自 衛 隊 百 科
11月放送内容)


テ-マ:平成における防衛省・自衛隊について②


パーソナリティー:
 本日も東北防衛局総務部長の坂部誠部長からお話を伺います。坂部部長、よろしくお願いいたします。

部長:
 よろしくお願いいたします。 はじめに、台風19号等の災害により亡くなられた方のご冥福をお祈りしますとともに、被災された方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。
 さて本日は、先月の「平成における防衛省・自衛隊」の続きとして、平成10年以降の主な出来事についてお話をしたいと思います。 平成10年代は、わが国を取り巻く安全保障環境に大きな変化が生じました。
 特に、平成13年(2001年)9月に発生した9.11アメリカ同時多発テロをはじめとする国際テロ組織の活動が深刻なものとなり、これに加えて大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散が進展するなど、新たな脅威や多様な事態への対応が課題となりました。

パーソナリティー:
 国際テロや弾道ミサイルなど、新たな脅威や事態への対応が課題となったのですね。

部長:
 平成10年(1998年)に北朝鮮は、テポドン1と推定される弾道ミサイルを発射し、ミサイルの一部は日本の上空を通過し、三陸沖の太平洋上に落下しました。 この事実から、北朝鮮が日本全域をカバーしうるミサイル製造技術を保有するに至ったことが明らかとなりました。
  翌年、平成11年(1999年)には、能登半島沖不審船事案が生起し、わが国の領海内で発見された2隻の不審船に対処するため、初めての海上警備行動が発令されました。 海上自衛隊の護衛艦による停船命令や警告射撃などが行われましたが、その後、不審船は北朝鮮の工作船であると判断されました。
 平成13年から19年にかけては、先ほどのアメリカ同時多発テロに対応し、国際的なテロリズムの防止・根絶のため、国際社会の一員として対処すべく、インド洋に補給艦、護衛艦などが派遣され、対テロ支援活動として、米軍艦艇などへの補給活動を実施しました。

パーソナリティー:
 様々な出来事があったのですね。

部長:
 そうですね。このほか、イラクでの人道復興支援活動などにも従事し、国際平和協力活動は、わが国の防衛や公共の秩序といった任務と並ぶ自衛隊の本来任務と位置づけられるようになりました。
 平成15年は、弾道ミサイルの脅威に対して、弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備に着手しました。 平成18年には、北朝鮮は日本海に7発の弾道ミサイルを発射するとともに、初の核実験の実施を発表しました。

パーソナリティー:
 北朝鮮の動きが活発な年代だったのですね。

部長:
 そうですね。このような新たな脅威に対応するため、平成19年にペトリオットPAC-3部隊の配備を開始し、イージス艦のスタンダード・ミサイル(SM-3)発射試験成功により、わが国独自の弾道ミサイル防衛体制の確立が進められました。 また、平成19年は「防衛庁」から「防衛省」への移行があった年であります。

パーソナリティー:
 現在は「防衛省」という呼び方が一般的になりましたが、以前は「防衛庁」でしたよね。「防衛庁」はどのような位置づけだったのでしょうか。

部長:
 はい。以前は「国の防衛」は内閣府の業務のひとつになっていて、当時の防衛庁長官は防衛庁という組織のトップでありましたが、国の防衛の主任大臣ではありませんでした。 このため、内閣府の主任大臣である内閣総理大臣を通じなければ重要な仕事をできない仕組みになっていました。 諸外国の防衛を担う行政組織はすべて「省(Ministry)」と位置付けられておりましたので、国の防衛を担う行政機関としての位置付けや、それまでの防衛庁・自衛隊の活動からの教訓を踏まえまして、「防衛省」へ移行する必要が生じたところです。

パーソナリティー:
 その後、平成20年代には、どのような出来事があったのかご紹介いただけますか。

部長:
 はい。平成20年代に入りますと、中国、インドの発展に伴うパワーバランスの変化など、わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増し、様々な安全保障環境上の課題や不安定要因がより顕在化・先鋭化してきました。 中国の軍事活動が活発化する一方で、北朝鮮の核兵器・弾道ミサイル開発が進展し、自衛隊は、周辺海空域での警戒監視活動を常時継続的に実施するとともに、弾道ミサイル防衛部隊を展開し、不測の事態に備えるようになりました。

パーソナリティー:
 日本の安全保障環境が一層厳しくなってきた時代ということですね。

部長:
 そのとおりなんです。このほか、一国のみでは対応困難なグローバルな課題に対応するため、国際的な活動にも取り組みました。
 平成21年(2009年)から現在も継続しておりますが、ソマリア沖・アデン湾では、海賊行為が多発・急増し、わが国に関係する船舶を海賊から防護するため、海上警備行動が発令され、海自の護衛艦や航空機などが派遣され、その後、海賊対処法が成立し、わが国の船舶のみならず諸外国の船舶も護衛対象となりました。
 また、平成24年(2012年)には、他国の軍隊などが国際平和及び地域の安定のための役割を適切に果たすことを促進し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出するための能力構築支援の取組を開始しました。

パーソナリティー:
 自衛隊による国際的な活動が始まったのは、この頃だったのですね。

部長:
 はい。一方で、国内では東日本大震災をはじめとする大規模災害が続発し、自衛隊は被災者救助や生活支援の活動にあたりました。  
 ご承知のとおり、東日本大震災は、東北地方の沿岸部を中心に壊滅的な被害を及ぼしましたが、防衛省・自衛隊は、最大時には10万人を超える態勢で、人命救助、生活支援、原子力災害への対応などにあたりました。この際、米軍も、最大で人員約1万6千人を投入するなど、大規模な支援活動「トモダチ作戦」を実行しました。   

パーソナリティー:
 やはり、東日本大震災は、今でも忘れることのできない出来事ですね。

部長:
 そうですね。これまで、先月の放送から平成における防衛省・自衛隊をテーマにお話してきました。昨年12月には、新たな時代に対応するため、防衛の在るべき姿についての新たな指針として、平成31年度以降に係る防衛計画の大綱、いわゆる30大綱が策定されました。  
 防衛計画の大綱については、今年3月の「日本の防衛Q&A」でもお話したとおり、国家安全保障戦略を踏まえ、我が国の防衛の基本方針や防衛力の役割、自衛隊の具体的な体制の目標水準等を示すものです。 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさと不確実性を増す中、新たな防衛計画の大綱では、専守防衛等の基本方針の下、国民、領域や主権といった国益を守るため、我が国自身の防衛体制、日米同盟及び安全保障協力をそれぞれ強化していくこととしています。

パーソナリティー:
 本日は、平成における防衛省・自衛隊をテーマに、東北防衛局総務部長の坂部誠部長からお話を伺いました。坂部部長ありがとうございました。

部長:
 こちらこそ、どうもありがとうございました。



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