令和元年版防衛白書感想文コンクール

令和元年版防衛白書感想文コンクールは令和2年1月31日をもって応募を締め切りました。多数のご応募ありがとうございました。応募いただいた全ての感想文は、今後の防衛白書作成のための貴重なご意見とさせていただきます。

防衛副大臣を審査委員長とする審査委員会による厳正な審査の結果、以下の作品を受賞作品として選定いたしました。

受賞者の表彰につきましては、令和2年4月以降に防衛省本省において実施予定です。

題名をクリックすると作品を閲覧できます。

受賞作品

防衛白書を読んで
最優秀賞 森中 聖喜

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私が「令和元年版防衛白書」を読んで、最も印象に残った点は二つある。今日はこの二つの話題について、問題提起を行い、その答えを防衛白書を読み解くことで見つけていきたい。

まず一つ目は、「各国との交流」についてだ。このことについては、例えば、将官同士の交流や、各国軍との共同訓練の実施などが挙げられる。というのも、近年ニュースや新聞などで、自衛隊が各国軍と共同訓練を行った、という内容のものを多く見かけるようになったからだ。ここ数年の国外情勢を見ても、様々な国と交流を深めるというのは、大変に意義のあることだ。さて、私がこの話題を取り上げる上で疑問としているのが、「なぜそこまで交流を大切にするのか」ということである。このことについて防衛白書を読んでみると、前述の近隣諸国との関係構築以外にも、地域の安定化のためや、国際交流を深めるため、という理由もあるようだ。私はこれを見たとき、大変驚いた。私は今までこのような交流は日本の防衛のための事業だけを行っていると思っていたので、このような国際社会の安定のための活動をするという自衛隊の意思をとても感じた。これらの国際交流や防衛協力については、防衛白書を読むことで、自分が知っている以上の知識を得ることができた。例えば、モンゴルやカンボジアなどの国で行われた能力構築支援だ。その中では、多くの国へ自衛隊が様々な支援を行っていることが分かった。その上驚くべきことに、これらの国々への支援はたった一年で行われていたというのだ。私が初めて日本が支援した国の一覧を見たとき、五年ほどの実績をまとめて掲載しているのだろうと思っていたが、一年間での実績ということだったので、自衛隊の能力構築支援事業、果ては世界各国との関係強化への熱い姿勢を見ることができた。

また、個人的な推測ではあるが、自衛隊のこれらの活動は、隊員の方々にも良い影響を少なからず与えていると思う。例えば、他国との訓練で得られた数々の情報や、自衛隊と他国の隊員同士の交流などの様々な良い影響や成果を得ることができるという点だ。

これらのことから、私は「なぜそこまで交流を大切にするのか」という疑問に、「日本と諸外国との関係構築、また、世界の様々な地域の平和と安全のため」という答えを得ることができた。

次に、二つ目の印象に残った点として、私が挙げるのは、「自衛隊の装備品や部隊の変遷」である。なぜ私がこの話題を取り上げようと思ったのか、それは日本の国防に関わる最も重要な部分だと思うからだ。さて、平成三十年十二月に閣議決定された防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画を見てみると、沖縄方面への部隊配備や、宇宙空間やサイバー空間への対応といった、日々移り変わる情勢に柔軟に対応するための部隊計画が表されていた。そして、私がこの項目で確かめたい疑問は、「なぜ自衛隊はこのように変化していく必要があるのか」という点だ。近頃ニュースで自衛隊についての話題をよく目にする。その中では、増加する防衛費に関するものや、イージス・アショア導入の是非についてなどの様々なものがあった。これらのことについて防衛白書では、様々な問題への対策といった「答え」が書かれている。例えば、近年の装備品の導入について見てみると、新防衛大綱での、「多次元統合防衛力」の構築が大きく関係している。これは、前回の防衛大綱での「統合機動防衛力」という考えをより追究したもので、陸海空以外の空間に対応するというものだ。この中には、前述の宇宙、サイバー空間などへの対応能力を獲得するという目的がある。また、この「多次元統合防衛力」の達成により、陸海空自衛隊の能力を融合した「領域横断作戦」が可能になる。このことにより、対処能力のさらなる向上を図る必要があるために、様々な装備品を購入する、ということだ。

