社会を支える信頼性技術(4/4)

エコ社会と信頼度技術

 

複雑した現代社会では、システムの故障が大きな社会問題となるため、自衛隊のみならず、あらゆる分野で信頼性技術が必要とされています。

長寿命を実現することが従来の信頼性工学の主な目的でしたが、最近ではその目的も少し変わってきています。たとえ部品の寿命が10万時間だったとしても、そんなに長く同じものを使い続ける人はそうはいません。次々と新しい機能を持った機種が発売され、実際に使用される期間(ライフサイクル)は短くなっています。一方で最近の重要なキーワードとしてエコロジーがあり、あらゆる分野で環境への配慮が必要とされています。

3R運動を知っていますか?リデュース(reduce)・リユース(reuse)・リサイクル(recycle)を推進しようという運動です。電子部品は、様々な物質から構成されておりリサイクルが難しいもののひとつです。そこで最近は、リユースに注目されています。

リユースとは一度使用した部品を再利用することです。しかし「新品でない部品を使って本当にだいじょうぶ?」 という声も聞こえます。 そこで、リユース部品を使用したときの信頼性予測における課題、我々の取り組みの一端を紹介しましょう。

リユース品を使用する場合、新品と同じかそれ以上の寿命の確保が国際規格により定められています。ではどのようにして寿命の確保をするのでしょうか。また何回までのリユース品を使ってもよいのでしょうか。

右の図は、再び部品のバスタブ曲線ですが、偶発故障期間に比べ、製品が使用されるライフサイクルが短い場合、もう一度別の製品の部品としてリユースできます。リユース可能かどうかは、その部品の残存寿命とライフサイクルにより決まります。よってあらかじめ、その部品の偶発故障期間を把握しておく必要があります。しかしそのことは非常に難しい問題です。従来は故障率が一定であることを前提にした故障率予測でしたので、より正確な故障分布の推定が必要になります。そのためには加速試験の改良、得られた寿命データから故障率の変化点を推定する新しい手法の確立が必要です。

また、あくまでこのバスタブ曲線は、平均的な部品の予測値ですので、リユースしようとしている部品が、現在どの程度劣化が進んでいるのかは、今まで使用されてきた環境などで部品ごとに異なります。よって故障解析技術により、劣化の度合を測定することも必要になります。

このように部品のリユースといっても、それを支障なく実現するには多くの課題があります。その中で信頼性工学が果たす役割は大きく、私たちの電子情報研究室は信頼性工学を通して、エコ社会実現へのための課題克服に寄与すべく努力しています。

(文責 電気電子工学科 准教授 弓削哲史)

 

おわり