防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(1月放送内容)



 

テーマ:特殊な防衛施設の紹介について

 
 



パーソナリティー:
 本日も東北防衛局の伊藤茂樹局長からお話を伺います。伊藤局長、よろしくお願いします。

局長:
 はい。よろしくお願いします。  以前、このラジオで前任の深澤局長のときに「防衛施設の建設工事」について、皆さまにお話をさせていただきました。東北管内には国内でも有数の規模を誇る“王城寺原演習場”ですとか沖縄県の嘉手納飛行場に次ぐ広さの“三沢飛行場”、また、北海道・北東北を管轄する”海上自衛隊大湊地方隊”などの重要な防衛施設がたくさんあります。 そこで本日は、東北管内に所在する防衛施設の中からですね、皆さんにあまり知られていないような“特殊な施設”をいくつかご紹介させていただきます。

パーソナリティー:
 「防衛施設」とは、確か、陸・海・空の各自衛隊と在日米軍の施設だったと記憶しておりますが。

局長:
はい。自衛隊や在日米軍がその能力を発揮するためには、航空機や艦船などの装備が重要となるのはご理解いただけると思いますが、それらを受け入れるための「飛行場施設」や「港湾施設」、あるいは装備品の開発を行うための「試験施設」なども重要な基盤となっています。  また、庁舎や格納庫、レーダー通信施設といった運用に関する施設に加えて、隊員が寝泊まりする隊舎、食堂、お風呂場や隊員とその家族が住むための宿舎など生活関連の施設も自衛隊が活動するには欠かせない施設です。この様な施設をまとめて防衛施設と言っております。

パーソナリティー:
 はい、その中から特殊な施設ということなのですが、今日はどういった防衛施設をご紹介していただけるのか楽しみです。

局長:
 はじめに、陸上自衛隊の王城寺原演習場の中にある市街地訓練場という施設を紹介したいと思います。  近年、世界中のあらゆる地域において“テロ”のように武力を用いた破壊活動が頻繁に発生しています。これらは場所が予測できず、市街地においても多くの市民が巻き込まれたというニュースも度々耳にします。 我が国においても市街地でこのような事態が生じ、一般市民が巻き込まれるといった場合には、一義的に警察機関が対応することとなりますが、警察力で対処が不可能な場合には、自衛隊は、警察機関と協力して活動を行うことになります。  このため、演習場のような原野での訓練と併せて、市街地を想定した、より実践的な訓練の積み重ねが重要となります。 例えば、ヘリコプターにより上空から建物へ降下して侵入するですとか、地下から建物へ侵入するとか、いずれも実際の市街地では行うことが出来ない訓練が必要となります。そこで、演習場内に市街地を模した建物などを配置した特殊な訓練施設を作っています。 また、この施設は東北管内では唯一の訓練場ということもありまして、各部隊の練度向上には欠かせない重要な施設となっています。

パーソナリティー:
 演習場の中では、戦車やヘリコプターによる砲撃訓練を行っている事は承知していましたが、市街地などのあらゆる場面を想定した訓練施設があるということは知りませんでした。

局長:
 はい、次にご紹介する防衛施設は、陸上自衛隊の射撃訓練場という施設です。皆さまは、射撃場と聞いてクレー射撃競技用や拳銃等の室内射撃場が思い浮かぶかも知れませんが、いずれも射程距離が短く施設が比較的小規模であるものと思われます。  ところがですね、陸上自衛隊の射撃場は、その任務の特性から300mを超えるような長距離の射撃が求められます。したがいまして、施設規模の大きさや安全面などへの配慮から、射撃訓練場を駐屯地の中に設けることが出来ない場合は、山間部ですとか演習場など民有地から隔離された場所に設けています。 ここでは、小銃をはじめとして、複数の射撃訓練が日々行われていますが、隊員以外、目にすることが出来ない特別な施設ということになろうかと思います。

パーソナリティー:
 お話しからも、相当な規模の施設であることが予想されます。 また、安全を優先した施設づくりをされていらっしゃるんですね。 その他にはどのような特殊施設があるのでしょうか。