次に「少子高齢化に自衛隊はどのように対応するのか」についてだが、このことについては、隊員の募集対象年齢の引き上げや、女性の活躍推進、最新技術を用いた省人化などの多くの方法で隊員数を補っていくということがわかった。防衛白書の巻末資料を見ると様々な現場で活躍する女性自衛官の方々がいることなど、多くの点で、防衛力の維持が図られていた。

これらのことから私は「なぜ自衛隊はこのように変化していく必要があるのか」という疑問に「目まぐるしく変化していく情勢の中で、それに対応する能力の確保。また、少子高齢化の中での防衛力の確保」という答えを得ることができた。

防衛白書には多くの内容が書かれている。私たちはこれらの内容から自衛隊が伝えたいことを受け取り、理解していかないといけないと思う。

より国民視点に立った防衛白書へ向けて
優秀賞 池内 陽木

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令和元年版防衛白書は、各政策や取組について余すことのないほどの詳細な解説とそれらを補完する写真と図、さらには用語解説、コラムや現場の声として各隊員の“VOICE”の項目を設けるなど、広く国民に親しまれやすい内容となっている。また我が国の防衛政策が自衛隊と日米同盟を基軸とし、さらに各国・地域との安全保障協力を展開することで成立しているということが非常に分かりやすいものとなっている。本稿では、防衛白書が広く国民一人一人に防衛省・自衛隊の取組について知ってもらうことを目的の一つとしているものであるがゆえに、国民視点、読者視点に立った感想を述べていきたい。

まず、「平成の防衛省・自衛隊〜30年の歩み〜」が巻頭特集で組まれていることは、国民が防衛省・自衛隊の活動を再確認し、また理解を深めるためにも有益であり積極的に評価できる。そして特集では平成の各大綱について、その論点が平易な文章で記されていることから、国民各々が防衛政策の歩みを容易に概観することができよう。しかしながら安全保障政策にかかわらず、各政策は基本的に過去の政策を基礎として、時の情勢に適応したものが採用されることから、巻頭特集においてまずは「防衛この1年」を記し、次に「平成の防衛省・自衛隊」、そして「新たな防衛計画の大綱」という順で説明した方が、読者にとっては政策の連続性や流れをより理解しやすいものとなったと思われる。新大綱の特集が図や写真を多用し、一般読者にも理解を深めやすい内容となっているだけに、より一層その念が芽生えた次第である。

次に防衛白書には地方の視点がやや不足していると感じた。防衛や安全保障の問題はなにも東京や霞ヶ関のみの問題ではない。むしろ安全保障上の脅威を実質的に受けるのは、各地方でありその地域を管轄する各部隊であろう。それら地方の自衛隊組織の取組について、各駐屯地や各旅団などについて述べると膨大な量となってしまうので、例えば各地方部隊ごとの具体的な活動について、もう少し紙幅を割くべきではなかっただろうか。そうすれば各地方の市民も、主体者意識をもって安全保障問題を考えるきっかけとなり、自衛隊を含む防衛政策全体について理解が深まるはずである。一般的に国民にとって、社会保障や消費税など日々の生活に直結しやすい事項には関心を寄せるが、防衛問題は馴染みが薄いものである。それは防衛や安全保障そのものが高度な政治的事項であることに加えて、戦後平和国家として歩んできた日本国民にとっては、ある意味自然なことなのかもしれない。しかし平和国家は自明のものではなく、防衛省、自衛隊の不断の努力によって成り立っているのであり、そのことを国民が今一度認識するためにも、地方の視点として各地域における取組はもう少し必要であったと考える。

