第11回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)共同声明(仮訳)

2024年9月5日
防衛省
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リチャード・マールズ・オーストラリア連邦副首相兼国防大臣、ペニー・ウォン・オーストラリア連邦外務大臣、上川陽子日本国外務大臣及び木原稔日本国防衛大臣は、2024年9月5日、ビクトリア州において、第11回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を実施するため会合した。

戦略的課題への対処における我々の深い一致

我々は、共通する価値や戦略的課題に対する一致、更にはエネルギー、貿易及び投資に関する顕著な結びつきに支えられた、日豪の「特別な戦略的パートナーシップ」に対するコミットメントを再確認した。我々は、我々の協力が平和で安定し繁栄した地域を確保するために不可欠であることを認識した。

法の支配に基づく国際秩序を堅持し、包摂的で強じんな自由で開かれたインド太平洋の実現に先導的な役割を果たすため、協働し、志を同じくするパートナーとともに協力していくとの我々のコミットメントは揺るぎないものである。我々は、世界のいかなる場所においても、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを再確認した。我々は、法の支配の尊重を堅持し、国際法を誠実に遵守することへのコミットメントを強調する。2022年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に沿って、あらゆるレベルで戦略的評価のやりとりを更に強化することで一致した。

我々は、東シナ海及び南シナ海における力又は威圧により現状変更を試みるいかなる一方的な行動への強い反対を表明した。我々は、最近の中国軍アセットによる日本の領域における活動について、深刻な懸念をもって議論した。我々は、高い頻度で発生している中国によるフィリピンに対する危険かつ威圧的な行動の強化を含む、南シナ海における最近の情勢について深刻な懸念を表明した。我々は、係争のある地形の軍事化を含む、緊張を高め、地域の安定を損なう可能性のあるいかなる威圧的な行動にも反対した。我々は、航行及び上空飛行の自由並びに、国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)に従った紛争の平和的解決の重要性を強調し、2016年の南シナ海に関する仲裁判断が最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであることを再確認した。

我々は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。我々は両岸問題の平和的解決を促した。

我々は、北朝鮮による核兵器及び弾道ミサイルの開発を強く非難した。我々は、北朝鮮に対し、挑発的な行動を停止し、関連する国連安保理決議の下での全ての義務を完全に遵守するよう強く求めた。我々は、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄に対するコミットメントを再確認し、全ての国に対し、関連する国連安保理決議を完全に履行するよう求めた。我々は、不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となっている北朝鮮の悪意あるサイバー活動を非難した。我々はまた、国連安保理決議に違反する北朝鮮製弾道ミサイルの北朝鮮による輸出及びロシアによる調達や、ロシアによるこれらのミサイルのウクライナに対する使用を含め、拡大する北朝鮮とロシアの間の軍事協力を強く非難した。 我々は、拉致問題の即時解決に向けて引き続き緊密に協力していくことにコミットした。

我々は、ウクライナを支援するという揺るぎない決意を再確認した。我々は、ロシアに対し、国際的に承認されたウクライナの領土から全ての軍を即時、完全、無条件に撤退させるよう強く求めた。我々は、国際法を堅持する義務、また、国連憲章の目的及び原則に反して、武力により領土を取得しようとするロシアの試みを決して正当化、支持又は容認しないようにすることを、中国を含む第3国に喚起し続けることの重要性につき一致した。我々は、経済・金融制裁を適用することにより、ロシアの違法かつ不当な侵略の立案者に対するコストを引き上げ続けるというコミットメントを再確認した。

我々は、民間人の保護のため、そして人道アクセスの強化や人質の解放を可能にし、地域のより広範なエスカレーションを避けるために不可欠である、ガザにおける即時停戦及び市民保護を呼びかけた。我々は、紛争当事者に対し、国連安全保障理事会決議第2735号で支持された停戦合意に従うよう強く求めるとともに、二国家解決に向けた取組への我々のコミットメントを改めて表明した。我々はまた、10月7日のハマスの残虐行為を引き続き断固として非難する。我々は、人道支援関係者の死亡や被害が増加していることに深い懸念を表明し、危険地域における人道支援従事者の保護に関する国際人道法及び規範へのコミットメントを世界的に改めて確認する必要性を強調した。イスラエルは国際社会の懸念に耳を傾けなければならない。我々は、地域の全ての当事者に対し、不安定化をもたらす行動や攻撃を停止するよう求めた。

インド太平洋の平和と安定のための戦略的な安全保障協力の強化

互いに不可欠なパートナーとして、また「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に導かれて、我々は、インド太平洋において紛争予防を促し、平和と安定を維持するため、あらゆる国家手段を取り込んだ戦略的な安全保障協力を更に深化させ、拡大することを決意している。我々のパートナーシップは、経済安全保障と経済的強じん性を強化し、海底ケーブルインフラを含む地域における質の高いインフラに対する資金を確保し、情報操作に対抗し、誤解と誤算のリスクを減らすという実益をこの地域にもたらすために重要である。

