中東地域における⽇本関係船舶の安全確保に関する政府の取組

(更新:令和6年11月5日)

中東地域における自衛隊の情報収集活動について

中東地域において緊張が⾼まる中、政府として、中東地域における平和と安定及び⽇本関係船舶の安全の確保を目的とした政府⼀体となった取組を推進するため、令和元年12⽉27⽇に閣議決定を⾏いました。この閣議決定においては、我が国独⾃の取組として、更なる外交努⼒や航⾏安全対策の徹底とあわせて、⽇本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するため、⾃衛隊による情報収集活動を政府の航⾏安全対策の⼀環として実施することとしています。

このページでは、この⾃衛隊の情報収集活動について、国⺠の皆様からよくいただくご質問にお答えしていきます。

(注)⽇本関係船舶とは、以下の船舶を指します。

  • 日本籍船
  • 日本人が乗船する外国籍船
  • 我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船
  • 我が国の積み荷を輸送している外国籍船であって我が国国⺠の安定的な経済活動にとって重要な船舶
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【閣議決定の概要】
中東地域における平和と安定及び日本関係船舶の安全の確保のため、我が国独自の取組として、

  • 中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けた更なる外交努力
  • 関係業界との綿密な情報共有を始めとする航行安全対策の徹底
  • 情報収集態勢強化のための自衛隊の艦艇及び航空機の活用

について、政府一体となった総合的な施策を関係省庁が連携して実施。

自衛隊による情報収集活動についての主なポイントは以下のとおり。

  • 装備︓海賊対処部隊の艦艇及び航空機を活用。(海賊対処行動を行う部隊に情報収集活動の任務を併せて付与)
  • 活動の地理的範囲︓オマーン湾、アラビア海北部及びバブ・エル・マンデブ海峡東側のアデン湾の三海域の公海(沿岸国の排他的経済水域を含む)。
  • 不測の事態が発生するなど状況が変化する場合の対応︓関係省庁は連携して状況の把握に努め、対応を強化。自衛隊による更なる措置が必要と認められる場合には海上警備行動を発令。
  • 諸外国等との連携︓特定の枠組みに参加せず、独自の取組として行うが、諸外国等と意思疎通・連携。
  • ⾃衛隊の活動期間︓令和7年11月19日まで。ただし、必要性が認められなくなった場合は、その時点で終了。情勢の顕著な変化時は、国家安全保障会議において対応検討。
  • 国会報告︓本閣議決定(これを変更する場合を含む)及び活動が終了したときはその結果を国会に報告する。

派遣の疑問についてお答えします

Q1.なぜ自衛隊を中東地域に派遣する必要があるのでしょうか?

A.中東地域の平和と安定は、我が国を含む国際社会の平和と繁栄にとって、極めて重要です。また、世界の主要なエネルギー供給源であり、我が国の原油輸⼊量の約9割を依存する中東地域において、⽇本関係船舶の航⾏の安全を確保することは非常に重要です。

中東地域において緊張が⾼まる中、船舶を対象とした攻撃事案が⽣起し、令和元年6⽉には⽇本関係船舶である「コクカ・カレイジャス」号の被害も発⽣しています。このような状況に鑑み、各国は、同地域において艦船、航空機などを活⽤した航⾏の安全確保の取組を強化しています。

こうした点に鑑み、中東地域における平和と安定及び⽇本関係船舶の安全確保のため、我が国独⾃の取組として、更なる外交努⼒、航⾏安全対策の徹底とともに、情報収集態勢強化のための⾃衛隊の艦船及び航空機の活⽤について、政府⼀体となった総合的な施策を実施することが閣議決定されました。

この、情報収集態勢強化のための⾃衛隊の活⽤については、現在、⽇本関係船舶の防護を直ちに要する状況にはないものの、同地域において緊張が⾼まっている状況を踏まえると、我が国として、⽇本関係船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化することが必要です。

こうした状況において、上述のとおり、各国の軍が中東地域において艦船、航空機などを活⽤した航⾏の安全確保の取組を強化していること等も踏まえ、我が国から中東地域までの距離、この地域における活動実績及び情報収集に際して⾏う各国部隊・機関との連携の重要性を勘案した結果、⾃衛隊による情報収集活動が必要であるとの判断に⾄りました。

Q2.情報収集活動とはどのようなものでしょうか?

A.今般の情報収集活動は、政府の航⾏安全対策の⼀環として⽇本関係船舶の安全確保に必要な情報を収集するものであり、不測の事態の発⽣など状況が変化する場合の対応としてとり得る海上警備⾏動に関し、その要否に係る判断や発令時の円滑な実施に必要です。そのため、具体的には、海賊対処⾏動に従事する艦艇及び航空機を活⽤し、活動海域を航⾏する船舶の船種、船籍、位置、針路、速⼒等を確認することにより、不審船の存在や不測事態の兆候といった、船舶の航⾏の安全に直接影響を及ぼす情報その他の航⾏の安全確保に必要な情報を収集します。

Q3.情報収集活動の地理的範囲はどこですか︖ホルムズ海峡やペルシャ湾も対象となるのでしょうか?

