風力発電設備(風車)が自衛隊等の活動に及ぼす影響

1.総論

自衛隊は、我が国を防衛することが主な任務であり、有事に備えて平素から警戒監視や訓練といった多様な活動を行っています。また、日米安保条約に基づき我が国に駐留する米軍(在日米軍)も、我が国の防衛と地域の平和と安全のため、平素から日本国内で訓練をはじめとする各種活動を行っています。これらの平素からの活動なくして我が国の平和と安全を全うすることは不可能です。さらに、災害派遣等においても、自衛隊の円滑な運用が確保されることが国民の皆様の安全・安心を担保することにも繋がります。

平素から有事までの自衛隊や在日米軍の各種活動に際して、特に海空域や電波の円滑な利用は極めて重要です。この点、1基当たり陸上では百数十メートル、洋上では二百数十メートルに及ぶ風車群が設置される風力発電は、自衛隊や在日米軍の活動に大きな影響を及ぼす可能性があり、具体的には、レーダーのような電波を発する装備品の運用や通信への影響が考えられます。

2.レーダーへの影響

防衛省・自衛隊では、警戒管制レーダー(※)、航空管制レーダー、気象レーダーなどの用途に応じた様々なレーダーを使用していますが、物体に対し電波を発信し、反射した電波を受信することでその物体の位置を特定する原理は共通です。

ところが、レーダーと物体との間に風車が存在すると、当該風車がレーダーからの電波を反射することにより、目標(航空機等)の正確な探知が困難となり、警戒監視活動や対領空侵犯措置等に支障をきたすおそれがあります。具体的には、風車の羽根は、風向きや風の強さによって向きや速度を変えながら回転するため、多数の不要な反射波が発生し、目標の正確な探知が困難となります。

(※)警戒管制レーダーへの影響

自衛隊では、我が国の領空に飛来する外国の航空機やミサイルなどを発見し、これに対処する、すなわち防空任務を遂行するため、全国の28か所のレーダーサイトに固定式警戒管制レーダーを設置しています。また、固定式警戒管制レーダーの補完のため、機動的な展開が可能な移動式警戒管制レーダーを保有しています。

自衛隊は、我が国周辺空域を警戒管制レーダー等によって常時監視しており、領空侵犯のおそれのある航空機などを発見した場合には、戦闘機を緊急発進させて対応していますが、緊急発進回数は近年高い水準で推移しています。また、弾道ミサイルや極超音速滑空体、高速化・長射程化した巡航ミサイル、小型無人機など、空からの脅威の種類は複雑化・多様化しています。

これらの脅威が我が国に接近する前に可能な限り早く探知して自衛隊の部隊による対応を行うためには、警戒管制レーダーが十分な機能を発揮することが必要不可欠です。しかし、風車から受ける反射波の影響によりレーダーの探知能力が低下すると、飛来する航空機やミサイルなどの早期かつ正確な探知・捕捉が困難となり、ひいては自衛隊の部隊による対処が困難となるおそれがあります。

3.通信等への影響

自衛隊の駐屯地・基地間ではマイクロ波等を用いた無線通信を行うことがありますが、その電波の通り道(伝搬路)を遮る形で風車が設置されると、電波の伝搬に障害が発生し、通信ができなくなるおそれがあります。また、自衛隊は電波等を用いた情報収集活動等を行っており、風車が設置される場所によっては、こうした活動に支障が生じるおそれがあります。

4.その他の影響

風車が自衛隊等の活動に及ぼす影響としては、レーダーや通信に関するもののほか、以下のようなものが考えられます。

①試験への影響

防衛省では、自衛隊が使用する砲弾やミサイル、艦船などの性能に問題がないかなどを確認する試験をあらかじめ設定された水域等で行っており、これらの水域等に風車が設置されると、試験の安全な実施が困難となるおそれがあります。

②訓練への影響

自衛隊は、洋上等で射爆撃などの訓練を行っていますが、その区域や周辺に風車が設置されると、訓練の安全な実施が困難となるおそれがあります。

③航空機の運航への影響

自衛隊の航空機は、各地の飛行場を拠点として、練度を向上させるための訓練や警戒監視、対領空侵犯措置としての緊急発進など、平素から様々な活動を行っています。また、要請を受けて、救難ヘリコプターにより傷病者の救出・搬送などを行うこともあります。

航空機が、安全に飛行するためには、風車をはじめ地上の建物などから一定の距離を保つ必要があるため、飛行経路付近に大型の風車が設置される場合、こうした活動に影響を及ぼすおそれがあります。

5.在日米軍への影響

在日米軍施設・区域を使用して活動している在日米軍についても、これまで述べた自衛隊への影響と同じような影響が生じる可能性があります。

特に、青森県(三沢市・六ケ所村)に所在する三沢対地射爆撃場周辺においては、風車が設置されることによって航空機の飛行の安全性に影響を及ぼす可能性が高く、防衛省において運用の支障の有無について慎重な確認を要する区域があります(対象範囲については、下記リンク先を参照)。

2025年3月3日更新