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 米海大ナウ!

 海上における軍事闘争に備える:人民海軍と当代海軍

(057 2016/04/20)

米海軍大学   客員教授
1等海佐    下平   拓哉

   米海大中国海事研究所(China Maritime Studies Institute: CMSI)では、膨大な量のオープンソース・データを分析しています。CMSIが活用しているデータベースには、1万冊以上の専門学術雑誌や500種類以上の新聞情報が納められており、その量は1テラバイトを優に越えます。また、データベース化されていないものについてはハードコピーで入手しており、千冊を超える海事問題書籍や120以上の専門学術雑誌を渉猟しています。
   なかでも、中国の最新の活動や訓練の状況を紹介し、主要な政策決定者や思索家らが最新の海事問題について意見を述べている人民解放軍海軍の機関誌である『人民海軍』と『当代海軍』は、アジア太平洋の安全保障を担う者にとっては見落とすことができない必読の文献です。『人民海軍』は週4回、月火水金曜日発行され、わずか4枚の紙面ながら、人民解放軍海軍のすべての部隊に配布され、ほぼすべての将兵が目を通している非常に重要かつ影響力のあるものです。また『当代海軍』は、毎月発行され、人民解放軍海軍トップの呉勝利海軍司令員の談話をはじめ、各艦隊の活動状況から海軍生活など、網羅されている内容は多岐にわたっています。
   CMSIにおいては、これらの資料を丹念に分析しながら、今後の安全保障を考える上で重要なテーマやキーワードを抽出し、定期的に議論を重ねています。最近の記事において興味深いものは、2015年10月16日発行の『人民海軍』と2015年11月号の『当代海軍』に共通する「血性」というキーワードです。辞書的には、「勇気と高潔」を意味しますが、正確な翻訳はなかなか難しく、文脈からは、「戦闘に勝つため(Fight to Win)」の「闘争心(Fighting Spitits)」の重要性を訴えています。中国は、2015年5月26日発表の『中国の軍事戦略』と題した国防白書において、「海上における軍事闘争」に重点的に備える方針を明らかにしていますが、急速な近代化を進める人民解放軍海軍において、戦いに勝利する海軍としての士気を鼓舞するキャンペーンが盛んになってきていることが窺えます。

(2016年4月3日記)