防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(1月放送内容)



 

テ−マ:将来戦闘機研究開発ビジョンについて(その2)

 

 

パ−ソナリティ−:

 
  本日は、東北防衛局長の齋藤雅一局長と、ゲストとしておいでの外園防衛省大臣官房技術監から「将来戦闘機研究開発ビジョン(その2)」と題しましてお話を伺いたいと思います。
 齋藤局長、外園技術監よろしくお願いします。
 

齋藤局長、外園技術監:
 
  よろしくお願いします。
 


パーソナリティー:

 
 前回なんですが、「将来戦闘機研究開発ビジョン」を作るまでの経緯を齋藤局長にお伺いしましたが、今日は戦闘機を巡る状況やビジョンについてお二人にお話し頂きたいと思います。
 まず始めにこのビジョンを作る前提として戦闘機を巡る状況を教えて頂けますか?


齋藤局長:

 
  はい、前にも申し上げましたが現代戦は航空優勢が決定的に重要で、その中核が戦闘機であり、各国がしのぎを削っているのが現状です。
  我が国の周辺の航空戦力の状況をみても、近隣諸国は航空戦力の増強に力を入れており、特に中国は新型の第4世代の機数を大幅に増やし最新の第5世代機の開発を進めるなど質量供にその航空戦力を増大させており、我が国は今後数的に劣勢なことはもちろん質的にも劣勢となる恐れが出てきています。
  こうした中でレーダーに見えないステルス能力など新たな技術を駆使した新たな戦い方も念頭に対応していく必要があります。
 

パーソナリティー:
 
  なるほど、一般の人にはなかなか分かりづらいところで熾烈な競争が行われているんですね。将来戦闘機研究開発ビジョンでは、いったいどのようなコンセプトを考えられているんでしょうか?  


外園技術監:

 

 齋藤局長が言われたような、我が国周辺の航空戦力の状況を踏まえまして、近隣諸国の航空戦力に対する数的な劣勢の中、相手国ステルス機に対抗するため、従来にはない新たな戦い方が必要と考えています。
  相手国のステルス機に有効に対処するためには、相手機に対してミサイルを発射する機会を可能な限り多くすることが必要です。従来の戦い方では、相手機にミサイルを射撃するためには射撃を行う戦闘機自身が相手機をレーダーで捕捉してミサイルを誘導することが必要でした。
  将来戦闘機では、新しい戦い方として、別の味方機がレーダーで捕捉した相手機の情報をネットワークにより瞬時に共有することで、自機がレーダーで捕捉しなくても相手機にミサイルを誘導することができることを目指しています。これが実現できますと、まるで戦闘機が一丸の雲のようになって戦うため、我々はこれを「クラウドシューティング」と呼んでいます。
  また、強力なレーザや電磁波により、瞬時に相手国の戦闘機やミサイルの機能を妨害したり破壊する、撃てば即当たる「ライト・スピード・ウエポン」といったものもあります。
  このような新しい戦い方に加え、我が国が保有する世界一の素材技術や半導体技術等を駆使した高性能レーダーや赤外線センサー等による高い索敵能力を有し、近隣諸国のステルス機を凌駕するステルス性と高運動性を兼ね備えた機体など最新の技術を駆使して、ステルス機に対抗できるようにすることなどが将来戦闘機のコンセプトです。

 


パーソナリティー:

 

  なるほど、かなり野心的なプロジェクトにも思えるんですが、このビジョンが作られてから4年ほど経っていらっしゃると思うのですが、プロジェクトは順調に進んでいるんでしょうか?

