日英外務・防衛閣僚会合 共同声明(仮訳)

2023年11月7日
防衛省
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  1. 2023年11月7日、上川陽子外務大臣及び木原稔防衛大臣並びにジェームス・クレバリー英外務・英連邦・開発相及びグラント・シャップス英国防相は、東京において、第5回日英外務・防衛閣僚会合を開催した。
  2. 4閣僚は、自由、民主主義、法の支配、基本的人権並びに開かれた公平な貿易といった共通の価値及び原則、自由で開かれたインド太平洋のビジョンへのコミットメント及びロシアの侵略に直面するウクライナを支援するとの決意により結び付いている、日英間の「グローバルな戦略的パートナーシップ」がより強固となるのみであることを再確認した。
  3. 4閣僚は、国際安全保障環境が一層厳しさを増す中で、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障と繁栄は不可分であるとの認識を共有し、2022年12月に策定された日本の国家安全保障戦略と、2023年3月に発表された英国の安全保障、防衛、開発、外交政策の統合的見直しの刷新に示された、両国間の重大で戦略的な整合性を強調した。
  4. 4閣僚は、「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」で示されたそれぞれの重要分野における実質的な進展に留意し、広島アコードのあらゆる側面を実現するというコミットメントを改めて確認した。
  5. 4閣僚は、「広島アコード」に示されたビジョンを再確認した上で、相互運用性のある、強じんで、領域横断的な防衛・安全保障協力に向けた取組の拡大及び深化に焦点を当てた。これは、より頻繁かつ複雑な共同演習及び運用上の協力、最先端の防衛装備及び技術協力の推進、戦略的な相互訪問の強化、サイバー及び宇宙領域を含む領域横断的な協力の促進、女性・平和・安全(WPS)アジェンダに関する取組の倍加等を通じて実現される。
  6. 4閣僚は、両国が欧州及びアジアにおける互いの最も緊密な安全保障上のパートナーとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持及び強化、主権及び領土一体性の尊重並びに武力による威嚇又は武力の行使の禁止を含む国連憲章の原則を堅持するための国際社会の取組において主導的役割を果たし続けることを確認し、世界のいかなる場所においても力又は威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対することを強調した。さらに、4閣僚は、経済的威圧に対する強い反対を表明するとともに、引き続き協働する意図を確認した。
  7. これらを踏まえ、両国のパートナーシップが両国に利益をもたらし、グローバルな安全、繁栄、包摂性及び強じん性に貢献することを確保すべく、4閣僚は、次に掲げる防衛・安全保障協力の取組を歓迎し、このような協力を一層強化することにコミットするとともに、両国の戦略環境認識の整合性を強調した。
  8. 4閣僚は、防衛当局間のハイレベルの訪問の活発化、2021年の英国の空母「クイーン・エリザベス」を始めとする空母打撃群のインド太平洋への派遣、海上自衛隊練習艦隊及び英海軍哨戒艦による寄港並びに航空自衛隊輸送機の英国訪問及びその際の部隊間交流に見られるように、近年、両国間の防衛交流が増大していることを歓迎した。4閣僚は、両国のパートナーシップの強固さを目に見える形で示し、英国のインド太平洋への関与を長期的、戦略的及び持続的な基盤に定着させるものとなる、2025年に計画されている英国の空母打撃群のインド太平洋への派遣がもたらす機会を最大化すべく協働していくことにコミットした。
  9. 4閣僚は、インド太平洋における海洋安全保障の重要性が増大していることを認識し、連携を強化することにコミットした。4閣僚は、インド太平洋に恒久的に展開している英国の2隻の哨戒艦による既存の活動の重要性を認識し、同哨戒艦による、ルールに基づく海洋秩序への重要な貢献及び進行中の国際的なパートナーとの関与に留意した。これには国連安全保障理事会決議第2375号(2017年)により禁止されている北朝鮮籍の船舶との「瀬取り」を含む不法な海洋活動に対する警戒監視活動も含まれる。
