防衛省・自衛隊は、多角的・多層的な安全保障協力を推進し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出していく。
多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進に向けて
「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンのもとでの取組
「自由で開かれたインド太平洋ビジョン」の3本柱
①法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
②経済的繁栄の追求(連結性の向上など)
③平和と安定の確保
防衛省における「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの方向性
その1 防衛協力・交流を活用し、主要シーレーンの安定した利用を確保
その2 信頼醸成や相互理解を進め、不測の事態を回避
その3 関係各国と協力し、地域の平和と安定に貢献
インド太平洋地域は、世界人口の半数以上を養う世界の活力の中核であり、この地域を自由で開かれた「国際公共財」とすることにより、地域全体の平和と繁栄を確保していくことが重要である。
防衛省・自衛隊は、「自由で開かれたインド太平洋」を推進するため、同地域における各国との間で防衛協力・交流を強化することとしている。
▲自由で開かれたインド太平洋 図
各国との防衛協力・交流の推進
- オーストラリア:19(令和元)年11月、防衛相会談を実施。防衛協力の深化・拡大について確認
- インド:19(令和元)年9月に防衛相会談、同年11月に防衛相会談及び閣僚級「2+2」を実施し、二国間の安全保障協力を進めることに対するコミットメントを表明
- ASEAN諸国:19(令和元)年11月、日ASEAN防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン」のアップデート版である「ビエンチャン・ビジョン2.0」を日ASEAN防衛担当大臣会合において発表、各国国防大臣と会談を実施
- 韓国:19(令和元)年11月、韓国政府が日韓GSOMIAを終了させる旨の通告の効力を停止する決定を行ったことに対し防衛大臣より「東アジアの安全保障環境が厳しい中で、日米、日韓、日米韓の連携が重要であり、そのような状況を韓国側も戦略的に考えた決定と考えている」とのコメントを発表
- 欧州諸国・カナダ・ニュージーランド:19(令和元)年11月のADMMプラス、20(令和2)年2月のミュンヘン安全保障会議の機会を活用し、各国国防大臣と防衛相会談を実施。19(令和元)年10月、陸幕長が初めてカナダを公式訪問
- 中国:19(令和元)年10月、中国艦艇が約10年ぶりに日本に寄港。同年12月、10年ぶりに防衛大臣が中国を訪問し、日中防衛相会談を実施
- ロシア:19(令和元)年8月から9月、陸自音楽隊がモスクワ国際軍楽祭に初めて参加。同年12月、ロシア海軍総司令官が18年ぶりの訪日
- 太平洋島嶼国:20(令和2)年1月から2月、防衛副大臣がフィジー、パプアニューギニア及びトンガを政務三役として初めて訪問
- 中東諸国:19(令和元)年11月のマナーマ対話、同年12月のドーハフォーラムに防衛大臣として初参加、ヨルダン・オマーンにも初訪問し、防衛相会談を実施。また、各国との電話会談も実施
▶日豪防衛相会談(19(令和元)年11月)
▶日印「2+2」(19(令和元)年11月)
▶フィジー防衛・国家安全保障・外務大臣と会談する山本防衛副大臣(20(令和2)年1月)
多国間における安全保障協力の推進
- 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)や、ASEAN地域フォーラム(ARF)をはじめとした多国間枠組みの取組が進展しており、アジア太平洋地域の安全保障分野にかかる議論や協力・交流の重要な基盤となっている。日ASEAN防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン2.0」に基づき、二国間協力に加え、多国間の枠組みでの協力を強化している。
- わが国としても、日ASEAN防衛当局次官級会合や東京ディフェンス・フォーラムを毎年開催するなど、地域における多国間の協力強化に寄与している。
- また、国際機関主催の国際会議、民間機関主催の国際会議のほか、各軍種間における取組にも積極的に参加している。
▶日ASEAN防衛担当大臣会合(19(令和元)年11月)
▶多国間フォーラム「ライシナ・ダイアローグ2020」に参加する山崎統幕長(20(令和2)年1月)
能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組
- 防衛省・自衛隊による能力構築支援は、12(平成24)年の開始以降、インド太平洋地域を中心に、15か国・1機関に対し、人道支援・災害救援、PKO、海洋安全保障などの分野で支援してきている。
- 能力構築支援の一環として19(令和元)年に実施した派遣は11カ国20件、延べ126名であり、招へいは4カ国1機関6件、延べ75名である。
- 具体的な事業として、19(令和元)年9月から10月にかけ、英国が開催する「ロイヤル・エディンバラ・ミリタリー・タトゥー」に参加するパプアニューギニア軍楽隊への演奏技術指導を行った。その他、ラオス、モンゴル、カンボジア、フィリピン、スリランカ、マレーシア、ミャンマー、ジブチなどで事業を実施した。
