防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(4月放送内容)



 

テ−マ:防衛省設置法改正案について

 
 

パ−ソナリティ−:
 本日も、東北防衛局の齋藤雅一局長にお話しをいただきます。局長本日もよろしくお願いいたします。

齋藤局長:
 よろしくお願いいたします。

パ−ソナリティ−: 
  本日のテーマが防衛省設置法早改正案についてということですが、去る36日に調達一元化を図るための防衛装備庁の新設や背広組と言われる防衛官僚と制服組と言われる自衛官による大臣への補佐体制の変更を内容とする防衛省設置法改正案が閣議決定されました。齋藤局長はいわゆる背広組といわれる立場とお伺いしましたが、今日はご経験なども含めて今回の法改正のポイントについて教えて頂きたいと思います。

齋藤局長: 
  はい、私は旧防衛庁に採用されて以来、役人生活の大半を防衛庁・防衛省の内部部局に勤務してきましたので今回の改正には色々な思いがあります。できるだけリスナーの皆さんに分かり易くご説明したいと思います。まずは防衛装備庁の新設です。防衛省・自衛隊はその任務を達成するために、戦車・護衛艦・戦闘機などの正面装備から被服などの需品まで様々な装備品を調達していますが、これまでは防衛装備品の調達について様々な部署が案件毎に協力する体制を取っていました。基本は陸海空の幕僚監部に装備部や技術部があり、それに内部部局が政策面から関与していました。さらに調達実務を担う装備施設本部、研究開発を任務とする技術研究本部と装備に関わる様々な機能をある意味分散された組織が関与する仕組みになっていたわけです。

パ−ソナリティ−:
  なるほど、ちょっとお話しをお伺いしただけでも意思決定が大変そうですし、ちょっとバラバラ感が感じてしまうんですけども。

齋藤局長:
  まさにその通りで、装備品の調達を巡る環境は従来とは劇的に変化しています。まずは運用面では陸海空の統合運用が進み、かつては自衛隊の陸海空の運用をそれぞれの自衛隊が行っていましたが今は完全に統合幕僚監部に一元化されています。調達も各自衛隊がバラバラに行うのではなくて統合運用の必要性を十分に踏まえて行う必要性が高まっています。戦前に陸海軍が別々にお金を払って当時の同盟国ドイツから同じタイプのエンジン生産のライセンスを取得したとかいうひどい話を聞いたことがありますが、そこまで行かなくてもバラバラに調達を行うとやはり無駄が生じ易い側面があります。もはや各自衛隊がバラバラに調達する時代ではなくなったと言うことだと思います。

パ−ソナリティ−:
 はい、では調達の実施部門とか研究開発部門も一緒にするというのはどういう考えによるのでしょうか。

齋藤局長:
  戦闘機の話をしたときにも言及しましたが、今装備品を調達する際には単に装備品の価格を比較するだけでなくライフサイクルコストと言って当該装備品の研究開発コストから調達費用、そして維持修理にかかる費用などかかる費用を全て合算して比較する手法がとられています。装備品調達を考えるに当たっては研究開発をどうするかは不可欠の要素ですし、同時に外国製の装備品を評価する際にも研究開発を担当する技術者の知見が重要な役割を果たすという側面もあります。今回の装備庁新設で、統合的見地を踏まえ、装備品のライフサイクルを通じた一貫したプロジェクト管理ができるようになると供に、新たな政策課題である防衛装備品の一層の国際化や先進技術研究への投資などに積極的に取り組めるようになります。また我が国の防衛を下支えする防衛生産・技術基盤への目配りもさらにできるようになると考えています。

 パ−ソナリティ−:
  なるほど。しかしこれだけ巨大な組織になりますとコンプライアンスは大丈夫なんでしょうか?

齋藤局長:
  そこは重要なポイントでして、防衛監察本部という監察を専門に行う機関による外部からのチェック体制と防衛装備庁内部のチェック体制を強化することで対処することとしております。

パ−ソナリティ−:
  はい、分かりました。適確適正な調達を是非期待したいと思います。さてもう一つの柱が防衛大臣の補佐体制の変更ということなんですが、新聞などでは「背広組優位を見直し」といった記事が出ていますけど実際のところどうなんでしょうか?

齋藤局長:
  
はい、これは長年議論されてきました防衛省改革の一環として行われるものです。これまで自衛隊の運用については制服サイドは統合幕僚監部に一元化されていましたが、内部部局も「行動の基本に関すること」を所掌し運用企画局という局が自衛隊の運用に関与していました。一方で自衛隊の運用はPKO、いわゆる国際平和協力活動や海賊対処などの国際任務も含めて大きく幅を広げきており、この自衛隊の運用に関する意思決定について、的確性を確保した上で、より迅速なものとなるように、今回、実際の部隊運用に関する業務を統合幕僚監部に一本化することとしたのです。このため内部部局の運用企画局を廃止し、その代わり統幕副長級の文官ポストである運用政策総括官や部課長級の運用政策官を統合幕僚監部に新設して関係省庁との調整や対外的な説明、国会対応などを行わせる予定です。「背広組優位を見直し」といった記事は見ますが、必ずしもそう言う趣旨ではなく制服組と背広組の役割分担を明確にしたものと考えています。

パ−ソナリティ−:
 なるほど。しかしこの改正によっていわゆるシビリアン・コントロールというものに変化はあるのでしょうか。

齋藤局長:
 文民統制、いわゆるシビリアン・コントロールは政治の軍事への優越を定めた民主国家における重要な原則です。特に統帥権の独立を盾に軍部が独走した歴史を有する我が国にとってはこの原則がきちんと貫かれていることが大前提となります。この点については中谷防衛大臣が国会等でもお話をされていますが、文民である防衛大臣を背広組と制服組が車の両輪として補佐する体制を整備するものであり、文民統制の機能が強化されるものであると述べられています。文官はあくまでも防衛大臣を補佐するものであって、元々、文官が制服組をコントロールするというような文官統制の考え方は政府としては取っていないところです。

パ−ソナリティ−:
  なるほど。齋藤局長は運用畑も長いとお伺いしていますが、ご自身の経験に照らして今回の改正をどのようにご覧になられていますか。

 齋藤局長:
  はい、私自身は内部部局では部員と言いますが最初の補佐、最初の先任部員、いわゆる課の首席ですね、最初の室長、そして2度目の課長として自衛隊の国際協力を担当する国際協力課長、そして前職の内閣官房参事官として政府の危機管理・安全保障の観点から自衛隊の運用とは長年付き合いました。部隊の政策アドバイザーとしてイラクのサマワにも派遣されたことがあります。文官は文官で法令の解釈運用や各省庁との調整、国会への対応、政策的判断など得意分野がある一方で部隊の実際の運用はやはり制服の人たちがその分野のプロなわけです。今回の改正で統合幕僚監部の中に国会業務も含めた行政事務を担当する文官が配置されることとなっており、文官と制服がそれぞれの知見を持ち寄り、より一体となって防衛大臣を支える体制がとれるものと考えています。

パ−ソナリティ−:
  なるほど、今回の設置法の改正で防衛省の業務がより的確に、スピーディーに実施されることを期待したいと思います。齋藤局長、本日は貴重なお話し有り難うございました。

齋藤局長:
  どうも有り難うございました。この改正案は36日に閣議決定され国会に提出されました。国会で十分にご審議して頂き、一日も早い成立を祈念したいと思います。 

パ−ソナリティ−:
  はい、防衛省東北防衛局がおくる日本の防衛QAでした。

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
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