社会を支える信頼性技術(3/4

信頼度予測

 

システムの信頼性を予測する方法として部品点数法と呼ばれる手法があります。これは電子部品,電気部品,機構部品,回転機器などの故障率データから、システムの信頼性を予測する手法で、米軍が調達する部品の基準としてアメリカ軍用信頼性ハンドブック(MIL-HDBK-217)にも採用されていることから一般にも広く用いられています。その特徴は、システム内のそれぞれの部品に対して故障率モデルを設定し、使用する環境で補正することで、システムの故障率は各々の部品故障率の合計で計算されます。

部品故障率

では、偶発故障期の部品の故障率はどうやってもとめるのでしょうか。10億時間もかけて故障試験をすることはできません。そこで、加速試験が行われます。半導体を例にとると

1.電圧・電流など動作ストレスによる加速

2.温度・湿度など環境ストレスによる加速

3.上記の複合ストレス

などがあります。長い時間試験をする代わりに、通常以上のストレスをかけ早く故障を起こしやすくするのです。温度が上がると反応速度が速くなるというのはアレニウスの式として物理化学の本に載っていますが、それと同じように、寿命に関しても同じような式が経験則から得られています。平均寿命と、故障率は

故障率=1/平均寿命

表1 環境重み係数
研究所
1
グラウンド
10
船のデッキ
20
トレーラー
30
鉄道
40
航空機
150
ミサイル
1000

の関係が、偶発故障期間に関しては成立しますので、これにより部品の故障率が求まります。

さらに、これを環境条件,使用ストレス,品質,複雑度,用途などに関する係数で補正し必要な部品故障率を求めます.


部品点数法

表2 部品故障率
部品

故障率
(FIT)

個数
合計故障率
コンデンサ
10
3
30
ダイオード
200
1
200
電位差計
250
1
250
抵抗器
250
6
1500
ソレノイド
50
1
50
トランジスタ
500
2
1000
印刷配線
8
22
176
合計    
3179

部品の故障率が求まれば、システムの故障率は各々の部品故障率の合計で計算されます.これは普通はどの部品が故障してもシステムダウンになるからです。もちろん予備の装置を用意したり、故障が起こりにくい構造になっていると、単純な合計というわけにはいきません。

例として、あるシステムが右表の部品から構成され、各部品の故障率が環境係数を補正して得られているとしましょう。

このときシステムの故障率は3,179FITとなります。つまり10億時間当たり3179のシステムが故障するとなり、1時間当たりでは3.179×10^-6が故障率と推定されます。

システムの故障率が求まれば、故障までの寿命はその逆数で、 3.15×10^5 時間と求まります。

このように簡単に求めることができるのは、部品やシステムの故障率が一定としているからです。

 

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