局長:
 はい、次は海上自衛隊の施設を紹介したいと思います。 海上自衛隊には、艦船修理用のドックという施設があります。  この施設は、青森県むつ市の大湊地区にある施設です。  船は、船体の底の部分を含めて、外装の塗装や修繕など定期的に整備する必要があります。小型の船舶であれば、クレーンで吊り上げて陸上で整備したりしますが、護衛艦などの大型艦船となると、とてもクレーンでは吊り上げることが出来ません。 では、どうやって整備するかといいますと、ドック(日本語では「船渠(せんきょ)」)というところに入って点検、整備します。 ドックと言えば、皆さまも「人間ドック」はよくご存知かと思いますが、これは人間の体全体を点検することから、そう呼ばれているもので、もともとは船のドックからきているんですね。  ドックは岸壁や護岸など海に接する陸地をですね、船舶が収容可能な大きさまで掘り込んで、表面を石材等で補強して造られています。いわば、船の整備用車庫のような施設です。大湊にあるドックの大きさは、長さ230m、幅約40m、深さ13mと大きくて、東北管内では唯一、大型艦船を整備できる特別な施設です。 修理を行う際には、船舶をこの施設内に入れ込んで、入口をゲートで閉じたあと、排水ポンプによって内にある海水を排出して、ドックの中の水を空の状態にすることで船の底まで容易に整備することができるようになります。 また、この施設は旧海軍によって建造され、日本の造船技術の発展に貢献してきた歴史的価値のある施設です。

パーソナリティー:
 はい、まさに冒頭でおっしゃっていたとおり特殊な施設ですね。この様な施設も防衛局で整備されているということですよね。

局長:
 はい、最後になりますが、航空自衛隊からは、航空機の消音施設という防衛施設をご紹介します。  航空機が安全に飛行するためには、しっかりとした点検整備が不可欠です。消音施設は、この点検整備の一つであるジェットエンジンの試し運転を行うために造られた施設になります。 航空機は一定の時間飛行すると、機体全体の整備・点検を必ず行う訳ですが、ジェットエンジンの性能を確認するためには、出力を最大値に高めた試験を地上で行う必要があります。 その際、ジェットエンジンはもの凄い轟音を発生しますので、試し運転中の騒音について環境法令で定める数値以下に抑えることが求められます。 そのため、建物内部は高性能の吸音材や防音壁などの建材で覆って、音が最も漏れやすい排気塔、わかりやすく言えば煙突ですね、その内部には、大量の水を霧状に噴出してエンジンから発する轟音を水滴に吸収させる特殊な工夫を施しています。   これによって、地上において最大出力で運転するジェットエンジンの騒音が、自動車が走っている音程度まで低減されています。 小型の航空機は機体ごと、この施設に収容させ試し運転を行いますが、大型機は、一旦エンジンを機体から取り外して、エンジンだけを施設内に収容して行っています。航空機エンジンの善し悪しがこの施設における試し運転で判断されることから、飛行場の関連施設では特に重要な防衛施設となります。  これら紹介させていただいた防衛施設を整備していくためには、防衛装備品や運用についての理解は元より、幅広い知識や技能を有する技術力の高い職員が求められてきます。 東北防衛局においては、調達部という部署がその職責を担っておりまして、あらゆるインフラ整備にも対応すべく、建築、土木、電気、機械、通信と5つのエキスパート集団で構成されており、自衛隊が任務を果たすために必要な様々な防衛施設の建設に日々携わっております。

パーソナリティー:
 私たちが知らない自衛隊の施設を紹介していただきまして、非常に興味深いお話しでした。機会がありましたら、継続的に、この様な施設を紹介していただければ、私たちも防衛施設への理解が深まるのではないかなと思います。   本日も、東北防衛局の伊藤局長から、お話しを伺いました。  貴重なお話をどうもありがとうございました。

局長:
 はい。こちらこそ、どうもありがとうございました。


パーソナリティー:  
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