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 米海大ナウ!

 100年の歴史を誇る:通信教育学部

(066 2016/07/06)

米海軍大学   客員教授
1等海佐    下平   拓哉


   米海大が誇る知的財産の一つが100年以上の歴史を有する通信教育学部College of Distance Education :CDE)です。米海大では、毎年約600名の卒業生を輩出していますが、様々な形態の通信教育を受講することによって、年間1000名もの通信教育課程卒業者がいることはあまり知られていません。実は、厳しい実戦部隊において勤務しながら、米海大のカリキュラムを学んでいる学生を指導しているのが、通信教育学部です。1914年4月15日に開講された当時は手紙のやりとりでしたが、現在は大半をオンライン化し、現在の受講総数は23万人を越えています。

   米海大が実施している通信教育の主な区分は、米海大において修業する少佐級を対象とした中級コース(Intermediate Level Course: ILC, CNCS/NSC)と同レベルのものと、大尉から少尉の初級士官用、先任下士官用、下士官用の完全オンラインコースに大別できます。  通信教育によるILCの主な内容は、CNCS/NSCと同様、①戦域安全保障意思決定(TSDM)、②戦略と戦争(S&W)、③統合軍事作戦(JMO)の3つからなり、米海大におけるILCのエッセンス版と言っていいでしょう。これにも様々な選択肢があり、①フリート・セミナー(Fleet Seminar)、②WEB、③CDROMがあります。
   ①フリート・セミナーは、主として陸上勤務者を対象とし、ワシントンD.C.やハワイ、サンディエゴ、アナポリス、ノーフォーク等、国内19箇所において、8月から毎週末実施されるイブニング・セミナーに参加します。1学期分取得するのに34週間を要します。年間約1000名が受講しており、3学期分最短で3年間履修すれば、2001年から修士号の取得が可能となりました。一方、②WEBと③CDROMは主として海上勤務者が対象であり、修士号はとることはできません。しかしながら、①と同様の統合参謀本部が定めた「統合専門軍事教育(Joint Professional Military Education: JPME )Ⅰ」の認定を得ることができ、これを履修すれば将来の補職に有利と言われています。より具体的には、②WEBでは、毎週6~8時間で18か月間、一部の大学と単位互換も可能となっています。年間約1400名が受講しています。③CDROMは、毎週4~6時間の12~14か月間で、ビデオ講義の送付もしています。年間約600名が受講しています。このコースのみ国際学生も受け入れており、現時点で英国やマルタ等からの参加を得ており、基本的には米大使館経由で申請すれば、どの国でも参加は可能です。


   通信教育部の陣容は、約30名の教授陣が学生の指導に当たっており、シラバスに示されているように、メールにて随時質問を受け付けています。通信教育部長のウォルト(L.W. “Walt” Wildemann)教授の言を借りれば、「一般大学においても、オンライン化教育が主流となりつつあります。人的、財政的制限下にあって、通信教育こそが将来教育の唯一の灯と言っても過言ではありません。」
   学問は、もちろん机上のみのものではなく、いつでもどこでも、本人の意志さえあれば、程度の差こそあれ、できるものです。しかしながら、そのためには、適切な専門的バックアップ態勢が欠かせません。そして、将来の真の戦士を育ていくためには、自己の不断の努力とともに組織的サポートの両輪が必要なのです。

 (2016年6月29日記)

【通信教育学部HP】
https://www.usnwc.edu/Departments---Colleges/College-of-Distance-Education.aspx