  10. 4閣僚は、日英部隊間協力円滑化協定(RAA)の発効及び今月実施される陸軍種間の実動訓練「ヴィジラント・アイルズ23」において、同協定の利益がもたらされることを歓迎した。また、4閣僚は、相互運用性を向上させ、より頻繁かつ複雑な演習の一層野心的な計画を実現すべく、同協定の適用を確保していくことで一致した。さらに、4閣僚は、自衛隊によるアセット防護措置の適用に関する防衛当局間の議論が前進していることを歓迎した。
  11. 4閣僚は、それぞれの国の防衛に係る能力及び強みを強化する二国間の取組の一環として、空挺部隊や水陸両用部隊を含む高い即応性を有する部隊間の交流や統合幕僚監部と英戦略コマンドとの間の戦略レベルの連携など、二国間の防衛協力の幅が拡大していることを歓迎した。4閣僚は、双方の大使館の増員や、日本の防衛省次官級及び英国の国防省国防次官級による防衛対話の定期的な開催などの防衛協力の強化に資する取組を強化することの重要性を認識した。
  12. 4閣僚は、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)の進捗を支持し、2035年までに次世代戦闘航空機を開発するというタイムラインを遵守することの重要性を強調した。4閣僚は、日英防衛装備・技術協力運営委員会等における、産業協力を含む防衛装備及び技術協力に関する議論を通じ、共同開発及び協力の潜在的案件を更に特定することで一致した。
  13. 4閣僚は、二国間の防衛及び安全保障のパートナーシップに一層の深みをもたらす、新領域における協力の最近の進展の重要性を強調した。4閣僚は、日英サイバー・パートナーシップの創設や、日英サイバー協議を通じた議論を歓迎した。4閣僚は、近く実施される経団連ミッションの英国訪問等、官民連携の着実な進展を歓迎した。また、4閣僚は、日本の自衛隊及び英国軍との間で運用上のベスト・プラクティスの共有を可能とするための、「ロックド・シールズ」演習への合同チームの参加を含む二国間及び多国間の演習につながったサイバー防衛協力を強調した。さらに、4閣僚は、宇宙空間に関する連携の重要性を認識し、演習や訓練、人的交流、宇宙状況把握及び宇宙領域把握に関する情報交換、宇宙における責任ある行動の規範、規則及び原則への支持の醸成、互いに関心を有する追加的な活動に関する対話の深化等において協力することで一致した。4閣僚は、情報環境に対する脅威の高まりを認識しつつ、戦略的コミュニケーションや、外国による情報操作及び干渉並びに偽情報の拡散への対処を含む統合的情報戦への対応に係る協力を強化すべく情報交換を強化することで一致した。
  14. 4閣僚は、危機における第三国からのそれぞれの自国民の退避に係る両国間のこれまでの協力を歓迎するとともに、今後起こり得る退避に備えた緊急時の対応計画において緊密に連携することで一致した。
  15. 4閣僚は、広島アコードに言及のある地域及び国際的な安全保障上の重要な課題について互いに協議するコミットメントを確認し、今次会合がもたらした機会を歓迎した。4閣僚は、両国間の安全保障上の協力を支援する、情報及び分析の安全で時宜を得た交換を円滑にするための協力の強化に引き続き取り組む必要性を認識した。
  16. 4閣僚は、安全保障上の課題に対処する能力を更に強化していく上で、共通の同盟国である米国やパートナーとの連携を強化していく重要性について一致した。4閣僚は、日本とNATOの間の「国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」を歓迎し、日NATO協力の深化に向けたコミットメントを改めて確認した。
  17. 4閣僚は、経済安全保障対話を通じたものを含め、経済安全保障上の課題における継続的で緊密な連携を確認した。これには、サプライ・チェーンの強じん化、国際標準、あらゆる形態の強制的な又は威圧的な技術移転及び知的財産の窃取並びに輸出管理における連携が含まれる。4閣僚は、経済的威圧並びに非市場的政策及び慣行に継続して対処するために協働し、G7及びG7以外のパートナーとの協力を一層促進していくことを確認した。
