日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)(概要)

令和4年1月7日
外務省・防衛省
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1月7日午前7時半から約1時間半、日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)がテレビ会議形式で開催され、日本側からは、林芳正外務大臣及び岸信夫防衛大臣が、米側からは、アントニー・ブリンケン国務長官及びロイド・オースティン国防長官がそれぞれ出席したところ、概要以下のとおり(また、今回の会合後、共同発表が発出された。)。

1 総論

  1. 冒頭、米側から、今次日米「2+2」が対面で開催できなかったことは残念であるが、様々な安全保障上の課題に直面する中で日米同盟はかつてないほど重要であり、こうして本日の会合を開催できたことは喜ばしい。自由で開かれたインド太平洋を実現するために強固な日米同盟の一層の強化に強くコミットしている旨発言があった。林大臣から、この一年のスタートを両長官との日米「2+2」で切ることができるのは時宜にかなっている、日米の安全保障を確保するだけではなく、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、地域の平和、安定、繁栄を確かなものとする上で、戦略的利益と普遍的価値を共有する日米両国が結束してリーダーシップを発揮することがいまだかつてなく重要である旨発言があった。また、岸大臣から、テレビ会議であれ、日米両政府が日米「2+2」を開催し、日米の強固な連帯を対外的に示すこと、そして、今後の同盟の進むべき方向について認識を共有することは極めて意義深いことである旨発言があった。
  2. 日米双方は、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメント、そして、地域の平和、安全及び繁栄の礎としての日米同盟の重要な役割を確認し、日米が一体となって新たな安全保障上の課題に対応するため、同盟の能力を継続的に前進させることにつき一致した。
  3. 日本側から、自国の防衛を強固なものとし、地域の平和と安定に貢献するため、防衛力を抜本的に強化する旨述べた。米側は、これを歓迎するとともに、インド太平洋における態勢及び能力を最適化させていくとの決意を表明した。
  4. また米側は、核を含むあらゆる種類の能力を用いた対日防衛義務への揺るぎないコミットメントを表明し、日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認した。日米双方は、拡大抑止が信頼でき、強靱なものであることを確保する決定的な重要性を確認した。

2 地域情勢

四閣僚は、変化する地域の戦略環境に関して認識を詳細に共有した上で、同志国との連携の強化について意見交換を行った。 

  1. 日米双方は、インド太平洋地域と世界全体の平和、安定及び繁栄に対して中国が及ぼす影響について突っ込んだ意見交換を行い、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き日米が結束して反対すること、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張、軍事化及び威圧的な活動への強い反対、そして、地域における安定を損なう行動をともに抑止し、必要であれば対処することについて一致した。
  2. また、日米双方は、新疆ウイグル自治区及び香港の人権問題について、深刻な、かつ継続する懸念を表明した。
  3. さらに、台湾に関し、日米双方は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促した。
  4. 北朝鮮について、日米双方は、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、5日の弾道ミサイル発射を始め、核・ミサイル開発の進展への強い懸念を表明した。また、林大臣から、拉致問題の即時解決への理解と協力を求め、米側から支持が表明された。
  5. 同志国との協力について、日米双方は、昨年9月の日米豪印首脳会合において確認した自由で開かれたルールに基づく秩序の推進へのコミットメントを改めて確認したほか、豪州、欧州、韓国、ASEAN等との連携及び協力の強化の重要性に関して一致した。
  6. 加えて日米双方は、ウクライナ情勢を含む共通の関心事項について意見交換を行い、ウクライナの主権及び領土一体性への一貫した支持を改めて表明した。

3 安全保障・防衛協力の強化

四閣僚は、現在直面する挑戦に効果的に対処するため、日米同盟の抑止力・対処力の抜本的強化に向けた議論を具体化した。さらに、情報保全の一層の強化、宇宙・サイバー分野での協力深化、新興技術を取り込む技術協力の推進など、日米同盟の優位性を将来にわたって維持するための継続的な努力を精力的に進め、将来を見越した同盟の能力強化のための投資を行っていくことの重要性について一致した。

  1. 岸大臣から、ミサイルの脅威に対抗するための能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を速やかに、抜本的に強化するため、新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の策定に取り組んでいく旨説明した。米側から、日本側の決意を歓迎するとともに、日米双方は、両国の戦略及び政策をすり合わせるために引き続き緊密に連携することを確認した。
  2. 日本側から、日米同盟の役割、任務及び能力に関する議論を通じて、日米の能力を最大化する旨発言した。その上で、日米双方は、役割・任務・能力の進化及び共同計画作業に関する力強い進展を歓迎した。
  3. 日米双方は、領域横断的な能力の強化の重要性を強調した。林大臣から、サイバー空間における脅威の増大を踏まえ、外交的取組、同盟の対処能力の強化、第三国の能力構築等における日米連携の強化の重要性について発言し、岸大臣から、サイバー領域に関する自衛隊の体制整備を着実に進め、米側と一層連携を深めていきたい旨発言があった。また、宇宙領域における協力について、林大臣から、宇宙における「責任ある行動」に関する連携や、宇宙における深刻な事態に対する同盟としての対応について議論を深化させる重要性を強調し、岸大臣から、宇宙領域に関する自衛隊と、米側との協力の重要性を強調した。その上で、日米双方は、両領域における安全保障協力の更なる強化を確認した。
  4. 日米双方は、共同研究・開発・生産等に関する枠組み交換公文に基づき、新興技術での協力を進展させることを確認した。また、林大臣から経済安全保障の強化についても発言があり、日米で緊密に連携していくことを確認した。

4 米軍の態勢

四閣僚は、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図る観点から、在日米軍再編を着実に推進することの重要性について一致した。

  1. 日米双方は、普天間飛行場代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設する計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるとして、その推進にコミットした。
  2. 岸大臣から、馬毛島における施設整備を進めることとし、環境影響評価プロセス終了後に着手する建設工事の経費を来年度予算案に計上したことを説明の上、早期の整備に向け政府全体として努力していく旨表明し、米側は日本側の取組を歓迎した。また、日米双方は、沖縄統合計画に基づく嘉手納以南の土地返還の取組及び2024年に開始される約4,000人の米海兵隊の要員の沖縄からグアムへの移転を含む、在日米軍再編に係る二国間の取組を加速化させる重要性を確認した。
  3. 林大臣及び岸大臣から、在日米軍による地元への影響に最大限配慮した安全な運用、早期の通報を含む事件事故での適切な対応、PFOS等をめぐる課題について協力を要請し、日米双方は、引き続き緊密に連携することを確認した。また、両大臣から、最近の在日米軍の新型コロナ感染状況を踏まえ、在日米軍従業員を含めた地元の不安解消に向け、外出制限の導入を含め、感染症拡大防止の措置の強化と徹底を米側に強く求めた。これに対し、ブリンケン長官から、日本側の要望は明確に理解した、国防省や統合参謀本部と共に、日本における懸念を解消するために努力したい、また、オースティン長官からは、既にブリンケン長官から昨日の林大臣とのやり取りの説明を受けている、地域住民と米軍兵士の安全を引き続き重視しており、軍指導部とも協議している、地域住民と米軍兵士の安全ほど重要なものはなく、そのためにできる限りのことをしたいとの返答があった。
  4. 日米双方は、同盟の即応性と抗たん性を高める、新たな在日米軍駐留経費負担(「同盟強靱化予算」)に係る実質合意及び特別協定への署名を歓迎した。

(了)