令和6年9月4日(水)、第39期特別課程(自衛官31名)に対し統合幕僚長(吉田圭秀陸将)が「令和時代の戦略と統合作戦」をテーマに講話されました。
講話は、統幕の3つの役割(複合事態対応、戦争の抑止、望ましい安全保障環境の構築)から始まり、日本の国家戦略の変遷、そして、世界の戦略環境の変遷へと続き、戦略環境認識について冷戦期の二極構造から米国の一極構造そして現在の多極構造へと、約10年ごとに大きく変化しているとして、今後の2020年代から21世紀半ばまでの情勢を見定めた日本が取るべき戦略的アプローチについて述べられました。
また、ロシアによるウクライナ侵略に関する分析と教訓について述べられ、抑止の核心は、自国の防衛力強化と同盟による拡大抑止にあると述べられました。
そして、土山實男氏の著書「安全保障の国際政治学」から「焦りと傲り」(1)という言葉を引用して、相手の焦りから戦争を引き起こすというエスカレーションを抑止すること、侵攻は容易に成功するという傲りを生じさせないことが肝要であることを言及されました。そして、多国間協調はなくてはならないものであり、現在のNATO諸国との関係が強化されていることを戦略的に情報発信することが大切であること、また、今年度末に創設される我が国の統合作戦司令部(JJOC)の態勢を速やかに構築し、運用することが求められると述べられました。
最後に、学生たちに有事のリーダシップについては情報が不足している中で迅速かつ的確な決断を求められることを能登の震災を例に話されるとともに、今後の活躍を期待していると激励されました。
統合幕僚長 陸将 吉田圭秀 |
統合幕僚長講話の全景 |
引用文献(1)土山實男『安全保障の国際政治学−焦りと傲り〔第二版〕』
有斐閣、2014年4月、13-21頁。