  18. 4閣僚は、暴力的紛争の予防、救援・復興活動の提供、永続的な平和の構築における女性の主導的な役割を強調し、紛争下の性的暴力生存者のためのグローバル基金(GSF)への拠出等による性的暴力の防止及び生存者の支援の分野における取組を含むWPSの進展を歓迎した。また、4閣僚は、WPSの防災及び災害後の復興への適用及び国連安全保障理事会における連携並びにWPSの一層の推進のための防衛当局間の強化された対話における連携の重要性を強調した。
  19. 4閣僚は、中国への対応における日本及び英国の連携について議論した。4閣僚は、中国に対して、国際社会の責任ある一員として行動するよう求め、対話を通じて中国と建設的かつ安定的な関係を構築するために協働する用意がある。さらに、4閣僚は、中国に対し、ロシアのウクライナに対する侵略戦争を支援しないこと、ロシアに対して軍事的侵略を停止するよう圧力をかけること、及び国連憲章の原則に従ってウクライナの公正かつ永続的な平和を支持することを求めた。4閣僚は、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを再確認するとともに、東シナ海及び南シナ海における状況について深刻な懸念を表明した。4閣僚は、国連海洋法条約(UNCLOS)の普遍的かつ統一的な性格を再度強調するとともに、海洋における全ての活動を規律する法的枠組みを定める上でのUNCLOSの重要な役割を再確認し、全ての海洋権益に関する主張は同条約の関連規定に基づかなければならないことを再度表明した。さらに、4閣僚は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認した。4閣僚は、台湾に関する両国の基本的な立場に変更はないことを強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した。4閣僚は、国家性が必須条件でない場合はそのメンバーとして、必須条件である場合はオブザーバー又はゲストとして、台湾の国際機関への意味ある参加を求めることを改めて強調した。4閣僚は、チベットや新疆を含む中国における報告された人権侵害に関し懸念を表明した。さらに、4閣僚は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下でコミットメントを果たすようさらに求めた。
  20. 4閣僚は、ALPS処理水の海洋放出について、IAEAの包括報告書が、同放出が関連する国際安全基準に合致していると結論付けていることに留意しつつ、IAEAのモニタリング及び評価の重要性を強調した。英側閣僚は、日本が科学的根拠に基づき、高い透明性を持って国際社会に対して説明を行ってきていることを認識しつつ、日本の取組に対する英国の全面的な支持を表明し、日本とIAEAとの間の継続的な協力を歓迎した。
  21. 4閣僚は、北朝鮮による前例のない一連の不法な弾道ミサイルの発射を強く非難し、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄(CVID)という目標に対するコミットメントを再確認した。4閣僚は、国連安保理決議の完全な履行の重要性を強調するとともに、北朝鮮の人権問題について及び拉致問題の即時解決に向けて引き続き緊密に協力していくとの認識を共有した。
  22. 4閣僚は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反を構成する、ロシアによるウクライナに対する侵略戦争を、可能な限り最も強い言葉で改めて非難し、必要とされる限りのウクライナへの支援を再確認した。4閣僚は、「ウクライナに関するG7首脳声明」や「ウクライナ支援に関する共同宣言」に基づき、包括的で、公正かつ永続的な平和をもたらすためのウクライナに対する外交的、財政的、人道的及び軍事的支援を強化することを確認した。日本及び英国は、具体的かつ二国間の長期的な安全保障上のコミットメント及び取決めに関するウクライナとの取組をそれぞれ進める。4閣僚は、平和フォーミュラに関するウクライナの取組を支持し、今後可能な限り多くの国の関与を得られるように連携して取り組んでいくことの重要性を強調した。