日米豪防衛相会談共同声明(仮訳)

令和5年6月3日
防衛省
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2023年6月3日、シンガポールにおいて、第20回アジア安全保障会議(2023年シャングリラ会合)の機会に、リチャード・マールズ豪州副首相兼国防大臣、浜田靖一日本国防衛大臣及びロイド・オースティン米国国防長官は、三か国防衛大臣会談を開催した。これが日米豪防衛大臣による12回目の会談であり、2022年の共同声明で定めた活動及び実践的な協力分野の実行における著しい進捗を強調した。

三大臣は、三か国の戦略の整合性を確認し、過去一年間に発出されたそれぞれの国の戦略文書の重要性及び自由で開かれたインド太平洋の実現のために各国が果たす重要な役割を歓迎し認識した。三大臣は、三か国協力の複雑性及び全てのレベルにおける三か国連携の強化に留意し、三か国の防衛協力がこれまでになく強固であることを強調した。

三大臣は、一層厳しさを増す東シナ海の安全保障環境に対する深刻な懸念を表明した。三大臣は、あらゆる安定を損なうまたは威圧的で一方的な行動に強く反対する。

三大臣は、南シナ海の現状について懸念を表明した。三大臣は、係争地形の軍事化、海上保安機関の船舶及び海上民兵の危険な使用、並びに他国の海洋資源開発活動の妨害行為を含む、いかなる力又は威圧による一方的な現状変更の試みや地域の緊張を高め得る行動に強く反対した。三大臣は、国連海洋法条約を始めとする国際法と整合的でなく、国際的ルール、基準及び規範を損なう中国の主張及び行動に強く反対する。三大臣は、国連海洋法条約を始めとする国際法に従った紛争の平和的解決の重要性を強調し、2016年の南シナ海仲裁裁判所の判断は、最終的で紛争当事国を法的に拘束することを再確認した。三大臣は、国家が、国連海洋法条約に基づき、航行の自由及び上空飛行の自由を含め、権利と自由を行使できるよう支援するため協力することを決意した。

三大臣は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促した。

三大臣は、主権が尊重され、より広範な地域の安定を促進する安全で繁栄した東南アジア地域の重要性を強調した。三大臣は、ASEANの中心性及び拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)を含む、ASEANが主導する地域の枠組みへの継続した支持を改めて表明した。また、三大臣は、インド太平洋に関するASEAN・アウトルックの実践的な実施への強い支持を強調した。三大臣は、海洋、サイバー、国境及び健康安全保障に関する協力の推進を含め、地域の安全保障及び安定を支援するため、地域の国々と二国間及びASEANのメカニズムを通じて緊密に連携することにコミットした。三大臣は、フィリピンとの協力強化の重要性を認識するとともに、シャングリラ会合における日米豪比防衛相会談を歓迎した。

三大臣は、太平洋のパートナーと海洋安全保障の支援、自然災害による更なる圧力への対処及び気候変動への対応の協力を含む太平洋島嶼国との協力深化にコミットした。三か国は、特に太平洋諸島フォーラムを含む包摂的な太平洋枠組みを通じた地域への取組の拡大、太平洋のパートナーとの協力強化を継続する。

三大臣は、北朝鮮による核・ミサイル開発を深く懸念する。三大臣は、かつてなく高い頻度での大陸間弾道ミサイルを含め、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射及び北朝鮮が宇宙への打ち上げとして行った、弾道ミサイル技術を使用した最近の発射を国連安保理決議のあからさまな違反であるとして、強く非難する。三大臣は、北朝鮮による地域への深刻な脅威に対応するため、国際社会と協力することに引き続きコミットしている。三大臣は、北朝鮮に対し拉致問題を即時に解決し、人権侵害を止めるようにとの要請を改めて表明する。

地域の安定強化に三カ国のパートナーシップが果たす重要な役割を認識し、三大臣は領域横断的な相互運用性向上及び協力深化に向けた具体的、実践的な手段の継続にコミットした。三大臣は、相互に協議し、地域の災害や危機に関して連携した対応を構築する重要性を強化した。

三大臣は、日本の反撃能力の保有及び豪州の長距離打撃能力への投資の重要性について認識した。三大臣は、これらの能力の導入に際して、日豪両国が米国を交えて密接に連携していくことを確認した。

三大臣は、日豪RAAの発効に向けた取組みの進展を歓迎し、日豪RAAが三か国の協力深化及び相互運用性の拡大において果たす重要な役割を認識した。三大臣は、発効後、この目的のため早期にRAAを活用することに合意し、次の一年間で豪州にて実施する三か国の協力に係るロードマップを作成することにコミットした。

三大臣は、通常兵器を備えた原子力潜水艦を取得するための豪州の道筋に関する最近の発表を歓迎した。日本はAUKUSへの一貫した支持を改めて表明した。

三大臣は、2022年11月の三か国の活動中における初の三か国が連携した形での武器等防護の実施及び2023年3月の岩国航空基地における情報収集・警戒監視・偵察(ISR)の協力を含めた、進展を歓迎し、成果を強調した。

三大臣は、地域の安全保障環境について意見を交換し、世界のあらゆる地域における力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対し、国際社会の平和と安定や法の支配に基づく国際を損ねる行動を抑止し、対応するため緊密に協力することで一致した。三大臣は、継続するロシアによるいわれのない、不当で不法なウクライナ侵略を強く非難した。また、三大臣は、ロシアが、2月23日の国連総会で採択された決議A/ES-11/L.7に従い、国連憲章に沿って即時、完全かつ無条件に全ての軍を国際的に認められた国境内におけるウクライナの領域から撤退させ、敵対行為を停止すべきだとの見解を共有した。

三大臣は、以下の分野を通じて三か国の防衛協力を継続して拡大することにコミットした。

三か国の活動及び演習

  • オーストラリアにおける三か国のF-35戦闘機共同訓練を実施する。
  • 即応性向上のため、サザン・ジャッカルーを含む、オーストラリア北部における複雑でハイエンドな演習を増加させる。
  • 自衛隊による米軍及び豪軍の武器等防護の実施機会を定期化する。
  • 情報共有における三か国の協力を加速化・深化させる。
  • 地域の課題に関する三か国の政策・戦略協議を継続する。

協力の拡大

  • 三か国の研究、開発、試験及び評価(RDT&E)の枠組みを可能な限り早期の機会の策定を追求する。
  • 統合防空ミサイル防衛、ISR及び水中能力を含む、複数の領域を横断する戦略能力にかかる協力を強化する。

包摂的パートナーシップ

  • 世界のあらゆる地域において法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、強化するため、(ADMMプラスの枠組みを通じることも含め)ASEAN諸国、太平洋島嶼国、欧州諸国並びに同志国及び同盟国との関与を一層強化していく。
  • 地域のパートナー国との能力構築支援を調整する。
  • 不発弾問題に取り組むため、太平洋のパートナー国と相互に補完して協力する。

三大臣は、民主的価値、透明性及び国際規範の尊重を維持するため、三か国の協力が必須であることを確認し、防衛協力の範囲を引き続き拡大しつつ、インド太平洋地域を自由で開かれ安全で繁栄した地域であり続けさせることに向けて固い決意を表明した。