さらに安全保障研究の現状についても考えるきっかけを欲しかったと思う。確かに技術研究推進制度を活用した技術研究への取組はよく理解できる。しかしながら体系的な国際安全保障研究、つまり社会科学分野での防衛、安保研究が他の先進国に比べて不足している我が国にとって、防衛大学校以外の大学や諸機関における研究の現状を、その予算や支援制度なども含めて知りたいと感じた。これからの時代の安全保障政策を考える上では、技術研究と、的確な国際情勢認識と先見性を有する体系的な防衛・安保研究との有機的な連携が不可欠である。その観点からも研究の現状は示すべきであり、万が一取組が不足しているのであれば、その事実を、理由も含めて述べる必要があっただろう。

最後に防衛白書は、実際に行っている政策については詳細に記載しているが、全体的に今後の取組についての記述はやや少ないように感じた。例えば東京オリンピックについての内容がそうである。東京オリンピックに向けては、”VOICE”で自衛官アスリートの方々の声を紹介し、親しみやすい内容となっていることから、さらに踏み込んだ内容として、国民に安心感を与えるためにも、五輪開催時の発生を想定した各種自然災害や予期せぬ事態(テロなど)への対応策を具体的に示すことは必要なことであったと思う。またコラムとして陸上自衛隊朝霞訓練場がオリンピックの射撃会場となっていることなどを挿入してもよかったかもしれない。

筆者は、民主主義国家における防衛政策をより強力なものとする要素の一つは、政策に対する広い国民の理解であると信じている。昨今目まぐるしく激変する安全保障環境や多発する自然災害の中で、防衛白書がより充実した内容となることを願い、国民視点に主眼を置き、率直に忌憚のない意見を述べた。一意見として少しでも今後の防衛白書作成の参考になるところがあれば幸いである。

力と技術とヒューマニティー 新たな『日本の防衛』への期待
優秀賞 辻󠄀 直子

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「令和元年版防衛白書」を拝読しての感想は、多くの国民の方々に読んで頂きたい白書であるという点に尽きる。下記に印象に残った点と感想を述べる。

一点目は、白書全般を通して、豊富な写真やグラフ等の資料を用いて、章ごとのテーマや方針が具体的に説明されており、読み易い点である。改めて我が国を取り巻く現状について認識を深める事が出来た。特に、第Ⅰ部第2章「諸外国の軍事動向など」において、米国及び周辺諸国の軍備等の現状が前述の通り具体的に説明・図示されており、非常に分かり易い記述となっている。主に米中露において「宇宙・サイバー・電磁波」の三領域の研究・開発は予想以上の速度で進み、「ハイブリッド戦」「領域横断作戦」等の新しい作戦が今後戦略の主流となる事が理解できた。関連して「ゲーム・チェンジャー」技術の進歩も著しく、国内技術の進捗を懸念したが、第Ⅳ部第2章を読み、「安全保障技術研究推進制度」を活用した官民学での研究が進んでいる事を知り、この研究の継続が我が国の防衛に繋がると考えた。我が国を取り巻く国際社会の現状は非常に厳しく、前述の三領域における国家の存立を賭けた争いが今後更に顕在化する事は必須であろう。

二点目は、その対策として、第Ⅱ部第3章「多次元統合防衛力」に基づく第Ⅲ部第1章第2節3「宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応」は、初めて知る事が多く、興味深く拝読した。まず宇宙の領域だが、平成二十九年に「防衛省として初めて所有・運用するXバンド防衛通信衛星『きらめき2号』」が打ち上げられていた事や、航空自衛隊に宇宙領域専門部隊が新設予定である事に興味を持った。特に、米空軍主催の多国間机上演習「シュリーバー演習」は、技術向上や他国との情報交換を図る為に、今後も参加を継続して頂きたいと願う。次にサイバーの領域だが、他国からのサイバー攻撃は年々増加傾向にあり、サイバーセキュリティ能力向上の為に「サイバー攻撃対処6本柱」が策定され、共同のサイバー防衛部隊が新設予定である事は、防諜の目的も含めて防衛上の重要方針であると考えた。更に電磁波の領域だが、核開発を行っている周辺国による「電磁パルス攻撃」の可能性も今後否定出来ない為、「電磁波政策室」「電磁波領域企画班(仮称)」の設置や、ネットワーク電子戦装置の今後の活躍に期待している。私は今後もこの三領域についての訓練・研究の進展に興味を持ち続けたい。