また、4閣僚は、ロシアに対する経済的制限措置の回避に対抗するため、世界のパートナーとの協力の取組を強化することで一致した。4閣僚は、違法な侵略を遂行するロシアの能力に更に対抗するため、両国が既に課している経済的措置を維持し、完全に実行し、拡充する。 4閣僚は、ロシアにより継続されている無責任な核のレトリック、軍備管理体制の毀損及びベラルーシに核兵器を配備するという表明された意図は、危険であり、かつ受け入れられないことを強調した。4閣僚は、ロシアによる化学兵器、生物兵器又は核兵器のいかなる使用も深刻な結果をもたらすというG7の声明を想起した。
  23. 4閣僚は、ASEANの一体性・中心性及びインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)への強い支持を改めて確認した。4閣僚は、自由で開かれたインド太平洋を確保するため、東南アジア及び太平洋島嶼(しょ)国のパートナーとの協力を更に促進することの重要性を認識した。4閣僚は、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」を支援する「ブルーパシフィックにおけるパートナー」イニシアティブの下での一層の協力を歓迎した。
  24. 4閣僚は、ハマスによるテロ攻撃への断固とした非難を表明した。4閣僚は、人質の即時解放及び市民の安全確保、全ての当事者による国際法の尊重並びにエスカレーション及びより広範な地域の一層の不安定化の防止のための外交努力の倍加が極めて重要であることを改めて表明した。4閣僚は、国際法に従って自国と自国民を守るイスラエルの権利を強調した。4閣僚は、人道アクセスを強調し、人道的休止を求め、ガザの市民に対する必要な食料、医薬品、水、電気及び燃料の可能な限り早期の提供や、外国籍の人々の退避について連携することにコミットした。4閣僚は、「二国家解決」が公平で、永続的かつ包括的な平和及び地域の安定に向けた唯一の実行可能な道筋であることを改めて表明した。
  25. 4閣僚は、イランの核計画は信頼に足る民生上の正当性がなく、継続したエスカレーションを停止しなければいけないことに留意しつつ、イランが決して核兵器を開発してはならないとの決意を表明した。4閣僚は、イランに対し、更なる遅滞なく、国際原子力機関(IAEA)と完全かつ無条件に協力することを含め、核不拡散に関する法的義務及び政治的コミットメントを即時に果たすよう求める。また、4閣僚は、国家主体及び非国家主体に対する、ミサイル、無人航空機(UAV)及び関連技術の移転並びに非国家主体に対するその他の軍事的、財政的、政治的な支援を含む、継続的な不安定化をもたらす活動について反対を表明した。4閣僚は、イランに対し、中東を不安定化させる行動を取ることを控え、地域の緊張の緩和に向けて建設的な役割を果たすことを求めた。4閣僚は、イランがロシアによるウクライナに対する侵略戦争への支援を止めなければならないことを強調した。4閣僚は、イランの人権状況に対する反対を改めて表明し、イランに対して、英国を含むイラン国外の人々に対する容認できない脅しを止めるよう求めた。
  26. 4閣僚は、途上国の懸念への対応を含む国際社会が直面している課題に取り組み、及び持続可能な開発目標の達成に向けた進展を加速させるため、二国間で及びG7、G20その他より広いフォーラムを通じて引き続き協働することへのコミットメントを再確認した。4閣僚は、透明で公正な開発金融の慣行を推進すること及び途上国に対する前向きな投資提案の提供における連携を強化することへの決意を再確認した。
  27. 4閣僚は、気候変動の脅威並びに国家安全保障に対する気候及びエネルギー安全保障の影響を認識した。4閣僚は、広島アコードに沿って、2050年までにネット・ゼロを実現するための協力を継続することを誓った。また、4閣僚は、G7と足並みをそろえ、エネルギーの供給が武器化されないことを確保し、敵対的な主体からのエネルギーへの依存を低減することを確認した。
  28. 4閣僚は、本日の会合の成功を踏まえ、意見交換を継続することを決定し、 それぞれの事務当局に、本日の会合の結果を綿密にフォローアップするよう指示した。