛官を増員所要に充てる。また、即応予備自衛官については、補充要員として管理する。

3 海上自衛隊

  1.  保有すべき防衛力の水準
    1.  平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、安定した経済活動の基盤となる海上交通の安全確保、各国との安全保障協力等のための海外展開の実施等、増加する活動量に対応し得るよう、哨戒艦等の導入により増強された水上艦艇部隊を保持する。また、有事においては、我が国の領域及び周辺海域を防衛するとともに、所要の海上交通の安全を確保するため、対潜水艦戦、対水上戦、対機雷戦等の各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、増強及び強化された護衛艦部隊、掃海艦艇部隊を保持するとともに、強化された哨戒ヘリコプター部隊を保持する。加えて、主に弾道ミサイル防衛に従事するイージス・システム搭載艦を整備する。
    2.  平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、領域横断作戦の中でも重要な水中優勢を獲得・維持し得るよう、強化された潜水艦部隊を保持する。
    3.  平素からの周辺海域における常時継続的かつ重層的な情報収集・警戒監視態勢の保持に資するとともに、有事においては、平素からの活動に加え、偵察、ターゲティング及び対潜水艦戦を始めとする各種作戦を有効かつ持続的に遂行し得るよう、強化された固定翼哨戒機部隊を保持する。
  2.  基幹部隊の見直し等
    1.  認知領域を含む情報戦への対応能力を強化し、迅速な意思決定が可能な態勢を整備するため、所要の研究開発を実施するとともに、情報、サイバー、通信、気象海洋等といった機能・能力を有する部隊を整理・集約し、総合的に情報戦を遂行するため、体制の在り方を検討した上で海上自衛隊情報戦基幹部隊を新編する。
    2.  重層的な警戒監視態勢を構築するとともに水中及び海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセット(滞空型無人機(UAV)、既存艦艇の活用を含む無人水上航走体(USV)、無人水中航走体(UUV)等)を導入するとともに、無人機部隊を新編する。
    3.  統合運用体制の下、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制を構築するため、基幹部隊の体制の見直し等に着手し、所要の改編等を実施する。
    4.  統合任務部隊を運用し得る自衛艦隊等の司令部の継戦能力を向上させるとともに、部隊運用の持続性・強靱性を確保するためのロジスティクスに係る態勢の見直し等に着手し、必要な措置を講じる。
    5.  護衛艦(DDG・DD・FFM)等に12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載する。
    6.  上記のオに加え、水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発する。
    7.  就役から相当年数が経過し、拡張性等に限界がある艦艇等の早期除籍等を図り、省人化した護衛艦(FFM)等を早期に増勢する。加えて、分散機動運用等の多様な作戦を可能にするため、防空中枢艦を増勢するとともに、護衛艦(DDG・DD・FFM)の防空能力及び電子戦能力等の能力を向上させる。さらに、機雷戦能力を強化するため、掃海用無人アセットを管制する掃海艦艇を増勢するとともに、洋上における後方支援能力強化のため、補給艦を増勢する。また、有事における航空攻撃への対処等のため、戦闘機(F-35B)の運用が可能となるよう、護衛艦(「いずも」型)の改修を推進する。
    8.  能力向上した固定翼哨戒機(P-1)及び哨戒ヘリコプター(SH-60K(能力向上型))の整備を進めるとともに、固定翼哨戒機の電子戦、対艦攻撃等の能力を向上させる。

4 航空自衛隊

  1.  保有すべき防衛力の水準
    1.  太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛来する弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器(HGV)等の新たな経空脅威を探知・追尾し得る固定式警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊のほか、いわゆるグレーゾーン事態等の情勢緊迫時において、より広域で長期間にわたり我が国周辺の空域における警戒監視・管制を有効に行うため、増強された警戒航空部隊から構成される航空警戒管制部隊を保持する。
    2.  戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行うため、質・量ともに大幅に洗練・増強された戦闘機部隊を保持する。また、戦闘機部隊等が我が国周辺空域等で高烈度化する各種航空作戦において粘り強く戦闘を継続するため、増強された空中給油・輸送部隊及び航空救難部隊を保持する。
    3.  部隊等の機動展開や国際平和協力活動等を効果的に実施するため、増強された航空輸送部隊を保持する。
    4.  重要地域の防空を実施する上で陸上自衛隊の地対空誘導弾部隊と連携するとともに、弾道ミサイル攻撃から我が国を多層的に防護する際に終末段階で対処する機能を備え、多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、増強された高射部隊を保持する。
    5.  宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙領域把握(SDA)能力を増強した宇宙領域専門部隊を保持する。
    6.  我が国から比較的離れた地域での情報収集や事態が緊迫した際の空中での常時継続的な監視を実施するため、無人機部隊を保持する。
  2.  基幹部隊の見直し等
    1.  我が国の航空戦力の質・量を更に洗練・強化するため、近代化改修に適さない戦闘機(F-15)について、戦闘機(F-35A及びF-35B)への代替ペースを加速させる。また、近代化改修を行った戦闘機(F-15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。さらに、戦闘機(F-2)については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与するため、計2個飛行隊分の能力向上事業を推進する。加えて、航空戦力の量的強化を更に進めるため、2027年度までに必要な検討を実施し、必要な措置を講じる。この際、無人機(UAV)の活用可能性について調査を行う。
    2.  次期戦闘機について、戦闘機(F-2)の退役が見込まれる2035年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。この際、戦闘機そのものに加え、無人機(UAV)等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。
    3.  さらに、戦闘機(F-35)や次期戦闘機といった最先端の戦闘機のパイロットの効率的な育成のため、地上教育及び練習機による飛行訓練を教育システムとして一体化することも含め、あるべき教育体系について検討の上、必要な措置を講じる。
    4.  粘り強く戦闘を継続するため、各所に機動分散運用を実施し得るよう、展開基盤の迅速な整備等を行う体制を構築する。また、航空戦力を我が国への侵攻正面に柔軟に集中・指向し得るよう、航空戦力の運用の在り方について必要な検討を行う。
    5.  高烈度な航空作戦にも対応し、また、粘り強く戦闘を継続する観点から、空中給油機能を強化するため、空中給油・輸送機(KC-46A等)を増勢するとともに、救難機(UH-60J)を更新する。また、太平洋側の広大な空域を含む我が国周辺空域における防空態勢を強化するため、太平洋側の島嶼部等への移動式警戒管制レーダー等の整備を推進するとともに、早期警戒機(E-2D)を増勢する。陸上部隊等の迅速な機動展開等を実施するため、輸送機(C-2)を整備する。
    6.  スタンド・オフ・ミサイルの運用能力を向上させるため、相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る無人機(UAV)を導入するほか、部隊の任務遂行に必要な情報機能の強化のため、空自作戦情報基幹部隊を新編する。
    7.  多様化・複雑化する経空脅威に対応するため、地対空誘導弾ペトリオット・システム等の能力向上を引き続き進める。
    8.  宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。

5 組織定員の最適化

 2027年度末の常備自衛官定数については、2022年度末の水準を目途とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊それぞれの常備自衛官定数は組織定員の最適化を図るため、適宜見直しを実施することとする。また、統合運用体制の強化に必要な定数を各自衛隊から振り替えるとともに、海上自衛隊及び航空自衛隊の増員所要に対応するため、必要な定数を陸上自衛隊から振り替える。このため、おおむね2,000名の陸上自衛隊の常備自衛官定数を共同の部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊にそれぞれ振り替える。

 なお、2027年度末までは、自衛官の定数の総計を増やさず、所要の施策を講じることで、必要な人員を確保する。