A.⾃衛隊による情報収集活動の地理的範囲は、オマーン湾、アラビア海北部及びバブ・エル・マンデブ海峡東側のアデン湾の三海域の排他的経済⽔域を含む公海です。ホルムズ海峡やペルシャ湾では活動しません。

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Q4.なぜ、多数の船舶が航行するホルムズ海峡やペルシャ湾を対象としないのですか?

A.我が国は⽶国と同盟関係にあり、同時にイランと⻑年良好な関係を維持するなど、中東の安定に関係する各国と良好な関係を築いています。これを活かし、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向け、更なる外交努⼒を⾏うこととしています。航⾏安全対策の徹底や⾃衛隊による情報収集活動についても、外交努⼒と調和を図りながら取り組む必要があります。

また、いずれの国も、広⼤な海域を⾃国のアセットのみによりカバーすることは困難です。⾃衛隊による情報収集活動についても、船舶の通航量や関係国の取組の状況等を踏まえて、効率的に実施することが必要です。このような基本的な考え⽅の下、⾃衛隊の情報収集エリアについて、政府として検討を⾏った結果、

  • ホルムズ海峡からペルシャ湾に⾄る海域において、⽇本関係船舶の航⾏が集中する分離航路帯は主にイラン・オマーンを含む沿岸国の領海内であること
  • もとより領海における船舶の安全な航⾏の確保には領海に主権を有する沿岸国が⼤きな役割を有していること、また、領海内における情報収集活動は、沿岸国から無害通航に該当しないと主張され得ること
  • ホルムズ海峡及びペルシャ湾の情報については、⽶国や沿岸国を含む関係各国との連携を通じて⼀定の情報収集が可能であると⾒られること

を総合的に勘案し、ホルムズ海峡・ペルシャ湾においては、⾃衛隊の情報収集活動を⾏わないこととしたものです。

Q5.「海賊対処行動を行う部隊に情報収集活動の任務を併せて付与」とのことですが、海賊対処行動を行いながら日本関係船舶の安全は確保できるのでしょうか?

A.海賊対処行動を行う部隊の艦艇と航空機により、情報収集活動と海賊対処行動を実施しています。例えば艦艇については、アデン湾において海賊対処行動を実施しながら、一定の期間オマーン湾及びアラビア海北部に進出し情報収集活動を実施しています。アデン湾において海賊対処行動を実施している時に、オマーン湾やアラビア海北部での日本関係船舶の被害等に関する情報を事前に入手した場合は、オマーン湾やアラビア海北部の海域へ速やかに進出し、日本関係船舶の安全に必要な情報の収集を行うこととしています。

Q6.「独自の取組」とのことですが、米軍と協力しないのですか?

A.今般の我が国の取組は、中東における⽇本関係船舶の航⾏の安全を確保するためにどのような対応が効果的かについて、原油の安定供給の確保、⽶国との関係、イランとの関係といった点も踏まえつつ、様々な角度から検討を重ねた結果、⽶国等による「海洋安全保障イニシアティブ」の下に設置された「国際海洋安全保障構成体」(IMSC︓International Maritime Security Construct)には参加せず、我が国独⾃の取組を⾏うこととしました。

⼀⽅、中東における航⾏の安全を確保するため、⽶国とはこれまでも様々な形で緊密に連携してきています。今般の⾃衛隊の活動に際しても、同盟国である⽶国とは、我が国独⾃の取組を⾏うとの政府⽅針を踏まえつつ、情報共有も含め、適切に連携していきます。

(※)IMSCの参加国︓⽶国に加え、英国、バーレーン、サウジアラビア、UAE、アルバニア、リトアニア、エストニア、ルーマニア、セーシェル、ラトビア、ヨルダンの計12か国が参加(令和6年11⽉現在)

Q7.米国とは具体的にどのように情報共有を行うのですか?

A.⽶国との情報共有に際しては、基本的にバーレーンの⽶中央海軍(NAVCENT)司令部へ派遣している自衛隊の連絡官を通じて実施しています。

Q8.⽶軍と情報共有すると、実質的に⽶国等によるイニシアティブに参加していることになりませんか

A.我が国は、⾃らのニーズに基づき、⽇本関係船舶の安全確保に必要な情報を収集するために、適切なエリアにおいて、⾃らの主体的判断で情報収集を⾏うこととしています。この⾃衛隊の活動は、⽶国を含む他国の指揮や統制を受けることはなく、また、他国のニーズに応じて活動を⾏うわけでもないことから、⽶軍と情報共有を⾏ったとしても、実質的に米国の「海洋安全保障イニシアティブ」に参加するということにはなりません。

Q9.自衛隊の中東派遣方針に対する米国やイランの反応はどのようなものでしょうか?