▶パプアニューギニア軍楽隊に対し教育する陸自隊員(19(令和元)年9月)
海洋安全保障の確保
- 海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎であり、極めて重要である。
- 自衛隊は、09(平成21)年以降、水上部隊、航空隊及び支援隊を派遣し、ソマリア沖・アデン湾において船舶を海賊行為から防護する活動を継続している。
- 共同訓練や寄港を通じインド太平洋地域沿岸国との連携を強化するとともに、沿岸国などの海洋安全保障に関する能力構築支援の取組や拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)などの地域の安全保障対話の枠組みにおいて海洋安全保障のための協力に取り組んでいる。
▶ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動に向け出発する海自隊員(19(令和元)年11月)
宇宙領域及びサイバー領域の利用にかかる協力
- 宇宙領域の利用にかかる協力として、米軍が主催する宇宙状況監視多国間机上演習「グローバル・センチネル」及び宇宙安全保障に関する多国間机上演習「シュリーバー演習」に参加した。
- サイバー領域の利用にかかる協力として、米国、英国、オーストラリアなどと防衛当局間サイバー協議を実施している。19(令和元)年12月には、これまでオブザーバーとして参加していたNATOサイバー防衛演習に初めて正式に参加したほか、19(令和元)年8月にはベトナム軍に対するサイバーセキュリティー分野の人材育成セミナーを実施するなど協力の拡大を図っている。
軍備管理・軍縮及び不拡散への取組
- 大量破壊兵器及びその運搬手段となり得るミサイルなどの拡散や武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術の拡散については国際社会の平和と安定に対する差し迫った課題である。また、近年、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際的な議論も行われている。
- 防衛省・自衛隊は、18(平成30)年4月から非国家主体への大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止を目的とした、国連安全保障理事会決議第1540号(04(平成16)年4月採択)に関する1540委員会専門家グループのメンバーとして職員1名を派遣するなどしている。
▶ニュージーランドにおいて太平洋諸島の国会議員に対して国連安保理決議第1540号を説明する防衛研究所職員(19(令和元)年9月)
国際平和協力活動への取組
防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動への取組を積極的に取り組んでいる。
多国籍部隊・監視団(MFO)への派遣
- 19(平成31)年4月、シナイ半島国際平和協力業務の実施について閣議決定を行ったうえで、初めての国際連携平和安全活動としてMFOへの司令部要員2名の派遣を開始した。
- 派遣要員は、シナイ半島南部シャルム・エル・シェイクの南キャンプに所在するMFO司令部において、エジプト・イスラエル両国とMFOとの連絡調整に従事する連絡調整部の副部長及び部員として勤務している。
▶MFOにおいて活動する陸自隊員(20(令和2)年4月)
国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への派遣
- 南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならずアフリカ全体の平和と安定につながるものであり、国際社会で対応すべき重要な課題である。
- UNMISS司令部に兵站、情報、施設、航空運用の各幕僚計4名を派遣しており、派遣施設隊の撤収後も引き続き、UNMISSの活動に貢献していく。
▶UNMISSにおいて活動する陸自隊員(19(令和元)年12月)
国連三角パートナーシップ・プロジェクト(UNTPP)への支援
- 本プロジェクトは、わが国が拠出した資金を基に、国連活動支援局が重機の調達や工兵要員等への訓練を実施しているものであり、15(平成27)年9月以降、アフリカに延べ164名の陸上自衛官を派遣し、9回の訓練をアフリカの8か国277名に対して実施している。
- PKO要員の30%以上がアジアから派遣されていることを踏まえ、18(平成30)年11月以降、アジア及び同周辺地域でも行っている。
また、国連PKOで衛生能力強化が課題となっていることを踏まえ、19(令和元)年10月には医療分野での教育を実施した。
▶ベトナムにおいて重機操作教育を行う陸自隊員(20(令和2)年2月)
国際緊急援助活動への取組
- 防衛省・自衛隊は人道的な貢献やグローバルな安全保障環境の改善の観点から、国際協力の推進に寄与することを目的に国際緊急援助活動に積極的に取り組んでいる。
- 近年では、ジブチ共和国で発生した大雨、洪水被害に対し19(令和元)年11月から12月にかけて、またオーストラリアで発生した大規模な森林火災に対し20(令和2)年1月から2月にかけて国際緊急援助活動を実施した。
▶ジブチ共和国における大雨、洪水被害に対する国際緊急援助活動に従事する隊員(19(令和元)年11月)
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