自 衛 隊 百 科
(5月放送内容)



テ−マ:自衛隊の専門用語の解説


パ−ソナリティ−:
  本日も、東北防衛局の齋藤雅一局長にお越しいただいて様々なお話しをいただいています。局長、本日もよろしくお願いいたします。

齋藤局長:
 はい、よろしくお願いします。

パ−ソナリティ−:
では、早速ですが、今日の話題はなんでしょうか。

齋藤局長:
  はい、皆さんこれまでも自衛隊の色々な活動等についてお話しをしてきましたが、日常生活で、自衛官かなと思われる人達に会ったご経験はあるでしょうか。例えば「角刈りで、がっちりした体型」といった見かけの特徴だけでは、警察官や消防士とあまり見分けがつかないと思います。そこで今日は、そのような活動の中で使用されている自衛隊専門用語、いわゆる自衛隊用語についてお話ししたいと思います。

パ−ソナリティ−:
  なるほど、おもしろそうですね。私も少し知っていますよ。 時刻を言う時、午前の11時を表現する時には、「11時(じゅういちじ)」とは言わずに、「1100(ひとひとまるまる)」って言うんですよね。

齋藤局長:

 良くご存じですね。そうです。周りが騒がしい時など、数字の聞き間違いを防ぐために、誰が聞いても間違えにくい読み方・発音で表現するんです。いまおっしゃった、「1100(ひとひとまるまる)」も、「じゅういちじ」と言うと、無線で通信していて、受信状況が悪かったりすると、よく聞き取れなかったりする場合もありますから、「0」を「まる」、「1」を「ひと」、「2」を「ふた」、「3」は「さん」と呼んで。例えば、「12時5分(じゅうにじごふん)」であれば、「ひとふたまるご」と表現します。

パ−ソナリティ−:
なるほど、実戦の場では何度も聞き返したり出来ないですからね。

齋藤局長:

そうです。数字に限らず、アルファベットでもそうです。

パ−ソナリティ−:
  A(エー)、B(ビー)、C(シー)、D(ディー)、E(イー)ですか。

齋藤局長:
  はい、A(エー)、B(ビー)、C(シー)、D(ディー)、E(イー)は。

  A(アルファ)、B(ブラボー)、C(チャーリー)、D(デルタ)、E(エコー)と発音します。

パ−ソナリティ−:
その読み方は、自衛隊独特のものですか。

齋藤局長:
  いいえ、今の読み方は「NATOフォネティックコード」という、NATO同盟国の海軍同士で使用するために規定されたコードなんですが、現在は一般でも使用されていて、無線などが使われる様々な業界で採 用されています。

  例えば、パイロットと管制官がやりとりをする航空業界、アマチュア無 線、旅行業界でも一部使われているそうです。
この「フォネティックコード(通話表)」というものは、1905年にアメリカで考案されたものです。当時の無線通信は音声がはっきりと伝わりにくかったことから、聞き取りづらい通信環境でも確実に「文字」を伝えるために考え出されたものだそうです。
  特に、「B(ビー)とD(ディー)」、「I(アイ)とY(ワイ)」、「M(エム)とN(エヌ)」、「T(ティー)とP(ピー)」など、発音が悪いと分かりませんし、逆に正しい発音をされると英語圏以外の人は聞き取りにくいと思います。
 日常生活では聞き間違ってもあまり影響はありませんが、もし、パイロットと管制官で使用する滑走路などを聞き間違えたら、生命に関わるような重大事故になることもありますからね。
  ただし、このコードを使用すると逆に間違う可能性がある場合などは、アレンジして使う場合もあるそうです。
 例えば、アメリカの空港では、「D(デルタ)」がデルタ航空のコールサイン(航空会社固有の飛行機の呼び方)で使われているため、間違えないように、デルタの代わりに「Dixie(ディキシー:水兵という意味)」を使うそうです。

パ−ソナリティ−:
 