我々はまた、米国と協力して行うことを含め、共同の抑止力を構築し、地域における意思疎通と安心供与を強化し、相互運用性を更に高め、国家安全保障政策をかつてなく緊密に連携させていくことにコミットした。

これらの目的のために、我々は以下を行う:

特別な戦略的パートナーシップの強化

  • 地政学的競争の時代に向けて、我々の利益を守り、前進させるため、以下を通じたものを含め、我々のシステムを更に統合し、「特別な戦略的パートナーシップ」の基盤を強化する
    • 経済安全保障分野において、経済的・戦略的リスクに関する情報交換を行い、具体的かつ実際的な二国間協力の在り方を探求するための枠組みである「日豪経済安全保障対話」を活用する
    • 相互運用性を高め、地域においてより効果的に我々の支援を提供することを目的として、日豪間で知見を共有するための戦略インフラ協力に関する議論を強化する
    • 省庁横断のサイバー政策協議を通じてサイバーセキュリティ協力を強化する
    • APT40グループに関する技術アドバイザリーにおける最近の協力に基づき、サイバー攻撃のアトリビューションに関する枠組みを連携させることにより、サイバー空間における国家の無責任で容認できない行動へのアカウンタビリティを強化する、また、サイバー制裁枠組みに関する情報を共有する
    • サイバー課題に対する政府システムの強じん性を構築し、サプライチェーンやベンダーのリスクを管理するため、日豪両国の外務省の最高情報責任者間の対話を深める
    • 情報保護協定の下、戦略的連携、相互運用性、抑止力を強化するための機密情報の共有に関する議論を深める
    • ニューカレドニアでの最近の協働の成功に留意し、不測の事態における第三国からの自国民退避において緊密に協力すると共に、退避の可能性に備えた計画の策定において連携する
    • パートナーと協働すること並びに気候変動、災害リスクの低減及び災害への対応、サイバー及び宇宙安全保障、核不拡散分野におけるものを含め、女性、平和、安全保障(WPS)アジェンダの完全な実施を支援するため、以下を通じたものを含め、連携を強化する
      • 相互訪問、対話、訓練を通じて、軍事活動におけるジェンダーの視点を強化するために、二国間のWPS防衛協力を拡大する
      • 米国その他の国々とのWPS協力を強化する
      • 仙台防災枠組2015-2030の実施を支えるジェンダー行動計画の実施において、インド太平洋の各国を共同で支援する

安全保障、連結性、繁栄を促進するためのインド太平洋における協力

  • 安全保障上の課題に対する地域の経済、安全保障、気候上の強じん性を向上させ、「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」を実施するため、以下によるものを含め、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に東南アジアに対する日豪それぞれの強化されたアプローチを増強し、ASEAN及び東南アジアのパートナーとともに相互に決定した優先事項及び共同プロジェクトに向けて協働する
    • フィリピン沿岸警備隊への支援を含む、地域のパートナーとの文民間の海洋をめぐる協力を強化する;
    • 地域のエネルギー移行を推進するためにクリーンエネルギー導入を加速することに焦点を置いた「アジア・ゼロエミッションセンター」を支援することへのオーストラリアのコミットメント
    • 「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」に沿って、海底ケーブルインフラの強じん性を向上させるため、東南アジアとの関与において引き続き連携する
  • 2024年6月の第1回日豪韓防衛相会談及び第1回日豪韓実務者級インド太平洋対話の成功を踏まえ、同地域における共通の利益を増進するため、韓国との3か国間対話を強化する
  • 太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」を支えながら、以下を通じたものを含め太平洋島嶼国との真のパートナーシップにより取り組み続ける
    • 海底ケーブルを含むデジタル及び通信インフラ、データセンター及びセキュリティ、サイバーセキュリティに関する能力構築及びサイバー強じん性における協働を含め、太平洋島嶼国の優先事項に沿って、太平洋における連結性及びデジタル強じん性を強化するために、日豪間の対話と専門性を活用する「日豪太平洋デジタル開発イニシアティブ(PDDI)」を創設する
    • 各国の経済成長と重要なデジタルサービスへのアクセスを支援するため、太平洋島嶼国が海底通信ケーブル接続を確保できるよう他の志を同じくするパートナーと共に取り組む
    • 日豪の支援方式を考慮しつつ、最新ソフトウェアの購入や技術協力の提供を通じてサイバー強じん性を向上させるため、太平洋において合同で視察し、ニーズ評価を行い、並行してパイロットプロジェクトを支援する
    • 日本の政府安全保障能力強化支援(OSA)を含め、太平洋地域の優先事項を支えるにあたり、地域の安全保障と安定のニーズを満たすための日豪それぞれの取組を引き続き調整する
  • 包摂的で強じんな、自由で開かれたインド太平洋を支えるために、日米豪印を含むパートナーと協力することへのコミットメントを再確認する
  • 日米豪戦略対話及び日米豪防衛大臣会合を通じたものを含め、米国との3カ国協力を推進する
  • 制度改革や優先プロジェクトにおける協力を含め、インフラ協力に関する情報共有及び政治的連携調整のための日米豪インフラ協議(TIC)を活性化する