三点目に、今回の白書の記述にある「『自由で開かれたインド太平洋』というビジョンを踏まえ、同地域における各国との共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援などを含む防衛協力・交流」の取組は、欧州及びインド太平洋諸国で隊員の方々により実施されており、国際社会の安定に繋がる素晴らしい活動である。この取組は、我が国のシーレーンの確保による安全保障の確立や国内の経済安定にも直結する為、更に多くの国民の方々に知られる事を望む。第Ⅲ部第3章第2節1を読み、自衛隊の海賊対処行動が各国首脳や護衛を受けた船舶の船長等から感謝されている事を今回初めて知った。この記述を読み、第一次世界大戦当時の大正六年(一九一七年)から翌年まで、地中海において日本海軍の第二特務艦隊が連合国側の艦艇・商船を護衛して高い評価を得た史実と重なり、胸が熱くなった。

四点目に、私は沖縄県在住だが、高頻度での中国海警局の船による尖閣諸島の領海侵入や、中国機による領空侵犯に伴うスクランブル発進が近年増加傾向にある点に不安を感じている。国家の三要素の一つである「領域」への他国の侵入を阻止する為には、「島嶼部に対する攻撃への対応」「国民保護に関する取組」も勿論重要であるが、まず私達国民の「領域を守る意識と安全保障についての知識」を高める必要があると考える。

しかし、国内で安全保障について学べる大学等が少なく、教員も安全保障の専門知識が十分に無いまま、小・中・高校で社会科系の科目の授業を行っている現状である。

そこで、第Ⅱ部第4章第1節5「6(4)知的基盤」の「国民が安全保障政策に関する知識や情報を正確に認識できるよう教育機関などへの講師派遣」の記述を読み、今後、児童・生徒及び教員も含めて安全保障への理解を深める為に、講師派遣の積極的な実施を是非検討して頂きたいと思った。

結びであるが、装備品の購入・開発はもとより、「人的基盤の強化」について、隊員の方々の「生活・勤務環境の改善及び処遇の向上」も踏まえた防衛費の増額は不可欠な現状であると、再認識した。長い歴史と伝統を持つ我が国の存立の為に、また国際社会の平和と安定に繋がる、力と技術とヒューマニティのある防衛省・自衛隊であって頂きたいと願い、今後も応援させて頂く所存である。

防衛白書を読んで
優秀賞 末田 春花

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「防衛白書の読書感想文を募集しているよ」と母に言われた時に、時々テレビで見るバラエティ番組や防大生のドラマの延長だと勝手に思い、副賞もあるし「やってみる宣言」をしました。

実際に防衛白書を読んでみてひどく後悔しました。災害救助だけでなく豚コレラなどの防疫措置もあるし、様々な国との親善訓練や海賊から日本の船舶を守ったりと、活動内容も活動する場所も幅広くて驚きました。

私は、「自衛隊」というものをよくわかっていなかった事を知りました。今まで私は「自衛隊」はずっと日本に居て訓練をして、たまに災害救助もあるけれど『日本国内を守るために存在する人たち』とぼんやりと思っていました。

平和ボケという言葉をよく聞きます。私たちは毎日をなんとなく生活していますが、今も世界のあちこちで戦争や緊迫した情勢が繰り広げられています。そんな中で一つの国として国際的な協力を担うことも求められています。今まで私は誰がいつ、その役割を果たしているのか?と考えることもありませんでした。