A.⽶国に対しては、我が国が、⽶国等による「海洋安全保障イニシアティブ」に参加せず、独⾃の取組を⾏っていくとする⽅針について、様々な機会を通じて然るべく説明をし、理解を得ています。
イランに対しては、令和元年12⽉に⾏われた⽇イラン⾸脳会談で、安倍総理(当時)からローハニ⼤統領(当時)に対して、本取組についての説明を実施したところ、ローハニ⼤統領からは、イランは、ペルシャ湾地域の緊張緩和に向けた⽇本の外交努⼒を評価し、⾃らのイニシアティブ により航⾏の安全確保に貢献する⽇本の意図を理解しており、さらに⽇本が透明性をもってイランに本件を説明していることについて評価する旨の発⾔がありました。最近では、本年9月の外相会談などの機会を捉え、イランと緊密な意思疎通を図っています。

Q10.中東地域における緊張が高まる中、自衛隊の派遣により、逆に日本関係船舶が危険に晒されるリスクが高まるのではないでしょうか?

A.我が国は、中東地域の関係国との間で良好な⼆国間関係を維持しており、地域情勢等に係る認識を最新の状態に保ちつつ、現在の中東地域の緊張緩和と情勢の安定化及び我が国と地域の関係国との良好な⼆国間関係の維持・強化に向けた外交努⼒をあらゆるレベルで最⼤限払うこととしています。

また、今回の⾃衛隊の活動については、地域の関係国の理解を得ることが重要であるため、政府として、関係国と必要な意思疎通を⾏っています。具体的には、令和元年12⽉には、訪⽇されたイランのローハニ⼤統領(当時)に対し、安倍総理(当時)が直接説明し、その意図につき理解を得たほか、令和2年1⽉の中東訪問の際には、サウジアラビア、UAE、オマーン各国の⾸脳に対し、安倍総理が直接説明を⾏い、⽀持を得ています。

我が国としては、航⾏安全対策を徹底するほか、関係国と連携しつつ、地域の緊張緩和と情勢の安定化のため、粘り強く外交努⼒を継続していきます。

なお、活動開始以降、日本関係船舶に対する特異な事象は確認されていません。

Q11.中東に派遣されている自衛隊の規模はどのくらいですか?

A.今般の情報収集活動は、現在、海賊対処⾏動に従事している艦艇及び航空隊のP-3C哨戒機に対し、情報収集任務を併せて付与することにより実施しています。なお、艦艇を運用する派遣海賊対処行動水上部隊は、約200名の隊員により、P-3C哨戒機を活⽤する派遣海賊対処⾏動航空隊は、約60名の隊員によりそれぞれ構成されています。

Q12.自衛隊による情報収集活動は、いつから開始されているのですか?

A.令和2年1⽉11⽇に⽇本を出国したP-3C哨戒機については、1⽉20⽇より情報収集活動を開始しています。護衛艦については、2⽉26⽇から情報収集活動を開始しています。

Q13.中東への派遣はいつまで続くのですか?

A.⾃衛隊の艦艇及び航空機を活⽤した情報収集活動については、令和元年12⽉27⽇の閣議決定において、閣議決定の⽇から1年間とされていますが、⾃衛隊による活動を延⻑する必要があると認められる場合には、再度閣議決定を⾏うこととしております。

これを受け、令和6年11⽉5⽇の閣議決定において、⾃衛隊の活動の期間が令和7年11⽉19⽇まで延⻑されました。

Q14.派遣されている間、残された家族への支援は万全なのですか?

A.隊員が安⼼して任務に邁進できるようにするためには、ご家族の理解をいただくとともに、ご家族へのサポートを丁寧に⾏うことが極めて重要です。中東地域における平和と安定及び⽇本関係船舶の航⾏の安全を確保するという、今般の任務が持つ⼤きな意義を、ご家族に対してもしっかりと説明するとともに、ご家族が不安や⽣活上の不便を感ずることがないよう、各種のサポートを⾏っています。

Q15.中東に派遣される自衛官の処遇や手当はどうなっていますか?

A.今般、中東に派遣される隊員に対しては、これまでの海外派遣における実績も踏まえ、安⼼して任務に専念することができるよう、各種の処遇の確保に努めています。具体的には、⼿当については、乗組⼿当、航空⼿当や航海⼿当といった既存の⼿当に加えて、海上警備等⼿当を⽀給しています。また、派遣された隊員に万が⼀のことがあった場合には、災害補償や賞じゅつ⾦の制度により補償がなされるほか、海外任務に従事する隊員向けのPKO保険等についても、適⽤できます。

Q16.中東に派遣される自衛官が増えて、日本の防衛は大丈夫ですか?

A.我が国の周辺における警戒監視任務等の所要が⼤幅に増加している中、中東地域における情報収集活動の実施によって我が国周辺の警戒監視活動や弾道ミサイル対処等に影響を及ぼすようなことがあってはならないのは当然です。我が国周辺での警戒監視活動等の任務に影響が及ぶことのないように対策を講じています。

防衛大臣指示等