細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約

昭和五十七年六月八日
条約第六号

 この条約の締約国は、あらゆる種類の大量破壊兵器の禁止及び廃棄を含む全面的かつ完全な軍備縮小への効果的な進展を図ることを決意し、効果的な措置による化学兵器及び細菌兵器(生物兵器)の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄が厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小の達成を容易にすることを確信し、千九百二十五年六月十七日にジュネーヴで署名された窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の有する重要な意義を認識し、同議定書が戦争の恐怖の軽減に貢献しており、また、引き続きその軽減に貢献することを認識し、同議定書の目的及び原則を堅持することを再確認し、すべての国に対しその目的及び原則を厳守することを要請し、国際連合総会が同議定書の目的及び原則に反するすべての行為を繰り返し非難してきたことを想起し、諸国民間の信頼の強化及び国際関係の全般的な改善に貢献することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを希望し、化学剤又は細菌剤(生物剤)を利用した兵器のような危険な大量破壊兵器を効果的な措置により諸国の軍備から除去することが重要かつ緊急であることを確信し、細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の禁止に関する取極が化学兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止のための効果的な措置について合意を達成するための第一歩となるものであることを認識し、この合意の達成のために交渉を継続することを決意し、全人類のため、兵器としての細菌剤(生物剤)及び毒素の使用の可能性を完全に無くすことを決意し、このような使用が人類の良心に反するものであること及びこのような使用のおそれを最小にするためにあらゆる努力を払わなければならないことを確信して、次のとおり協定した。

第一条

締約国は、いかなる場合にも、次の物を開発せず、生産せず、貯蔵せず若しくはその他の方法によって取得せず又は保有しないことを約束する。

第二条

締約国は、この条約の効力発生の後できる限り速やかに、遅くとも九箇月以内に、自国の保有し又は自国の管轄若しくは管理の下にある前条に規定するすべての微生物剤その他の生物剤、毒素、兵器、装置及び運搬手段を廃棄し又は平和的目的のために転用することを約束する。この条の規定の実施に当たっては、住民及び環境の保護に必要なすべての安全上の予防措置をとるものとする。

第三条

締約国は、第一条に規定する微生物剤その他の生物剤、毒素、兵器、装置又は運搬手段をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと及びこれらの物の製造又はその他の方法による取得につき、いかなる国、国の集団又は国際機関に対しても、何ら援助、奨励又は勧誘を行わないことを約束する。

第四条

締約国は、自国の憲法上の手続に従い、その領域内及びその管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても、第一条に規定する微生物剤その他の生物剤、毒素、兵器、装置及び運搬手段の開発、生産、貯蔵、取得又は保有を禁止し及び防止するために必要な措置をとる。

第五条

締約国は、この条約の目的に関連して生ずる問題又はこの条約の適用に際して生ずる問題の解決に当たって相互に協議し及び協力することを約束する。この条の規定に基づく協議及び協力は、国際連合の枠内で及び国際連合憲章に従って、適当な国際的手続により行うことができる。

第六条

第七条

締約国は、この条約の違反によりいずれかの締約国が危険にさらされていると安全保障理事会が決定する場合には、援助又は支援を要請する当該いずれかの締約国に対し国際連合憲章に従って援助又は支援を行うことを約束する。

第八条

この条約のいかなる規定も、千九百二十五年六月十七日にジュネーヴで署名された窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書に基づく各国の義務を限定し又は軽減するものと解してはならない。

第九条

締約国は、化学兵器についてその効果的な禁止が目標とされていることを確認し、化学兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄のための効果的な措置について並びに兵器用化学剤の生産又は使用のため特に設計された装置及び運搬手段に係る適当な措置について早期に合意に達するため、誠実に交渉を継続することを約束する。

第十条

第十一条

いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正は、締約国の過半数が改正を受諾した時に、受諾した締約国について効力を生ずるものとし、その後に改正を受諾する他の締約国については、その受諾の日に効力を生ずる。

第十二条

前文の目的の実現及びこの条約の規定(化学兵器についての交渉に関する規定を含む。)の遵守を確保するようにこの条約の運用を検討するため、この条約の効力発生の五年後に又は寄託政府に対する提案により締約国の過半数が要請する場合にはそれ以前に、スイスのジュネーヴで締約国の会議を開催する。検討に際しては、この条約に関連するすべての科学及び技術の進歩を考慮するものとする。

第十三条

第十四条

第十五条

この条約は、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語及び中国語をひとしく正文とするものとし、寄託政府に寄託する。この条約の認証謄本は、寄託政府が署名国及び加入国の政府に送付する。