私は高校1年生で知識も乏しく、また学校で学ぶ内容もいわゆる基礎的な知識でしかありません。私にとって防衛白書は、社会の教科書のほとんど見ることのない巻末資料がさらに詳しく書かれているような本でした。難しすぎて時々出てくる解説やコラムしか理解できないことに情けなさを感じました。ラグビーやオリンピックなどスポーツの大会は大きく報道されるし私たちも狂喜乱舞して応援しているのに、国を守ってくれている人たちであり、国際協力などで国を代表してくれている人たちの活動について無関心であったことに恥ずかしさを感じています。

防衛白書の中で特に興味をもったのは領土に関する記述です。領空侵犯によるスクランブル発進の回数は年々増加傾向にあることを知りよく解らない怖さを感じ、ずっと見張っていないといけない!安心して夜も眠れないのではないか?と不安に思ったりもします。これからは、領海や領空だけでなく宇宙空間やサイバー領域・電磁波領域など私たちの想像のつかない領域まで守らなければならない時代が来ています。自衛隊では隊員の負担が増えていくばかりなのでは?それだけではなく、科学技術の進歩と一緒に個人のスキルも向上させていかなければ・・・と考えると「自衛隊」の存在意義は、今後大きくなるばかりです。

私たちはこれからの日本を生きていく立場です。グローバル、グローバルと言われますが、日本の良さを知った上で世界の中での位置付けや役割についても考えていかないと世界から孤立してしまう恐れがあるのではないでしょうか。防衛白書を読んでみて、これらについて知ることや考える機会ができたことは、自分にとっての将来の夢や目標についても立ち止まって考える事に繋がったように思います。改めて「知識を得ることや考えること」の重要性を感じています。

私は「歴史」を勉強したいと思っています。過去の事を知るためだけではなく、過去を知ることで未来へと繋げていきたいと思っています。

最後にお願いがあります。現在の防衛白書はイマドキのJK(女子高生)には専門用語などが多すぎて難しすぎます。『防衛白書中高生版』があれば、国防だけでなく国際情勢・PKOなどに興味を持つ子供たちの参考書にもなりえるのではないでしょうか。  

令和元年版防衛白書感想文
特別賞 津金澤 和未

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防衛白書との出会い。
それは、日頃からボールペン等の自衛隊グッズをくれる知人から「読んでみる?」と渡されたのが、きっかけだった。
実用性のあるグッズは喜んでいただく私だが、正直、この厚さの防衛白書を手にして戸惑う自分がいた。
重い。重すぎる。大きさも、電車やバスの中で読むにしては、持ち運びに不便なこと、この上ない。
それに、毎日これといった変化もなく静かに生きてきた私には、この国の防衛政策について読み解くなど、気が重くて仕方がなかった。
読者を楽しませようと執筆される一般の書籍とは毛色の違う書物だが、何事も経験。
こうして気乗りしないまま、防衛白書のページをめくることになったのだ。

パラパラとめくったところで手が止まったのは、巻頭特集の平成の防衛省・自衛隊~30年の歩み~。
平成における自衛隊の活動を目で追うことができる。
自分が小学生の時に起こった阪神大震災や地下鉄サリン事件。中学生の時には、能登半島沖不審船事案が連日報道され、不安に苛まれた。
あれから約25年が経ち、平成は令和になり、子どもだった私は母になった。
当時は自衛隊の活躍についての報道も少なく、地震が起きたらどうしよう、外国から攻め込まれたらどうしようと怯えるだけだったが今は違う。
インターネットやSNS、防衛白書や然るべき方法で防衛省・自衛隊の活動が発信されている。

