司令官挨拶

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第23代 航空開発実験集団司令官

空将 小島 隆(こじま たかし)


 航空開発実験集団ホームページをご覧いただきありがとうございます。早いもので着任から半年が経ちましたが、この間にF-2戦闘機や衛星関連装置、救難員用落下傘の試験評価のほか、昨年度に引き続き無人航空機活用に係る産学官意見交換会を開催しています。国産装備品は運用段階になってもニーズに応じた改良ができるのが強みです。

 さて、今回は着任時のモットーとして掲げた「5年先の技術をアジャイルに実現する」について述べます。ロシアによるウクライナ侵略戦争において、ウクライナは民生品のドローンを使用し、当初の予想を覆して難局を乗り越えています。民生品を含め様々な手段を活用して戦果を挙げているという報道を耳にする度に、ウクライナの国家防衛に対する断固たる決意を感じます。また、作戦運用のニーズを迅速に、すなわちアジャイルに実現する開発手法が「いざ!」という時に必要とされることを改めて実感します。

 防衛力の抜本的強化を遂げ我が国の安全を担保するため、従来に無い速さでの早期装備化が求められています。そこで、当集団では既存のデュアルユース技術を組み合わせ、所望の機能・性能をもつ装備品等を短期間で開発することを狙いとしたプロジェクトを進めています。これは、有事における代替品の緊急取得への布石にもなると考えます。しかし、「アジャイルに実現する」と言っても、そこには様々なアプローチが考えられ、最近よく耳にする「アジャイル型開発」だけで装備品等が完成するわけではありません。特殊な機能・性能を持つ装備品等は「ウォーターフォール型開発」が適するところが多々あるため、これにアジャイル型開発をうまく調和させ、手戻りを最小化する等により、所望の装備品等を早期に装備化することが重要です。

 「生き残るものは賢いものでもなく、強いものでもなく、適応したものである」とは、ダーウィンの適者生存の言葉として知られていますが、経営学の世界では「両利きの経営」という概念で同様のことが述べられています。これは、企業や組織が長く存続するには既存事業での絶え間ない改善と新規事業への挑戦が必要であること、また新規事業を起こすためには変革が必要であり、これが出来なくなったときに組織が危機に陥るというものです。これら2つの性質の異なる活動を同時に行うさまを「両利き」に例えており、当集団はこれを応用して「ウォーターフォール型開発」と「アジャイル型開発」の組み合わせを「両利きの研究開発」として取り組んでいます。とはいえ、このような試みにはまだまだ課題があり、我々の力だけでの解決は困難です。省内関係各署や産学官との連携をさらに強化して課題にチャレンジしていきたいと考えています。

 航空開発実験集団は創設以来、絶えず最新の科学技術動向を把握し、航空装備品と航空医学等が一体化した、一貫性のある研究開発業務を実施してきました。時代に合った研究開発、特に作戦運用の要求に応え、かつ早期装備化といったスピードに適切に対応していくため、コンセプトから防衛力整備へアジャイルな実現に資する研究開発態勢の機能強化を図ってまいります。引き続き、ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


(略歴)

 平成 2年 9月 第3航空団

 平成 5年 3月 航空中央業務隊付

 平成11年 3月 電子開発実験群

 平成14年 3月 技術研究本部

 平成15年 3月 幹部学校付(指揮幕僚課程)

 平成16年 3月 幹部学校

 平成16年11月 航空幕僚監部防衛部防衛課

 平成19年 5月 航空幕僚監部技術課

 平成20年 4月 飛行開発実験団研究開発部長

 平成21年 8月 幹部学校付(統合短期課程、インド国防大学)

 平成23年 2月 航空幕僚監部総務部総務課渉外班長

 平成24年 7月 第6航空団整備補給群司令

 平成25年12月 航空幕僚監部技術部技術課長

 平成27年10月 防衛装備庁プロジェクト管理部装備技術官

 平成28年12年 航空開発実験集団司令部幕僚長

 平成30年 8月 中部航空方面隊副司令官

 令和 2年 8月 航空教育集団司令部幕僚長

 令和 4年 3月 航空幕僚監部装備計画部長

 令和 6年 3月 現職


防衛大学校(電気工学)第34期

神奈川県出身