臨床心理士として働いていて「もっと新しい経験がしたい」と思った時に、偶然自衛隊の募集を知り「面白そう」だからと入隊した柴田さん。最初は自衛隊特有の言葉遣いに困ったけれど、周囲の助けを借りて成長できたそう。普段の仕事や災害派遣を通して、傾聴には誰かをケアする力があると実感したそうです。
素朴な好奇心から入隊。
周囲の支えで少しずつ馴染めるように。
── 自衛官になったきっかけは何ですか?
たまたま、海上自衛隊で臨床心理士を募集しているということを知り、応募しました。
それまでは10年ほど地方の精神科の病院で働いていて、充実した日々を送っていたんですが、もっと新しい経験がしたいと思うようになったのと、募集のタイミングが合った感じです。
── 自衛隊のイメージはどんな感じでしたか?
応募の時点では、自衛隊の仕事は日本全国や海外に行ける仕事なのかなという漠然としたイメージでした。
自分自身、もともと海外で仕事がしたいという思いがあったので、素直に「面白そうだな」と感じたんです。
私が自衛官を目指すことになって、学校にも見学に来てくれましたし、家族全員が自衛隊に興味を持ってくれています。
── 入隊して1年目はどんな感じでしたか?
1年目はもう、わからないことだらけでした。自衛隊で使う言葉も独特で分からないことばかりでしたし。
電話に出ても、用語が理解できていないので相手の方が何を言われているのかが分からなくて、臨床心理士の仕事をする以前に、「言葉を覚えなければ!」というのが大変でした。
周りの方が手取り足取り、色々と教えてくださって、なんとかちょっとずつ克服しているところです。
災害派遣は、臨床心理士にとって
貴重な経験だった。
── 普段はどんな仕事をしていますか?
自衛隊の施策を勉強させてもらいながら、隊員の方へのメンタルヘルスの講習、その資料作り、カウンセリングなどを行っています。
入隊前は地域の方々へのケア、病院に来た患者さんへのケアを行っていたのですが。
自衛官となった今は、日本全国の隊員や世界へ出ている隊員へのケアをしているという意味で、かなり変わったなと感じています。
── 災害派遣のご経験について教えてください。
平成23年の東日本大震災の際に、厚労省の依頼で宮城県に派遣されました。
そこで実際に被災地を見たり、被災された方の相談を受けたりする機会があったんですが。
それはやっぱり、自衛隊に入っていないとなかなかできない経験だったのかなと思います。
ニュースで見るだけではなくて、実際に自分の目で見て、臨床心理士として生の声が聞けたのは大きな経験になっていると感じます。
じゃあそこで、自分がどのくらい役に立ったか?というと、それは(相手の方の実感によるので)分からないんですけども。
入隊して、変わったのは、
見ている世界が広がったこと。
── お仕事のやりがいは?
カウンセリングに来られていた方が、職場に復帰してちょっと笑顔が見られるようになってきたりするのを見ると、「ああ、良かったな」と思います。
表情が明るくなったと感じられたり、「今はこんな風に仕事に来ています」という話を聞いたりすると、とても嬉しく思います。
また災害派遣の際には、被災された方に「話しを聞いてくれてありがとう」と言われたりしたことで、「ああ、少しは役に立てたのかな」と感じました。
── 入隊してみて、ご自身の変化はありますか?
この仕事に就いてから、社会情勢に大変興味を持つようになりました。
今まではそういうことはなかったんですけれども、社会情勢が自分の仕事に直結してるんだということから考えるようになりました。
── オンとオフはどんな風に切り替えておられますか?
オフの時間は、リラックスと体力をつける目的で、自衛隊内のサークル(エアロビクスや社交ダンス)に参加して楽しんでいます。ほかにも色んなサークルがあり、それぞれ活発に活動しているようですよ。
仕事については、結婚・育児をしながら働いている人が多いので、皆さん上手にオンとオフを切り替えておられるんだろうなと思います。自分も家庭と仕事を両立できる働き方を意識しています。
── 自衛官を目指す方たちへのメッセージをお願いします。
私は、自衛官になってから日本全国、また世界(アフリカのジブチ拠点)へも行かせていただき、自衛官は国際平和維持活動の一員なのだということを改めて実感することができました。
入隊する前の仕事だったら、ちょっと考えられないくらいにたくさんのことを経験させてもらっているので、本当に入隊して良かったなと思います。
とてもやりがいのある職場なので、みなさんもぜひ一緒に働きましょう。