私が子ども時代に感じた恐怖を、今の子ども達は「自衛隊がいるから心強い。」「いずれは自分も!」と思ってくれる社会になったと信じている。
一方、インターネットの発達により情報が盛んに飛び交うようになったことで、情報本部が設置された。
おびただしい量の情報を自ら収集・解析するとともに、それらを集約・整理し分析を行う、我が国最大の情報機関である。
かつて、軍艦で大砲を撃ち合っていた時代が終わったように、武器を主力に用いて戦っていた時代は過ぎ去ろうとしている。情報を戦力に戦う時代となったのだ。

肉体を鍛え、武器を用いて防衛に臨んでいた自衛隊は、次世代に向けて対応できる組織となったのではないだろうか。
また、国際社会においても貢献し続け、平和を作り出す自衛隊を私は心から誇りに思う。
平成3年のペルシャ湾掃海部隊派遣から国連平和維持活動(PKO)、さらに平成21年から始まった海賊対処行動は現在も活動を続けている。
私たちの静かな日常。言い換えれば、平和な日常というものは、最初から存在するものではなく、昔から人の手で作り出されているのだ。

時代の変化と共に、防衛方法も範囲も変わりゆく自衛隊。
気が付けば、我が子の成長を見守るように、その歩みを追っていた。

ここでふと疑問を持った。
平和を作り出す彼らにも家族はいる。中には小さな子を持つ隊員もいることだろう。
災害や非常事態は待ってはくれないし、いつ来るかも当然に予告は無い。
このような時に、彼らは子どもたちをどこに預けるのだろう?
その疑問は第IV部第1章第2節で解決できた。
「不規則な勤務態勢である隊員が任務に専念するために、各地の駐屯地等に庁内託児施設が整備されている」。
さらに、「災害派遣時における緊急登庁時において、他に預け先がなく帯同して登庁せざるを得ない隊員の子どもを自衛隊の駐屯地などで一時的に預かる緊急登庁支援の施策を推進している。」とある。
このようなサポートをしているのも、民間の保育士ではなく、講習を受けた隊員だそうだ。
自衛隊は、高度な通信技術や情報処理技術、さらに、医療、建築、気象・海洋観測などさまざまな職域・職種のスペシャリストを育成し、その総合力を任務遂行に活かす。
「自衛隊には無い職種は無い」と言われるほど、多種多様な能力を持つ組織であるが、この自己完結力はここにも表れていた。

冒頭で、防衛白書を重いと言い放った私だが、これを改めよう。
日本の防衛に携わる人たちは、この書物の重さとは比にならないぐらいの重い使命を担って、日々訓練に励んでいるのだ。
防衛白書は、日本の防衛をはじめ、大規模災害対応、国際平和協力活動など、活動は多岐にわたることを教えてくれた。その活動を支えるために、制度や環境が整えられつつあることも知った。また、随所に掲載されているコラムから、現場で働く方々の声も聞けた。
この書物は、重いということはない。

読了した今。
日本の防衛について、「知らなかった」ではなく、「知ろうとしなかった」ことをただただ恥じ入る。
今の私にできることは、「自衛隊とは何か。また、その活動内容を正しい理解と共に周囲に伝えていくこと。」ではないだろうか。
そんなことを考えていると、背後から平成生まれの息子の気配を感じた。
「お母さん、何読んでるの?」
無邪気な声で、私の手元の書物に興味を示した息子は、どのような感想を残すのだろう。
知人が私に防衛白書を勧めた気持ちが、今ならわかる気がする。
「読んでみる?」私は微笑みながら、防衛白書を手渡した。

防衛白書は若者にとって必要な一冊
特別賞 内村 佳保

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数年前に社会人となり、仕事柄、外国人と接する機会が多いのですが、その方たちと話をするたびに、多くの外国人は母国の政治や軍事政策などに対してはっきりと自分の意見を言うことができるのだな、という印象を感じていました。

