平成14年1月
防衛庁
1.趣旨
- 平成13年4月に「生物兵器への対処に関する懇談会」から防衛庁長官に報告書が提出
- 平成13年5月に「生物兵器対処に係る連絡会議」を設置
- 平成13年10月に米国で炭疽による死亡者が連続して発生し、生物剤使用の脅威が顕在化
- 生物兵器の脅威及び想定される事態を踏まえ、総合的な生物兵器対処に取り組むことが重要であり、本件は施策の全体像及び方向性を示すもの
2.生物兵器の脅威
(1)生物兵器の拡散
冷戦終結後、非対称的な攻撃手段を求める国家やテロリストが生物兵器を取得・開発・製造・使用することが新たな脅威として懸念
(2)生物兵器の特徴
軍事目標への攻撃、一般市民への攻撃及びテロの手段のいずれにも使用可能
(3)脅威となる生物剤
当面は炭疽菌と天然痘ウイルスとが中心だが、ボツリヌス菌(毒素)、ペスト菌及び将来的には未知の生物剤も視野
3.防衛庁・自衛隊が対処すべき事態及び政府全体の中での役割
(1)防衛出動に至らない場合(生物テロ)
災害派遣等及び治安出動に際しては、内閣が定めた役割分担が基本
(2)防衛出動により対処する場合
一般国民に被害が生じた場合における政府全体の対処体制の整備は今後の課題
(3)その他
4.基本方針
- 防衛庁・自衛隊としては、国家防衛の任務を適切に遂行し、また生物兵器使用に対する抑止効果を高めるため、自隊防護能力を備えることにより各種任務を遂行・継続できる能力を確保することが急務。また、これにより整備する能力を基に、関係省庁との連携の下、一般の国民に生じる被害への対処を政府全体として考えていくべき
- 防衛庁・自衛隊は、厳しい財政事情の制約を踏まえつつ、広範多岐に亘る生物兵器対処能力及びそれに必要となる基盤を早期に、総合的かつ着実に整備すべき
5.生物兵器対処に向けた整備の基本的考え方
(1)機能保持に向けた基盤整備の在り方
①検知及びサーベイランス
生物剤の有無の検査及び汚染地域の特定並びに感染症発生状況の把握
- 検知器材の整備
- 広範囲に亘る検知システムの構築の検討
- 工学・バイオテクノロジー等専門家の育成
- 自衛隊員を対象とした健康情報の迅速な把握と分析体制の整備
- 疫学専門家の育成
②同定
生物剤の種類の同定及び病原性等の特徴の把握
- 微生物に対する検査体制の整備
高度な同定施設(BSL-4)については、政府全体での調整を基本としつつも、防衛庁・自衛隊としても同種設備等の保有について検討
- 微生物等基礎医学専門家の育成
③防護
④予防
- 生物剤に対する予防接種等の検討
- 生物剤に対する各種ワクチン等の安定的取得方策の追求
ワクチンに係る検討会を設置
⑤診断・治療
- 病原体を外に漏らさない構造を有する感染症病室及び検査室の整備
- 診断・治療面における自衛隊病院や防衛医大病院等の整備・充実
- 治療薬など必要な医薬品の備蓄
- 生物剤に対する知識及び診断治療技術を有する医官等の育成
生物兵器対処セミナーを実施
- 診断・治療指針の策定
⑥除染
- 適切な剤の確保及び傷病者除染ユニット等の整備
- 艦内、機内及び施設内の除染法の確立
(2)総合的な生物兵器対処能力の整備
①生物兵器対処委員会の設置
運用局長を長とする生物兵器対処委員会を設置
②訓練及び運用研究の充実
図上演習や実動訓練の実施及び運用研究による対処能力の向上
③即応態勢
専門家を育成し、専門的なチームの編成・派遣を検討
④国際的取組への協力
国際機関への防衛庁職員の派遣
⑤情報の公開・広報
適切な秘密保全が必要。他方、国民の理解を深め信頼と協力を得る観点から、可能な範囲で情報の公開と広報を実施
⑥その他
- 装備品を部隊で使用するまでの手続の迅速化
- 研究開発分野における防衛医大、技術研究本部及び各自衛隊の役割の明確化
6.まとめ
今回問題点を整理したが、関係省庁との連携の下、状況の変化を踏まえながら生物兵器対処への取組を常時改善していくことが必要
将来の生物兵器対処(イメージ図)