自 衛 隊 百 科
(12月放送内容)



テ−マ:防衛問題セミナー



パ−ソナリティ−:

 では、早速ですが、今日の話題は何でしょうか。


齋藤局長:

はい。今日は、去る10月9日に岩手県滝沢市の「滝沢ふるさと交流館チャグチャグホール」で開催した防衛問題セミナーについてお話ししたいと思います。
  この防衛問題セミナーとは、全国に8つある地方防衛局が、それぞれの担当地域において、安全保障や防衛問題についての理解を深めていただくために実施しているものです。
  私たちの担当する東北6県においても、2007年以降精力的に開催しており、今回で26回を数えました。今回の会場がある岩手県滝沢市には、陸上自衛隊岩手駐屯地、岩手滝沢基本射撃場、岩手山中演習場が所在しており、平素から、これら施設の安定運用に多大なご協力を頂いています。当地での防衛セミナーは平成22年の12月に続き、2回目の開催となりました。
  前回の滝沢市でのセミナーは「自衛隊における国際平和協力活動と災害派遣活動」をテーマに実施し、約160人の方にお集まりいただいたのですが、実はその時、私は防衛省の国際協力課長として講師にお招きいただきました。
  その滝沢市で、今回は主催者として防衛セミナーを開催できたことには、何か不思議なご縁を感じずにはいられません。
  そして今回は、東日本大震災以来、国民的な期待と関心が大いに高まっている「災害と自衛隊の関わり」をテーマに、岩手大学地域防災研究センター教授の越野修三氏と岩手駐屯地司令の松本英樹1等陸佐を講師に招いて講演していただきました


パーソナリティー:

  はい。その狙いはどの辺にあるのですか?


齋藤局長:

  まず、防衛問題セミナーについてですが、自衛隊施設の周辺にお住まいの方々は、防衛問題に対する関心も高く、防衛全般に関する重要な政策課題ですとか、安全保障に関するさまざまな話題を提供することは有意義だと思っています。
 また、東日本大震災以来、災害対処における自衛隊の存在感は増しており、特に今年は、記憶に新しいところでは、御嶽山の噴火や2つの巨大台風による自然災害などが発生しており、そのような時期に3.11の記憶も残る岩手県において、自衛隊の災害派遣についての防衛問題セミナーを開催したことは、タイムリーであったと考えています。


パーソナリティー:

  では、今回の滝沢市のセミナーでは、どのようなテーマで議論が行われたのでしょうか。

齋藤局長:
 はい、今回第1部として、越野教授からは、「東日本大震災における自衛隊との連携 」について講演していただきました。
  越野教授は元自衛官で、当時の陸上自衛隊第13師団第3部長であった時代に阪神・淡路大震災、また、東日本大震災時には、岩手県の総合防災室防災危機管理監として、それぞれ震災対応の最前線で対応されたご経験から、報道などでは知り得ないような、非常に興味深いお話をしていただきました。
  講演中、岩手県においては、防災訓練などによる連携の強化を平素から図っていることや、県の防災担当者と県警、そして自衛隊などの防災関係者の方々が、定期的に「ノミニケーション」を含む「平素から顔の見える付き合い」を通じた交流を図っていること。
  震災時、自衛隊が住民からの要望を聞き取る際に、男性自衛官だけではなく、女性自衛官も聞き取り役としたことにより、これまで見逃されていた、例えば入浴後に化粧水や乳液などを提供するなどの女性特有のニーズにも対応できるようになり、大変感謝され、それが“岩手モデル”と言われる新しい自衛隊の支援の形になった話などは、大変印象深く感じました。
  また、越野教授からは講演の最後に、救援活動中に、自衛隊員と地域の方々が交流している写真を紹介していただきました。「自衛官は子供の笑顔とありがとうに弱い」という言葉があったのですが、お子さんと自衛官が笑顔でふれあっている写真や、自衛隊の撤収に当たって、地域の方々が涙をぬぐって見送りをしている写真などは、自衛隊と地域の絆を象徴している、大変素晴らしい写真でした。


パーソナリティー:

 はい、それは大変興味深いお話しですね。


齋藤局長:

