日米豪防衛相会談共同声明(仮訳)

令和6年5月3日
防衛省
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2024年5月2日、ハワイにおいて、リチャード・マールズ豪州副首相兼国防大臣、木原稔日本国防衛大臣及びロイド・オースティン米国国防長官は、三か国防衛大臣会談を開催した。これは日米豪防衛大臣による13回目の会談であり、2023年の共同声明で定めた活動及び実践的な協力分野の実行における著しい成果を強調した。

三大臣は、共通の価値観とインド太平洋及びそれを越える地域における安全保障、安定及び繁栄を促進するための協力を深化する決意により結束している。

三大臣は、深い戦略的整合性及び共通の価値観を強調し、最近実行されている三か国それぞれの戦略文書の重要性を歓迎し認識した。三大臣は、自由で開かれたインド太平洋の実現のために三か国のパートナーシップが果たす重要な役割並びに全てのレベル及び領域における三か国連携の進展を示す過去一年間の重要な進捗を確認した。

三大臣は、中国による南シナ海及び東シナ海における力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに強い反対の意を改めて表明した。これには、海上や空中での危険な接近、係争のある地形の軍事化、定期的な海上活動への介入や他国の海洋資源開発を妨害する試みを含む海上保安機関の船舶及び海上民兵の危険な使用等の南シナ海における懸念や不安定化をもたらす行動が含まれる。三大臣は、国連海洋法条約(UNCLOS)を始めとする国際法と整合的でなく、国際的なルール、基準及び規範を損なう中国の主張及び行動に強く反対した。三大臣は、国家が、海洋領域において航行及び上空飛行の自由を含め、UNCLOSに整合的な形で権利と自由を行使できるよう支援するため協力することを決意した。

三大臣は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。三大臣は、両岸問題の平和的解決を促した。

三大臣は、主権が尊重され、国際法が遵守され、国家が威圧されることなく決断ができる、平和で安全で繁栄した東南アジアへの継続的なコミットメントを再確認した。三大臣は、ASEAN中心性・一体性及びASEAN主導の地域枠組みへのコミットメントを再確認した。三大臣は、フィリピンを含む東南アジアのパートナーとの協力強化の重要性を認識するとともに、ハワイにおいて第2回日米豪比防衛相会談も開催されることを歓迎した。

三大臣は、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」を実施する上でのニーズと取組を支えることによって太平洋島嶼国との協力を深化させることにコミットした。三大臣は、特に豪州がメンバーである太平洋諸島フォーラム及びその他の包摂的な太平洋のアーキテクチャを通じた、太平洋のパートナーとの地域的な関与の拡大を継続していくことを確認した。

三大臣は、2024年初旬に米沿岸警備隊が警備船「ハリエット・レーン」を大洋州でのブルー・パシフィック作戦(Operation Blue Pacific)に初めて派遣したことを歓迎した。当派遣により、米沿岸警備隊は、太平洋島嶼国と協力し、海洋状況把握に関するベストプラクティスを共有し、地域においてフォーラム漁業機関が主導する違法・無報告・無規制漁業対策のための取組を支える機会を得た。

三大臣は、北朝鮮による核・ミサイル開発を深く懸念する。三大臣は、国連安保理決議の深刻な違反である、大陸間弾道ミサイル及び弾道ミサイル技術を使用したその他の発射を含む、北朝鮮による度重なるミサイル発射を強く非難する。三大臣は、国連安保理決議に違反する北朝鮮による弾道ミサイルの輸出及びロシアによるこれらの調達や、ロシアによる北朝鮮製ミサイルのウクライナに対する使用を含め、拡大する北朝鮮とロシアの間の軍事協力を強く非難する。三大臣は、北朝鮮による地域への深刻な脅威に対応するため、国際社会と協力することに引き続きコミットしている。三大臣は、北朝鮮に対し、拉致問題を即時に解決し、人権侵害を止めるよう改めて求める。

三大臣は、日本の反撃能力の保有及び豪州の長距離打撃能力への投資の進捗について認識した。三大臣は、これらの能力の導入に際して、日豪両国が米国を交えて緊密に連携していくことを確認した。

三大臣は、豪州、英国及び米国によるAUKUSの実施に向けた過去一年間の著しい進捗を認識するとともに、地域の安全保障及び安定のためにAUKUSパートナーシップが果たす積極的な貢献を認識した。日本の強み及び日本とAUKUS三か国全てとの間の緊密な二国間防衛パートナーシップを認識し、三大臣はAUKUS諸国がAUKUS第二の柱における先進能力プロジェクトに関する日本との協力を検討していることを認識した。

