母親と歯科医官の先輩の影響で、歯科医官の存在を知った石橋さん。自衛官についてあまり知らない中でのスタートでしたが、幹部候補生学校時代や日々の訓練を通じ、人々の平和と健康を守る歯科医官へと着実に成長を遂げました。現在は歯科医官ならではの幅広い業務にやりがいを感じているそうです。
自衛隊での絆が導く、
歯科医官としての生き方。
── 自衛官になったきっかけは何ですか?
もともと母が横須賀の米軍基地で仕事をしていたこともあり、自衛官が身近な存在でした。
そんな中、大学生の頃に歯科医官の先輩とお会いする機会があり、すごく親切にしていただき、歯科医官というキャリアの道があることを知ったことがきっかけです。
周りの方の平和な生活を守ることができる自衛隊は、これまで支えてくださった方々への恩返しになるのではないかと思い、歯科医官を目指すことにしました。
── 歯科医官の目指し方を教えてください。
歯科医官を目指す方法は大きく二つあります。
一つは私のように大学を卒業後、歯科幹部候補生という試験を受け、研修医の段階から自衛隊の病院で働く道です。
試験後、幹部候補生学校に行き、学校を卒業した時点で歯科医官となります。
もう一つは幹部候補生学校を卒業後、認定医などの資格を取ってから歯科幹部の試験を受け、歯科医師として働く道です。
── 幹部候補生学校で印象に残っていることはありますか?
私にとって入ってすぐの幹部候補生学校の経験はとても大きかったです。
全く自衛隊を知らない状態で訓練や教育を受けることになったのですが、防衛医大出身の医官の方たちが自分たちも大変な状態なのに助けてくれました。
この経験から助け合うことの大切さを学ぶことができ、精神的にも体力的にも成長したきっかけになったと思っています。
歯科診療から災害派遣まで、
歯科医官の幅広い活躍の場。
── 普段のお仕事について教えてください。
入隊後は幹部候補生学校で歯科というよりも、幹部としての基礎を学ぶところからのスタートでした。
その後は研修医として自衛隊中央病院と防衛医科大学校病院で、一般歯科と口腔外科、麻酔科を2年間学びました。
現在は異動し、朝霞駐屯地の東部方面衛生隊で働いています。
── 具体的にはどのような業務内容ですか?
衛生隊は医官というお医者さんもいれば看護師や臨床検査技師、放射線技師、准看護師など、多種多様な衛生科職種の方が集まっている組織です。
災害などで建物が壊れてしまったり、歯科の診療所が無くなってしまったりした場所で問題なく治療できるよう、普段から屋外にテントを建てて治療する訓練や、簡易的な歯科のユニットを建てて歯科治療の練習をするといった訓練を行っています。
また、診療以外にも健康管理業務という保健所のような仕事や、災害派遣・海外派遣なども行う可能性があります。
災害派遣の際は歯科だけではなく衛生科の幹部として陸曹の方々を指揮するため、衛生隊長の仕事なども人によってはあり得ますね。
実際に現在所属している衛生隊の衛生隊長は歯科医官の方なので。
── 一般の歯科医との違いはありますか?
一般の歯科医では歯科診療が主になるかと思いますが、我々の場合は自衛官でもありますので、保健所のような業務をすることで多面的に物事を捉えることができるのは、歯科医官ならではの特徴だと思います。
また、2~3年に1回、定期異動がありますので、全国各地で勤務することになるというのも自衛隊特有のものだと思います。
一般の歯科でも歯科診療をして、患者さんに喜んでいただくというやりがいがある仕事だと思いますが、自衛隊にいることで他職種の方との触れ合いも多く、歯科診療以外の業務もできるのは大きな魅力です。
── スキルアップの支援制度などはありますか?
訓練以外にも駐屯地内の医務室や自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院で診療させていただきながら、技術を磨いています。
あとは週に1回、部外の病院で勉強できる制度もありますし、専門的に学びたいという方は自衛隊に所属しながら大学院に行ける制度もありますので、スキルアップの面でも恵まれた職場だなと感じています。
読書から旅行まで、
自衛官の充実したオフ生活。
── 住まいはどうしていますか?
研修医時代は呼び出しの際にすぐに対応するためにも病院の近くである営内に住んでいましたが、幹部になってからは営外に住むようになりました。
── プライベートの時間は確保できていますか?
できていますよ。
平日は読書や映画鑑賞をするなど、家でのんびり過ごすことが多いですね。
休日はたまに仕事になることがありますが、ほとんどは土日にお休みを取れるようになっているので、しっかりとプライベートを充実できています。
── 長期のお休みも取れますか?
自衛官はまとまったお休みが取りやすいので、遠方に出かけることも可能だと思います。
私は長期休暇を利用してよく実家に帰っていますよ。
── 自衛官を目指す方たちへのメッセージをお願いします。
自衛隊は男性が多いと思われがちですが、実際はそんなことはなく、様々な職種やタイプの方が活躍しています。
衛生科職種は特に女性が多く、相談事はしやすい環境だと思いますし、育休産休の制度も整っていますので、家庭と仕事の両立を考える方にも良い職場ですよ。
歯科医官という立場から見ても、指導に熱心な先輩が多く、しっかり丁寧に教えてもらえるので、大学を卒業したばかりの方でも就職先として考えていただけたら嬉しいなと思います。
ぜひ自衛隊を将来の一つの選択肢として考えてみてください。