戦略的コミュニケーションと外国の情報操作・干渉への対抗

  • 健全で、オープンかつ事実に基づいた情報環境を促進するため、地域のパートナーと協力する
  • 外国による情報操作の影響についての共同の理解を促進すること及び社会の強じん性を構築するために市民社会、メディア及び学術界の支援方法を議論することを通じたものを含め、戦略的コミュニケーション、ナラティブ、外国による情報操作への対抗における2国間協力を強化する
  • 日本が主導するイニシアティブを通じて、今年度中に日本で北大西洋条約機構(NATO)加盟国及びインド太平洋パートナー(IP4:日豪NZ韓)を招待し、戦略的コミュニケーションに関する会議を開催することを含め、NATO加盟国とインド太平洋パートナーとの更なる協力を進める

運用協力・共同訓練

  • 緊急事態を含む様々な状況において、我々が共有する戦略目標に基づき、更に深化した相互運用性を達成するための重要なメカニズムとして、「範囲、目的及び形態(SOF)」の重要性を再確認し、更に洗練させることにコミットする
  • 現在ある我々の協力に加え、日豪部隊間協力円滑化協定(RAA)を活用し、2025年以降も運用・共同訓練を通じて二国間の運用能力・相互運用性を強化する
    • 2025年の日米共同訓練「オリエント・シールド」への豪国防軍の初参加を歓迎する
    • 航空の相互運用性が抑止力にとって重要との認識の下、交流、人的連携、訓練、航空能力による演習の拡大及び相互のアセット展開等を通じて、2025年以降も航空協力を強化する
    • 「サザン・ジャッカルー」訓練等を通じて、共同訓練の複雑さを増大する
  • オーストラリアの「拒否戦略」と「柔軟に選択される抑止措置(FDO)」を含む日本の各種措置への相互理解を深めることを通じ、力による一方的な現状変更を抑止し、地域の安定を維持するために、深化した二国間協力をどのように活用できるか検討する
  • 日本の統合作戦司令部(JJOC)の今後の設立を踏まえ、2024年11月に統合幕僚監部から統合作戦本部(HQJOC)への初の連絡官派遣等、両国の統合司令部間における連絡官の相互派遣を歓迎する
  • 情報共有を強化し、実際的な協力の機会を拡大することにより、宇宙領域における両国の協力を強化する

防衛先進能力・技術協力

  • 日本のスタンド・オフ防衛能力を活用した反撃能力とオーストラリアの長距離打撃力との協力を深化する
  • 以下を含む、情報戦に関する能力向上に関して協力する
    • ネガティブな情報キャンペーンによる脅威への対処
    • 誤・偽情報への対処
  • 水中自律型無人機に関する日豪共同研究(RASUW)を含む複数の2国間研究プロジェクトに係る協力が進んでいることを歓迎する
  • 研究、開発、試験及び評価(RDT&E)プロジェクトに関する日豪取決め及び日米豪取決めの下で、運用に係る先進的な協力の更なる機会を追求する
  • AUKUS第2の柱における先進能力プロジェクトに関する協力の機会について、AUKUS諸国(豪英米)と日本で引き続き協議する

米国との3国間協力

  • インド太平洋地域における3か国の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)協力を拡大し、オーストラリア国防当局の人員の日米共同情報分析組織(BIAC)への参加を歓迎する
  • 日米豪のF-35による相互展開の重要性を再確認するとともに、「ピッチ・ブラック2024」で日米豪の意向書が署名されたことを契機として、3か国の航空協力を更に進める
  • 2024年の日米豪防衛相会談(TDMM)におけるコミットメントを踏まえ、ネットワーク化された防空ミサイル防衛アーキテクチャに向けたビジョンに関して日米豪で引き続き協力する
  • 2024年のAUSMIN(米豪外務・防衛閣僚協議)におけるコミットメントに沿って、以下を含む、豪米の戦力態勢協力によって可能となる活動への日本の参加を拡大する
    • 米海兵ローテーション部隊・ダーウィンとのものを含む、豪米との訓練活動への日本の水陸機動団の参加を追求する

インド太平洋における防衛・安全保障協力

  • 9月の「カカドゥ」の機会を活用した海上哨戒機協力に関する活動等を通じ、オーストラリア、日本、インド及び米国の4か国の連携を進める
  • 海上協同活動や能力構築支援等を通じてフィリピンとの協力を強化する
  • 2024年から2027年までの間、日本が共同議長を務める海洋安全保障に関するADMMプラス専門家会合及びオーストラリアが共同議長を務めるサイバー安全保障に関する専門家会合を含む、ASEAN主導のメカニズムを通じ、地域の能力構築に向けて引き続き協力する
  • 人道支援・災害救助の提供、能力構築支援や「オペレーション・レンダー・セーフ」等の地域活動を通じた連携強化を通じ、「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に沿って太平洋地域の優先事項を支援することにより、太平洋島嶼国との協力を深化する