海上自衛隊戦略指針

我が国を取り巻く国際環境がこれまで以上に速いスピードで厳しさと不確実性を増している中、海上自衛隊は、「海上自衛隊戦略指針」を定めました。これは、日本国民の生命・身体・財産、そして領土・領海・領空を守り抜くために、我々が取り組むべき努力の方向性を明確にしたものです。

目標<海上自衛隊が達成すべきこと>

 海上防衛力が果たすべき役割を分析し、次の3点を海上自衛隊が達成すべき目標として定めています。

1.我が国の領域及び周辺海域の防衛

 日本は、四方を海に囲まれた島国です。大小四千余りの島々からなる我が国は、広大なEEZ(※):排他的経済水域(世界第6位)を持っています。資源も少なく、多くを海外からの輸入に頼っています。そのため、海上交通に頼る我々はその安全確保と秩序の維持が重要となります。
※EEZ:排他的経済水域とは?(Exclusive Economic Zone)
 海洋法に関する国際連合条約に基づいて設定される、天然資源及び自然エネルギーに関する「主権的権利」、並びに人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋科学調査に関する「管轄権」が及ぶ水域の事を指す。

2.海上交通の安全確保

警戒監視活動中のP-1

 海上自衛隊は平素から航空機(P-1及びP-3C)により、航行する船舶などの状況を監視するほか、不測事態に対応するため、艦艇・航空機を柔軟に運用して日本周辺海域における警戒監視活動を行っています。

警戒監視活動中のP-1

3.望ましい安全保障環境の創出

 我が国は自由で開かれた海洋のために、インド太平洋諸国とともに地域の特性や相手国の事情を考慮しつつ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進していきます。

ASEAN乗艦協力プログラムでの防衛交流
スリランカ海軍との親善訓練
各国海軍との防衛交流

活動<目標達成の方策として実施すべき活動>

 海上自衛隊の3つの目標を達成するための方策は、次のとおり「環境の形成」、「平素からの対応」及び「有事への対応」の3つに大別することができます。これらの活動(=方策)は、平素においては事態の生起を抑止し、有事においては事態に適切に対処するとともに、事態の悪化を抑止しつつ、我が国を守り抜くというものです。

1.環境の形成

 常に安全保障環境を改善し続けることにより、脅威が現れるのを防ぎます。

例えば・・・

国際緊急援助活動
防衛交流
能力構築支援

2.平素からの対応

 積極的な活動を通じ、事態の発生とその悪化を防ぎます。

例えば・・・

警戒監視
海賊対処行動
共同訓練

3.有事への対応

 我が国の平和と安全が脅かされる場合には、脅威を取り除きます。

能力<目標達成の手段として保有すべき能力>

 海上自衛隊は、平素から有事にわたる全ての活動において、目標を達成するための各種能力を保有・運用しなければなりません。海上自衛隊として特に重視し、その強化に努めるべき能力は、次のとおりです。

1.「考え出す」能力(立案能力)

 海上自衛隊は、革新的技術の創出及び育成を図るとともに、我が国を守り抜くための戦略・作戦・戦術を案出し、これを更新し続けていきます。

2.「守り抜く」能力(作戦能力)

 海上自衛隊は、常続監視(情報収集、警戒監視及び偵察活動)に係る能力を強化するとともに、必要な海空優勢を堅持するために、有効に能力を発揮し得る部隊の保持に努めていきます。

3.「支え切る」能力(継戦能力)

 海上自衛隊は、より効率的、効果的な資源の配分により、高い継戦能力を維持するとともに、海上自衛隊全体の高稼働率の維持などを可能にする態勢の確立に努めていきます。

4.「優位に立つ」能力

 海上自衛隊の全ての活動と並行して、IW(Information Warfare)及び戦略的発信(Strategic Communication)を行い、脅威に対する優位を獲得し、その優位を維持し続ける能力を強化していきます。

海上自衛隊の努力の方向性<4つの充実>

 海上自衛隊は、その努力を集中する方向性を、次の「人」、「機能」、「構想」、「協働」という4つの分野に整理し、直面する課題に取り組んでいきます。

1.「人」の充実

 海上自衛隊の根幹である「人」

募集・援護の強化
効果的・効率的な教育
充実感あふれる勤務環境

2.「機能」の充実

 国民を守るための「機能」

先進技術・装備品
迅速・確実な意思決定
造船補給・施設等

3.「構想」の充実

 考え方=「構想」

戦略・戦術等
装備開発
知識・経験の共有

4.「協働」の充実

 共同・統合・総合=「協働」

米海軍との共同
他国の防衛協力・交流
他自衛隊・他省庁・民間との協力

リーフレット:両面印刷のうえ、三つ折りでお使いください。