それに対して、私は、昨今、北朝鮮がミサイルを日本に向けて発射したことや、外国漁船が日本の領海にたびたび侵入してきていることをニュースで耳にしても、どこか他人事のように思え、現在、防衛省・自衛隊がどのようなことをしているのか、日本の防衛において何が問題となっているのかということに関して、他人に対して自分の言葉できっちりと説明することは難しい、と思っていました。「防衛」という言葉の響きから、なんとなく堅苦しく、理解しづらいものではないか、というイメージを抱き、日本の防衛について詳しく調べてみる、真正面から向き合ってみることをあまりしてきませんでした。

今回、「令和元年版防衛白書」を手に取り、一番初めに感じたことは、防衛白書はカラー刷りで、写真がふんだんに使われており、想像していた以上に読みやすいものだ、ということです。文字も大きく、小さな子どもからご年配の方まで、幅広い年代に読んでもらいやすいように作られている印象を持ちました。

また、内容は「第I部 わが国を取り巻く安全保障環境」、「第Ⅱ部 わが国の安全保障・防衛政策」、「第Ⅲ部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)」、「第Ⅳ部 防衛力を構成する中心的な要素など」の四部構成となっており、防衛に関する知識がなくても、日本の防衛がどのようなことに取り組んでいるのか、何を重要視しているのかなど、すんなりと理解できるものになっていました。

例えば、昨今、日本を取り巻く安全保障環境は大きく変わってきており、陸・海・空における対応のみならず、新たに宇宙・サイバー・電磁波といった領域における軍事的な強化が必要とされています。「防衛」と言えば、ミサイル攻撃などへの対応や領空侵犯に備えた警戒が想起されますが、それらだけでなく、通信機器が発達し、世界中のあらゆる人々が手軽にインターネットを利用できるようになった今日では、一昔前の軍事的なやり方では対応できない、新たな脅威が私たちの生活の周りに潜んでいるのだと危機意識を持つことができました。

さらに、防衛省・自衛隊が自然災害などに対していかなる対応を行っているか、ということに関しても興味深く読みました。私は、1995年の阪神淡路大震災発生時、震源地近く(兵庫県)に住んでおり、被災した経験があります。当時はまだ赤ん坊でしたが、多くの自衛隊員が被災地に入り、支援してくださったことは、震災から何年も経った後でも、学校の先生などから繰り返し聞いてきました。日本は、地震大国です。阪神淡路大震災の他にも、東日本大震災が起こったことは人々の記憶に新しいですし、2018年には北海道胆振東部地震が発生しました。北海道胆振東部地震において、警備犬とともに捜索活動を行う空自隊員の写真が令和元年版防衛白書に載っていますが、このような自衛隊員の懸命な活動が阪神淡路大震災の時も行われたからこそ、私の故郷である兵庫県は、震災から二十五年経って、現在の綺麗な整備された街並みを取り戻せたのだと、再度感謝の念を抱きました。

新聞やテレビなどでは大きな災害が主に報道されますが、2018年度は443件の災害派遣が行われたとのことで、自分が思っている以上に災害が日本では起こっているのだと驚きました。このような自衛隊員の方々の支援があるからこそ、今日の日本の姿があるのだと思います。

そして、防衛力を支える人たちの働き方について具体的に書かれていたことも印象に残りました。世間でも、働き方改革が声高に叫ばれ、プレミアムフライデーが導入されたり、残業をできるだけなくそうという動きが見られますが、自衛隊でも、育児をしながら活躍できるために託児施設を基地内に設けるなど、職業生活と家庭生活を両立しやすい環境づくりを進めているということは、初めて知りました。自衛隊は隊員のほとんどが男性だという印象がありましたが、近年では女性職員の採用・登用をより一層推し進めているとのことで、特に空自初の女性戦闘機操縦者が誕生したことには、大変驚きました。意欲や能力、適性のある女性が防衛省・自衛隊員として様々な分野で活躍されていることは、同じ働く女性として応援したいです。

