防衛力整備計画
Ⅰ 計画の方針

 「国家防衛戦略」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)に従い、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化し、相手の能力と新しい戦い方に着目して、5年後の2027年度までに、我が国への侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できるように防衛力を強化する。おおむね10年後までに、防衛力の目標をより確実にするため更なる努力を行い、より早期かつ遠方で侵攻を阻止・排除できるように防衛力を強化する。

 以上を踏まえ、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行う。

  1.  我が国の防衛上必要な機能・能力として、まず、我が国への侵攻そのものを抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする必要がある。このため、「スタンド・オフ防衛能力」と「統合防空ミサイル防衛能力」を強化する。
     また、万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、これらの能力に加え、有人アセット、さらに無人アセットを駆使するとともに、水中・海上・空中といった領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保できるようにする必要がある。このため、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」を強化する。
     さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させられるようにする必要がある。このため、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」を強化する。また、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤に加え、防衛力を支える人的基盤等も重視する。
  2.  装備品の取得に当たっては、能力の高い新たな装備品の導入、既存の装備品の延命、能力向上等を適切に組み合わせることにより、必要十分な質・量の防衛力を確保する。その際、研究開発を含む装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化等によるコストの削減に努め、費用対効果の向上を図る。また、自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結し得る分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性が高い事業については、民生先端技術の取り込みも図りながら、着実に早期装備化を実現する。
  3.  人口減少と少子高齢化が急速に進展し、募集対象者の増加が見込めない状況においても、自衛隊の精強性を確保し、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上を図る観点から、採用の取組強化、予備自衛官等の活用、女性の活躍推進、自衛官の定年年齢引上げ、再任用自衛官を含む多様かつ優秀な人材の有効な活用、生活・勤務環境の改善、人材の育成、処遇の向上、再就職支援等の人的基盤の強化に関する各種施策を総合的に推進する。
  4.  日米共同の統合的な抑止力を一層強化するため、宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦に係る協力及び相互運用性の向上等を推進するとともに、あらゆる段階における日米共同での実効的な対処力を支える基盤を強化するため、日米間の情報共有を促進するための情報保全及びサイバーセキュリティに係る取組並びに装備・技術協力を強化する。また、在日米軍の駐留を支えるための施策を着実に実施する。
     自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進するため、円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、情報保護協定等、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備に更に推進するとともに、共同訓練・演習、防衛装備・技術協力、能力構築支援、軍種間交流を含む取組等を推進する。
  5.  防衛力の抜本的強化に当たっては、スクラップ・アンド・ビルドを徹底して、組織定員と装備の最適化を実施するとともに、効率的な調達等を進めて大幅なコスト縮減を実現してきたこれまでの努力を更に強化していく。あわせて、人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。