なるほど。でも、たくさんの単語を覚えるのが大変そうですね。

齋藤局長:
そうですね。でも、1回覚えてしまうと、意外とスラスラ出てくるものですよ。
 

パ−ソナリティ−:
  齋藤局長はこのコードを全部言えるんですか。もしよかったら、教えてもらえますか。

齋藤局長:
  昔覚えたものなので、忘れたりしているかもしれませんが、では。
 「Alfa(アルファ)、Bravo(ブラボー)、Charlie(チャーリー)、Delta(デルタ)、Echo(エコー)、Foxtrot(フォックストロット)、Golf(ゴルフ)、Hotel(ホテル)、India(インディア)、Juliet(ジュリエット)、Kilo(キロ)、Lima(リマ)、Mike(マイク)、November(ノーヴェンバー)、Oscar(オスカー)、Papa(パパ)、Quebec(ケベック)、Romeo(ロメオ)、Sierra(シエラ)、Tango(タンゴ)、Uniform(ユニフォーム)、Victor(ヴィクター)、Whiskey(ウィスキー)、X-ray(エックスレイ)、Yankee(ヤンキー)、Zulu(ズール)」

パ−ソナリティ−: 
 なるほど。おもしろいアルファベットの表現方法ですね。


齋藤局長:
  はい、自衛隊では今のような世界標準の専門用語以外にも、自衛隊独自の専門用語が使われています。
 

パ−ソナリティ−:
 例えば、どのような。

齋藤局長:
  はい、洗濯物を干す場所を、普通は「物干場(ものほしば)」といいますね。

パ−ソナリティ−:
 ええ、そうですね。


齋藤局長:
 自衛隊では、「ぶっかんば」と言います。

パ−ソナリティ−:
   え、「物干場(ぶっかんば)」ですか。音読みなんですね。


齋藤局長:
 はい、「物干場(ものほしば)」を「ぶっかんば」と呼ぶ人がいたら、多分その人は自衛隊の人かもしれません。
  あと、「煙缶(えんかん)」という物は何なのか想像できますか。

パ−ソナリティ−:
 「えんかん?」。何かの特別な缶詰ですか。

齋藤局長:
「煙」に缶詰の「缶」と書いて、「煙缶(えんかん)」と読みます。

パ−ソナリティ−:
  わかった。灰皿ですか。

齋藤局長:
そうです。タバコを吸う人は持ち歩きましょう。

あと、「そーふ」。
 

パ−ソナリティ−:
 え、「そーふ?」。どんな漢字ですか。


齋藤局長:
  当て字だそうですが、掃除の「掃」に「(ぬの)」と書いて、「そーふ」と読むそうです。

パ−ソナリティ−:
「掃布(そーふ)」?。ひょっとして、モップ?ですか。


齋藤局長:
  正解です。海上自衛隊用語で、船の甲板掃除をするモップのことで、陸上の掃除でも使います。旧海軍からの伝統で、「そーふ」と呼んでいるそうです。「モップ」とは呼ばないそうです。伝統なので、なぜそう呼ぶのかは分からないそうです。不思議ですね。
  海上自衛隊は、旧海軍からの伝統を所々受け継いでいまして、このような昔から使っている専門用語があるそうです。
あと一つだけ、「立て付け(たてつけ)」は分かりますか。

パ−ソナリティ−:
  「たてつけ」?。
 家具の立て付けが悪いとかの、あの「たてつけ」とは多分違うんですよね。


齋藤局長:
そうですね。
 

パ−ソナリティ−: 
  降参します。どういう意味なんでしょうか。

齋藤局長:
  海上自衛隊用語なんですが、いわゆる「予行練習」に近い言葉です。様々な儀式・行事の本番を迎えるにあたり、一通り本番の予定を実施して、不具合を調整したりします。
  陸自や空自では全く通用しない用語なので、やはり、旧海軍から来ている言葉のようです。

パ−ソナリティ−: 
  なるほど。同じ自衛隊同士でも、分からない用語っていうのもあるんですね。
本日は、楽しいお話しを有り難うございました。

齋藤局長:
  はい、こちらこそ、どうも有り難うございました。

 




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