残念ながら、防衛白書を読んだ、という声は私の周りでは聞いたことがありません。防衛白書を読んでいる若者は、日本でまだまだ少ないと思いますし、防衛白書という本の存在すら知らない若者も多くいるのではないかと思います。しかし、日本の防衛は決して他人事ではなく、「防衛白書」は、むしろこれからの日本社会を支えていく若者にとって必要な一冊なのではないかと、今回読んでみて強く感じました。

自衛隊のことを詳しく知るために
特別賞 平野 美樹

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私は、航空自衛隊のオーストラリア派遣について聞き、自衛隊について書いてある本はないかと調べ、この本を見つけました。

私がこの本を読んで一番衝撃を受けたことは、想定していた以上に領海・領空侵犯が多く、そしてその数が全体的に増加傾向にあることです。それと同時に、周辺国の武器開発が進み、長距離弾道ミサイルや、無人偵察機の改良など、日本の安全を危うくするような動きが進んでいることを改めて実感しました。

防衛以外の面でも自衛隊は、災害派遣などを行い、被害を受けた地域や人々に多大な支援を行っています。昨年の台風の際には、実際に私の祖父母が被災し、その時に祖母は、近くに寄り添い、一緒に掃除をして下さった陸上自衛隊の方々の存在はとても心強く、いつも励まされたと言っていました。私はこの言葉を聞き、災害派遣の大切さを改めて感じました。物資救助だけではなく、精神的な支えをももたらす災害派遣隊の隊員の方々には尊敬の念と感謝の思いばかりです。自分たちも大変な苦労をしているのに、被災者のことを思って活動される姿には心を打たれました。

また、今日は防衛範囲として、陸上・海上・航空だけでなく、新たな分野である宇宙・サイバー空間が加わり、より多くの難題に立ち向かうことが必然的になっています。その結果、少ない防衛関係費から、新しい訓練や新しい装備品の導入、従来の装備品の改良などを行う必要が生じているという厳しい現実をつきつけられました。また、より強い陸・海・空の統合・協力、そして、他国との共同訓練の必要性を深く理解しました。

さらに、自衛隊のワークライフバランスについての努力も忘れられません。仕事だけでなく、私生活もおろそかにしてはいけないことはわかっているが、休みなどが取りにくい現代社会の中で先陣を切ってしっかりとした対応に乗り出していることは、多くの隊員の方々がしっかりとした状態で訓練などに励まれていることからもよくわかります。また、女性隊員の活躍の場がさらに拡大されていることは、私のように将来自衛官になりたいと思っている女子にとっては感謝の思いばかりで、自衛官になってしっかりと活躍したいという思いをより一層強くさせます。

国際社会においては、PKO国連平和維持活動をはじめとして、新たに多国籍部隊・監視団としてのシナイ半島への派遣など、いろいろな国や地域で活躍し、そして高い評価を得ていることを知りました。財政上の支援だけでなく、人的な支援でも国際平和の維持のために働き、そして実際に貢献されている姿は素晴らしく、あこがれです。

私の将来の夢は自衛官として日本という国家を守り、さらには、世界の平和を日本の代表として維持する活動に参加することです。この間、少しでも自衛隊について直接知りたいという思いから、航空自衛隊那覇基地を見学させていただき、また、海上自衛隊呉資料館「てつのくじら館」を訪れました。その時に、現役隊員の方やOBの方からお話を聞き、大変なこともあるけれど、やりがいのある自衛隊の隊員になるという夢をより強く持ちました。しかし、今回、「防衛白書」を読んで、まだまだ知らないことだらけであったことを強く実感しました。これを機に、より多くの自衛隊の行事に参加し、自衛隊についてより深く知りたいと思います。そして、周りの人にも、気づかないところで国家の安全を守り、私達の安全な生活を保障して下さっている自衛隊についてもっと知ってもらいたいです。

お問い合わせ

防衛省 大臣官房企画評価課 白書作成事務室
 電話:03-3268-3111(代表)
 メール:[email protected]