第1回日・フィリピン外務・防衛閣僚会合(「2+2」)共同声明(仮訳)

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  1. 林芳正日本国外務大臣及び岸信夫日本国防衛大臣並びにテオドロ・ロクシン・フィリピン共和国外務大臣及びデルフィン・ロレンザーナ・フィリピン共和国国防大臣(以下、「閣僚」という。)は、2022年4月9日、東京にて第1回日・フィリピン外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を開催した。閣僚は、「2+2」が、二国間の戦略的パートナーシップの更なる10年に向けた基礎を築いていくにふさわしい取組であるとの見解を表明した。
  2. 閣僚は、地域の平和と安定に対する新旧の挑戦を前に、二国間の安全保障及び防衛協力を促進するための重要な手段として「2+2」を歓迎した。会合では、閣僚は、共通の利益並びに自由、民主主義、法の支配、人権の尊重、及び自由で開かれた経済という共有された価値に基づき、二国間の戦略的パートナーシップを更に強化していくとのコミットメントを再確認した。閣僚は、一層厳しさを増す安全保障環境に鑑み、二国間の対話を強化する必要性を強調した。
  3. 閣僚は、それぞれの国の防衛能力を増大させ、防衛能力の構築や相互の寄港・寄航、更なる防衛装備品・技術の移転、移転済みの防衛装備品に関する継続的な協力を通じて、防衛関係全体を更に強化することを決意した。閣僚は、相互訪問及び後方支援分野における物品・役務の相互提供を円滑にするための枠組みを含む、日本国の自衛隊とフィリピン国軍との間の訓練等の協力を更に強化し、及び円滑にするための方途の検討を開始することで一致した。
  4. 閣僚は、強力な米国のプレゼンスの地域の安定への寄与に鑑み、それぞれの国の条約に基づく米国との同盟及び地域のパートナー国との協力の強化の重要性を強調した。
  5. 閣僚は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」が基本的な原則を共有していることを再確認するとともに、2020年に採択された「インド太平洋に関するASEANアウトルックに係る協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明」に基づく日ASEAN間の具体的協力の継続的な進展を歓迎した。
  6. 閣僚は、地域的な平和と繁栄のために不可欠な要素である、海洋状況把握(MDA)及び国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく、海上法執行の重要性を認識した。フィリピンは、同国にとって最大級の巡視船の日本からの調達を含む海上法執行能力の強化を歓迎した。
  7. 閣僚は、東シナ海及び南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、緊張を高め得る行為に強く反対した。閣僚は、地域の平和及び安定並びに地域の海洋の安全保障の重要性を強調した。閣僚は、東シナ海及び南シナ海における航行及び上空飛行の自由、及び国際法、特にUNCLOSの枠組み内で海洋における競合する権益の主張を解決するに当たってのルールに基づくアプローチへの共通のコミットメントを再確認した。日本は、フィリピンによる、南シナ海における、不法な海洋権益に関する主張、軍事化、威圧的な活動及び武力による威嚇又は行使への長年にわたる反対に同意するとともに、南シナ海に関する2016年7月の仲裁判断への支持を表明した。フィリピンは、南シナ海に関する仲裁判断は最終的かつ法的拘束力を有するものであることを強調した。閣僚は、UNCLOSに整合的で、南シナ海における全ての利害関係者の正当な権利を害さない、南シナ海に関する行動規範(COC)の早期妥結を求めた。
  8. 閣僚は、スールー・セレベス海とその周辺地域の重要性を確認し、海洋の連結性及び安全、インフラ整備、人材育成等の分野における協力の強化で一致した。
  9. 閣僚は、ミンダナオのバンサモロ地域における平和と安定の重要性を再確認し、和平プロセスの実質的な進展を歓迎した。フィリピンは、ミンダナオ和平プロセスを支援する日本の役割を認識した。
