新たな防衛計画の大綱

政府の最も重大な責務は、わが国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の生命・身体・財産、そして、領土・領海・領空を守り抜くことです。

わが国の平和と安全の維持、国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空を守り抜く

これは、独立国家として第一義的に果たすべき責任であり、わが国が自らの主体的・自主的な努力によってかかる責任を果たしていくことが、安全保障の根幹です。わが国の防衛力は、これを最終的に担保するものであり、平和国家であるわが国の揺るぎない意思と能力を明確に示すものです。そして、わが国の平和と安全が維持されることは、わが国の繁栄の不可欠の前提です。

わが国を取り巻く安全保障環境

現在、わが国を取り巻く安全保障環境は、極めて速いスピードで変化しています。国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大しています。
宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の利用の急速な拡大は、陸・海・空という従来の物理的な領域における対応を重視してきたこれまでの国家の安全保障の在り方を根本から変えようとしています。

宇宙・サイバー・電磁波などに関する各国の動向

わが国の周辺には、質・量に優れた軍事力を有する国家が集中し、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっています。

シリアにおいてNATO軍の指揮統制、レーダーを妨害したとされる電子戦装備品「クラスハ-4」(ロシア)
シリアにおいてNATO軍の指揮統制、レーダーを妨害したとされる電子戦装備品「クラスハ-4」(ロシア)

中国の軍事活動の拡大・活発化

国防費は高い水準で増加

国防費は高い水準で増加

活動を拡大・活発化させる中国海上・航空戦力

Su-30戦闘機
Su-30戦闘機
H-6爆撃機
H-6爆撃機
空母「遼寧」
空母「遼寧」
シャン級潜水艦
シャン級潜水艦

北朝鮮の弾道ミサイルの強化

ミサイルの到達可能距離の概略イメージ
(注1) 上記の図は、便宜上平壌を中心に、各ミサイルの到達可能距離を概略のイメージとして示したもの
(注2)「 」は北朝鮮の呼称

激変する安全保障環境の中、わが国自身が、国民の生命・身体・財産、領土・領海・領空、そして、主権・独立は主体的・自主的な努力によって守る体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図っていく必要があります。
日米同盟や各国との安全保障協力の強化は、わが国の安全保障にとって不可欠であり、わが国自身の努力なくしてこれを達成することはできません。国際社会もまた、わが国が国力にふさわしい役割を果たすことを期待しています。

今後の防衛力の強化

今後、わが国は、安全保障の現実に正面から向きあい、従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力で新たな防衛力を構築するため、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保していく必要があります。
特に、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域については、わが国としての優位性を獲得することが死活的に重要となっており、陸・海・空という従来の区分に依拠した発想から完全に脱却し、全ての領域を横断的に連携させた新たな防衛力(多次元統合防衛力)の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていく必要があります。

宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力の強化

領域横断作戦を実現するため、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を獲得・強化します。

  • 宇宙領域

    Xバンド防衛通信衛星(イメージ)
    Xバンド防衛通信衛星(イメージ)
  • サイバー領域

    サイバーコンテストの開催
    サイバーコンテストの開催
  • 電磁波領域

    戦闘機(F-15)の電子戦能力の向上(イメージ)
    戦闘機(F-15)の電子戦能力の向上(イメージ)

従来の領域における能力の強化

領域横断作戦の中で、新たな領域における能力と一体となって、航空機、艦艇、ミサイルなどによる攻撃に効果的に対処するための能力を強化します。

  • 護衛艦「いずも」
    護衛艦「いずも」
  • JASSM(イメージ)
    JASSM(イメージ)
  • 輸送機(C-2)
    輸送機(C-2)

持続性・強靭性の強化

平時から有事までのあらゆる段階において、必要とされる各種活動を継続的に実施できるよう、後方分野も含めた防衛力の持続性・強靭性の強化に必要な措置を推進します。

装備品の維持整備
装備品の維持整備
滑走路被害復旧機材
滑走路被害復旧機材

一方、急速な少子高齢化や厳しい財政状況を踏まえれば、過去にとらわれない徹底した合理化なくして、かかる防衛力の強化を実現することはできません。

人的基盤の強化

防衛力の中核である自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上に努めます。

女性初の戦闘機操縦者
女性初の戦闘機操縦者

装備体系の見直し

現有の装備体系を統合運用の観点も踏まえて検証し、合理的な装備体系を構築します。

12式地対艦誘導弾
12式地対艦誘導弾

防衛力の強化に当たっては、特に優先すべき事項について可能な限り早期に強化することとし、既存の予算・人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分することとしています。

日米同盟、安全保障協力

日米同盟は、わが国自身の防衛体制とあいまって、引き続きわが国の安全保障の基軸であり続けます。わが国が独立国家としての第一義的な責任をしっかりと果たしていくことこそが、日米同盟の下でのわが国の役割を十全に果たし、その抑止力と対処力を一層強化していく道です。また、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、安全保障協力を戦略的に進めていくための基盤でもあります。

日米首脳による護衛艦「かが」訪問(19(令和元)年5月)
日米首脳による護衛艦「かが」訪問(19(令和元)年5月)
第18回IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)(19(令和元)年6月)
第18回IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)(19(令和元)年6月)