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自 衛 隊 百 科
(5月放送内容)



テ−マ:東日本大震災と方丈記

パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越し頂いております。
 局長今月もよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。
 まずは、この度の大震災で亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害を受けられた方々の一日も早い復興をお祈り申し上げます。


パ−ソナリティ−:

 では早速、本日はどのようなお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 東日本大震災の後にですね、私も久しぶりに鴨長明が書きました「方丈記」を読み返してみましたので、その話をさせていただきたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
 鴨長明は「方丈記」の中で「四十あまりの春秋をおくれる間に、世のふしぎを見ることやゝたびたびになりぬ。」と言ってまして、要するに40年間を過ごしている間に世の不思議を度々見たということで、自ら体験した大災害を四つ挙げています。その四つは何かというと安元の大火、治承の大竜巻、養和の飢饉、元暦の大地震ですね。元暦の大地震についてですね、次のように書いているんですが、「山くずれて川を埋み、海かたぶきて陸をひたせり、土さけて水わきあがり、いはほわれて谷にまろび入り」というふうに書いています。要するに山が崩れて川を埋めたりとかですね、海が傾いて陸を浸水したりとか、地面が裂けて水が涌きあがって、あと岩が谷を転がり落ちたというふうに書いているんですが、それで余震の収束に三か月ほどかかったというふうに言っています。そういうことなんですが、この度の東日本大震災は、この鎌倉時代の大地震にも勝る、まさに「未曾有」の大震災であったということが言えると思います。


パ−ソナリティ−:

 そうですね、3月11日に起こったということで、東北地方太平洋沖地震から2ヶ月経ちまして、3ヶ月になろうとしていますけれども、実際に当時現場には局長も行かれたんですか。


増田局長:

 そうですね、私は東北防衛局長ですので、地震発生後直ちに局内に対策本部を立ち上げましてですね、職員と一丸となって事態に対処してきたわけです。職務上津波被害の現場には度々足を運びましたが、その度に破壊力の凄まじさというものには驚愕させられたなあというふうに思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、実際に現場に行ってみないと分からないこともいろいろとあるとは思うんですけれども。


増田局長:

 そうですね、あとですね、宮城県知事の要請がありまして、遺体安置所の業務支援も私ども行いました。遺体安置所には夥しい数のご遺体が臥せておられましたけれども、物流が途絶えている間は、お納めする棺もなくてですね、ドライアイスもないというような状況でした。行方不明になったご遺族を求めてですね、多くの方が探しておられたわけですけれども、それで一部の遺体安置所ではご遺体のお写真ですね、お顔のお写真を貼りだして、それでその中からご家族が探していただくというような状態もございました。そうこうしているうちにご遺体の傷みも進行したわけですが、火葬場の能力が少ないものですから、しかたなくですね土葬をさせていただくほかなかったというような状況で、広い土地にですね、パワーショベルで穴が掘られて、そこに土葬をさせていただいたというような状況でございました。


パ−ソナリティ−:

 はい、胸が痛くなる話ですね。


増田局長:

 思えばですね、長明が「四十あまりの春秋をおくれる間に、世のふしぎを見ることやゝたびたびになりぬ。」と言っていますが、私は年がもう五十過ぎていますけれども、この五十余年を生きている間にですね、私も長明の言う「世のふしぎを見ること」が幾度あったかなあというふうに思っています


パ−ソナリティ−:

 はい、具体的にはどのようなことが。


増田局長:

 1つは9.11の同時多発テロがありましたけれども、ニューヨークの世界貿易センタービルが攻撃されましたけれども、その他にワシントンのペンタゴンも攻撃されましたけれども、当時私はペンタゴンとは間にポトマック川を隔てて対岸にやはり国防省の施設があるんですが、そこにおりましてですね、そういう意味では9.11同時多発テロを体験したということがありました。あとは自衛隊がイラクに行ったときですね、私もイラクのサマーワに約半年滞在して、あちらでポリティカル・アドバイザーという仕事をしたんですが、その時も半年ではありましたけれども、多くの多国籍軍兵士が亡くなりましたし、更に多くのイラク人も亡くなったということですね、そういうような体験をしましたけれども、それに加えて、今回、この東北で「未曾有」の東日本大震災を経験したわけであります。まあ今後長生きしたいとは思いますけれども、やはり多数の犠牲を伴う「世のふしぎを見ること」はもうご免被りたいなあと思っております。いずれにせよ亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、ありがとうございました。


増田局長:

 どうもありがとうございました。


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