  10. フィリピンは、「5つのコンセンサス」及びミャンマーの軍事政権前の状態への復帰へのコミットメントを再確認した。日本は、ASEAN議長国としてのカンボジアの積極的な関与を含め、「5つのコンセンサス」を通じたASEANによるミャンマー情勢の改善に向けた取組への支持を再確認した。閣僚は、人道支援、全ての暴力の即時停止、恣意的に拘束された人々の解放、及び包摂的な民主主義への道筋への早期回帰に向けた国際的な取組を強化することで一致した。
  11. 日本は、ASEANの一体性と中心性に対する揺るぎない支持を再確認した。閣僚は、2023年の日ASEAN友好協力50周年が、日本とASEANが共同で将来の協力のための指針を示す良い機会となるとの見解を共有し、来年の日本での日ASEAN特別首脳会議を機に、日ASEAN関係を新たな高みに引き上げることを期待した。
  12. 閣僚は、長年にわたる北朝鮮による日本人の拉致を非難し、北朝鮮に対して拉致問題の即時解決を求めた。閣僚は、北朝鮮の進行中の核兵器及び弾道ミサイル開発を非難し、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄の実現に対するコミットメントを改めて表明した。閣僚は、北朝鮮に対し、関連する国連安保理決議の下での全ての義務を完全に遵守するよう求めるとともに、国際社会による国連安保理決議の完全な履行の重要性を強調した。
  13. 閣僚は、国連総会決議(A/RES/ES-11/1及びA/RES/ES-11/2)を想起し、国連加盟国への侵略は、その主権及び領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反を構成し、国連憲章の重大な違反であるとの認識を共有し、特にブチャにおける、敵対行為による悲惨な人道上の影響を非難した。この侵略は、国際的に認識された国境の力による一方的な変更を認めない国際秩序の根幹を危うくし、したがって欧州にとどまらずアジアにも影響を及ぼす。閣僚は、武力行使の即時停止及び部隊のウクライナ領域からの撤退を求めた。閣僚は、1982年の国際紛争の平和的解決に関するマニラ宣言を想起しつつ、状況を沈静化するためのあらゆる努力を用い、また、対話と外交を通じて、紛争を解決し、国際社会の平和と安全を保ち、民間人及び軍人の死傷者の増加を防ぎ、更なる人道危機を回避する必要性を強調した。また、閣僚は、紛争において核又は化学兵器が使用される可能性への深い憂慮を表明し、いかなる状況下においても、大量破壊兵器による威嚇や使用のいずれも決して許容されるものではないことを強調した。
  14. 閣僚は、安全保障と経済の間の横断的な影響に鑑み、経済安全保障を促進する上での二国間協力を強化することを決定した。閣僚は、政治的目的を達成するための経済的威圧に対する懸念と強い反対を表明し、国際法に基づく経済秩序の重要性を強調し、経済的威圧に対処するための緊密な連携の重要性を強調した。
  15. 閣僚は、サイバーセキュリティの重要性を認識し、デジタル技術や情報技術を含む重要・新興技術の誤用及び悪用に懸念を表明し、これらの技術は我々の共有された価値に沿って普及されるべきである旨を強調した。閣僚は、サイバーセキュリティとサプライチェーンの強靭性の分野における協力を強化する必要性で一致し、電気通信技術のサプライチェーンにおける、開かれた競争的な市場、電気通信サプライヤーの多様性の促進及び5G等の安全で開かれた、透明性の高い電気通信インフラの重要性に留意した。
  16. 閣僚は、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の枠内での活動を通じたものを含め、国際的な核軍縮及び不拡散体制の礎石としての核兵器不拡散条約(NPT)を維持・強化し、2022年8月に予定されている第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議において意義ある成果を収めるべく、両国間で緊密に連携をしていくことに対する決意を再確認した。閣僚は、40年にわたる世界の核兵器数の減少は維持されなければならず、逆行させてはならないことを強調した。この観点から、閣僚は、関連性のある国を関与させ、より広範な兵器システムを対象に含む将来の核軍備管理枠組みの発展を期待した。
  17. 閣僚は、安全保障理事会を含む国連システムの改革の緊急性を改めて表明した。日本の閣僚は、将来の安全保障理事会における常任理事国入りへの取組に対するフィリピンの支持に謝意を表明した。
  18. 閣僚は、日・フィリピン外務・防衛閣僚会合(「2+2」)の設立に係るTORに留意し、それぞれの事務方に、本日の会合の結果をフォローアップするよう指示した。

(了)