 

外園技術監:
 

  はい。防衛省では、国際共同開発の可能性も含め、現在、航空自衛隊が運用しているF−2戦闘機が退役する時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、将来戦闘機ビジョンで定めた計画に基づいて必要な研究を推進しているところです。
  そのために、具体的には平成29年までに必要な研究を取りまとめ、技術実証を一通り終える予定です。
  例えば、現在取り組んでいる研究としては、将来戦闘機のコンセプトを検討するための、コックピットを用いたパイロットによるシミュレーションの研究、敵ステルス機を探知するためにいろいろなセンサを協調動作させるとともに高いレーダ送信出力を有する先進的なセンサに関する研究を行っております。
  また、将来戦闘機のステルス性を向上するための技術としては、これまで機体外部に搭載していたミサイル等を機体内部に収納するための研究、重くなりがちなステルス機の機体構造を軽量化するための研究、エンジンの径をスリムにしてステルス性を向上させ、高い推力を発揮するハイパワー・スリム・エンジンの研究があげられます。
  また、初の国産ステルス機として新聞、テレビ等で報道されている先進技術実証機は、将来戦闘機の実現に向けた研究の一環として高い運動性能を備えたステルス機を製造して飛行させることにより、ステルス機の設計・製造技術や運用上の有効性を確認するためのものです。
  現在、製造会社である三菱重工業において防衛省技術研究本部の指導の下、地上での機能確認試験を実施しているところで、これが終わり次第、初飛行が行われ、その後、防衛省に納入され、平成28年度まで技術研究本部において各種飛行試験を実施する計画です。
  さらに、戦闘機関連技術は最先端の技術を集結したものであることから、F−2に適用された当時の新技術であるレーダアンテナが自動車のETCに、また、一体成形複合材がB787の複合材主翼に応用されたように、各種研究開発で得られた優れた技術成果が他の装備品や民生品へ応用される等の高いスピンオフ効果が期待されています。

 

パーソナリティー:
 
  防衛省はこの事業に相当力を入れていると思われますが、今後の見通しとしてはどうなんでしょうか?
  また、仮に開発と言うことになりますと巨額の費用がかかるのではという話も聞きますが、その点についてはどのようにお考えですか。
 

外園技術監:
 

  将来戦闘機については、我が国独自で戦闘機関連技術を保有することの重要性や、民間の他の分野への大きな波及効果も踏まえつつ、我が国の防衛に必要な能力を有しているかといった点や、コスト面での合理性等を総合的に勘案して検討していく必要があると考えています。
  防衛省としては、今後も引き続き、先進技術実証機等の研究開発等を通じて、将来戦闘機の具体的な要求性能や技術的な達成可能性等を明確化するため、将来戦闘機関連技術の研究等を行い、それらの成果も踏まえつつ、平成30年度までに、国産開発に係る最終判断を行い、必要な措置を講じて参りたいと考えています。

 

齋藤局長:
  費用についてはビジョン策定当時開発費として約5,000〜8,000億円かかると見積もっていました。
  ただ、この額はどんな戦闘機を作るかにもよりますし、また外国から買う場合にも開発経費は価格に上乗せされるのが通常ですから、輸入したから安くすむとは限りませんし、自国で開発した方が維持修理や近代化に有利という側面もあります。
  そこで今、装備品の導入は単に開発経費の多寡だけで判断するのではなく、ライフサイクルコストと言っていますがそうした開発経費や調達費用、そして維持経費なども全て合算して比較する手法がとられています。
  また、なによりも装備品の導入は、費用だけでなく性能などを含めた総合判断になります。開発に着手できるかのポイントは競争力ある性能を少ない費用で実現できるかだと思います。

パーソナリティー:

このビジョンには国内産業から熱い視線が注がれていると聞いています。今後も我が国の空を守るため関係者の努力に期待したいと思います。
  今日は、齋藤東北防衛局長と外園技術監に、「将来戦闘機研究開発ビジョン(その2)」と題してお話を伺いました。 外園技術監、わざわざ山形までお越し頂き、そして難しい話を平易にご説明頂いて、本当にありがとうございました。


外園技術監:
  こちらこそありがとうございました。

パーソナリティー:

そして、齋藤局長も、本日は大変ありがとうございました。


齋藤局長:

 どうもありがとうございました。

  
 
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