  そして第2部ですが、松本司令から「陸上自衛隊の災害派遣」について講演をしていただきました。
  陸上自衛隊が各種の事態の発生に迅速・的確に対応するため、平素から人員約2,850名、車両約610両、ヘリ約30機が災害派遣即応部隊として初動対処にあたれる態勢をとっていること、東日本大震災においては、滝沢市に所在する岩手駐屯地が災害派遣活動の拠点となって、派遣部隊の後方支援や物資輸送の中継点等として、多くの活動を支えることができたことを説明していただきました。
  また、地域と深い関わりを持つ各駐屯地や分屯地は、事態対処上の拠点のみならず、防衛基盤育成の拠点という重要な役割を保持しているというお話もありました。
  このほか、岩手駐屯地の態勢・沿革、過去の岩手県内の災害派遣活動実績ですとか、自衛隊への災害派遣の法的な枠組みに至るまで、大変丁寧に説明していただきました。
  また、松本司令は「マーフィーの法則」という、経験則を法則化してベストセラーになった本の中の「最悪の事態は、絶好のタイミングでやってくる」という言葉を紹介されていました。
  この言葉を普通に解釈すれば「最悪の事態とは、起こって欲しくないときに起こるから最悪の事態になる」と理解するのだと思いますが、司令は「最悪の事態とは、絶好のタイミングで起こるから、最悪の事態になる」と解釈されているそうです。
  例として、御嶽山の噴火がまさにそれで、あれが例えば紅葉シーズンの休日でなければ、あそこまでの被害にはならなかったのでは、ということを挙げられていました。
  他方で、自然災害については、いつ起こるか完全な予測が困難であるという問題があり、平素から、ひとりひとりが、発災時に自分はどう行動するか考えておくことや、物の準備をしっかりしておく「自助」が最も重要であること、また、その「自助」に加え、「共助」・「公助」として、自衛隊、自治体、関係機関が、防災訓練などで連携を強化することが重要であるというお話しがありました。
  このように、お二人の講師のお話に共通していたのは、災害救援活動における、地域間の平素からの連携強化の重要性でした。その意味では“ノミニケーション”で繋がっている岩手県の防災力は、相当なものと言えるかもしれませんね。
 
なお、会場には滝沢市の柳村市長にもお越し頂きました。市長からは、丁寧なご挨拶とともに、セミナーの最後までお付き合いもいただきました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。


パーソナリティー:

 はい。ところで、セミナー全般について、聴講された方の反響は如何でしたか。
 
齋藤局長:
 平日の木曜日夜の開催だったのですが、会場には約150人の方にお越しいただきました。講演に対する質疑の時間では、多くの方々からさまざまな質問、御意見、そして激励等をいただき、大変良い議論が出来たと思っております。
 さらに、参加して頂いた方を対象に実施したアンケートの結果を見ますと、自衛隊の活動がよく理解でき、災害派遣の質の高さや、ご苦労が多かったことなどの肯定的な意見が多く、今後においても、このようなセミナー開催を希望する意見が多数寄せられた一方で、「映像だけでなく、資料として欲しかった。」「若年層の参加も望ましい」など、セミナーの運営への意見もありました。これらは、次回以降への教訓にし、よりよいセミナーを目指して改善していきたいと思います。


パーソナリティー:

 その次回ですが、どこで、どのようなセミナーを実施予定でしょうか。
 
齋藤局長:
 来年2月頃の開催を目指し、場所等については現在検討中です。決定し次第、東北防衛局のホームページなどでお知らせをいたします。
  どこで実施しても、無料のイベントですので、ふるってご参加いただければと思います。また、今回や過去のセミナーも含め、実施後にはホームページに議論の内容などを公表していますので、そちらもご覧いただければと思います。
 
一人でも多くの方々に東北防衛局のホームページにアクセスして頂ければ幸いです。


パーソナリティー:

 自衛隊の皆さんの活躍は今でも東北の人々の心に焼き付いていると思います。今日も貴重なお話しありがとうございました。

 
齋藤局長:
 こちらこそ有り難うございました。


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