三大臣は、日本において米軍と豪軍が共に所在し、豪州において米軍と自衛隊が共に所在することを円滑化することにより、三か国の協力の深化及び相互運用性の向上を可能とする2023年8月の日豪円滑化協定(日豪RAA)の発効を歓迎した。三大臣は、2023年に日本のF-35Aが豪州へ、豪州のF-35Aが日本へ飛来した初の相互展開を、日豪RAAの下での初の協力活動として示した。三大臣は、2025年及び2026年に三か国のF-35共同訓練として計画されている活動を歓迎した。三大臣はまた、豪州の訓練場を使用した三か国共同訓練に関する進展及び2023年に豪州において実施された初の日本の対空・対艦ミサイル実射の成功に留意した。三大臣は、今後一年間で豪州における戦力態勢に係る活動に、米国と共に日本が参加するため日豪RAAを活用することにコミットしている。

三大臣は、過去一年間の三か国による歴史的な初の成果及び活動を歓迎するとともに、協力の複雑性及び範囲を拡大する意図を再確認した。2022年以降、三か国は連携した武器等防護を複数回実施し、南シナ海での三か国による航行を実施するとともに、実運用を含む三か国での海空領域における情報収集・警戒監視・偵察(ISR)協力の複雑性を高めてきた。また、三大臣は、三か国のISR協力を拡大していくことにコミットした。

三大臣は、2月の日米指揮所演習キーン・エッジへの豪州の価値ある初参加及びより緊密な運用協力を進展させる進行中の取組を歓迎した。

三大臣は、インド太平洋地域で増大する経空脅威に対抗するため、ミサイル防衛に係る情報共有の拡大及び将来的な能力の取り入れを含む、日米豪間でのネットワーク化された防空面におけるアーキテクチャーに関するビジョンを再確認した。三大臣は、2027年のタリスマン・セイバーにおいて、初となる地域防空ミサイル防衛の実射訓練を米軍、豪軍及び自衛隊で実施する意図を公表した。

本日、三大臣は、研究、開発、試験及び評価(RDT&E)プロジェクトに関する日米豪取決めに署名した。科学技術協力は三か国での優位の維持及び防衛協力の深化に不可欠である。この画期的な取決めは、各国の防衛組織が運用に係る先進的な協力について関心分野を追求することを可能とする。三か国の国防当局は、この取決めを通じ、連携無人機及び自律システム並びに航空機複合材における協力の機会を更に議論していく。

地域の安定維持に三か国のパートナーシップが果たす重大な役割に鑑み、三大臣は、以下の分野にわたって三か国の防衛協力を拡大することにコミットした。

三か国の活動及び演習

  • 今後二年間で以下の演習等を含め、三か国全てにおける日米豪のF-35戦闘機共同訓練を実施する。
    • 米国におけるコープ・ノース2025
    • 日本における武士道ガーディアン2025
    • 豪州におけるピッチ・ブラック2026
  • サザン・ジャッカルーを含む、豪州北部におけるハイエンドな三か国の演習の頻度及び複雑性を継続して向上する。
  • ISR協力の機会を増やし、複雑性を高める。
  • 自衛隊による米軍及び豪軍の武器等防護並びに豪州、日本及び米国とその他のパートナー国による航行を定期化する。
  • 情報共有における三か国の協力を加速・深化させる。
  • 地域の課題に関する三か国の政策・戦略協議を継続する。

協力の拡大

  • 運用に係る先進的な技術分野において、研究、開発、試験及び評価(RDT&E)プロジェクトに関する日米豪取決めによる協力機会を追求する。
  • 2027年のタリスマン・セイバーにおける初の共同の防空ミサイル防衛実射訓練の実施を含む、複数の領域を横断する戦略能力にかかる協力を強化する。
  • 豪米の戦力態勢協力活動への日本の参加を増大させる。

包摂的パートナーシップ

  • 自由で開かれた国際秩序を維持・強化するため、(ADMMプラスの枠組みを通じることも含め)ASEAN諸国、太平洋島嶼国、インド、韓国並びに同志国及び同盟国との関与を深化させる。
  • 地域のパートナー国との能力構築支援を調整する。

三大臣は、地域の安定、透明性及び国際的なルールや規範の尊重を維持するため、三か国の防衛協力が必須であることを確認した。三大臣は、防衛協力の範囲を引き続き拡大しつつ、自由で開かれ安全で繁栄したインド太平洋を維持するという固い決意を改めて表明した。