防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(6月放送内容)



 

テ−マ:沖縄の基地負担軽減と東北地方

 

 

パ−ソナリティ−:

 
  防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話しをいただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をお伺いします。局長、本日もよろしくお願い致します。  

中村局長:
 
  よろしくお願い致します。
 


パーソナリティー:

 
 先月のこのコーナーでは、アメリカ空軍の無人偵察機グローバルホークが青森県三沢飛行場へ一時的にやってくるということから、日本を守るための基地負担のあり方についてお話を伺いしました。平和は国民が等しく享受するものなので、そのためのコストは、本来、国民が等しく負担すべきだとは思うのですが、やっぱり日常的な騒音などは防衛施設の周辺に集中してくることを、私たちは忘れてはならないなと感じました。一方、基地負担というと、報道では沖縄の米軍基地の問題がよく取り上げられていますが、東北地方にもやはり同様の問題は存在いたしますし、さらに、沖縄の負担を少しでも軽くするために、沖縄で行われていたアメリカ軍の訓練を受け入れている地域もあるということでしたが。


中村局長:

 
  はい、先月も申し上げましたとおり、今回は、その点についてお話をしたいと思います。本題に入る前に、よく言われていることで、ご存じと思いますけれども、沖縄県には、在日米軍施設の4分の3が集中をしていて、県の面積の約10%、沖縄本島で言いますと約18%が米軍の施設で占められているということになっているんです。このために、沖縄の基地負担の軽減には、全国規模で、さまざまな形で、継続して取り組んでいかなければならないと考えていますけれども、今日は、東北地方における2つの例をご紹介をしたいと思います。
 まず、宮城県の王城寺原演習場における海兵隊の移転射撃訓練の受入れです。
  王城寺原演習場と言いますと、宮城県の西部の大和町、色麻町、大衡村に跨っている陸上自衛隊の演習場なんですけれども、この5月末から12回目となる移転射撃訓練が開始をされました。もともとこの訓練は、沖縄本島にあるキャンプ・ハンセンという基地で行われていたんですけれども、基地を横断する県道を跨ぐ形で射撃が行われていて、訓練のときにこの道路は通行止めになっていたんです。沖縄の東海岸と西海岸を結ぶ重要な道路が訓練のたびに閉鎖されてしまうので、地元には、何とかして欲しいという強い要望があったんです。これを受けまして、この訓練を本土へ移転することが平成8年に合意をされて、平成9年度から北海道、本州、九州にある自衛隊の5つの演習場で訓練を実施をしています。5つの演習場のうちの一つが王城寺原演習場というわけなんです。
 

パーソナリティー:
 
  射撃と言っても、使う武器は千差万別だと思いますが、具体的にどのような射撃訓練を行っているのでしょうか。  


中村局長:

 

まず、訓練を行う部隊なんですけれども、沖縄に所在をする海兵隊から中隊レベルの部隊がやってくるんです。今回やってきた部隊で言いますと、人員がだいたい250人、車両が60両、155o榴弾砲6門ということで、約1ヶ月間演習場に滞在をするんですけれども、実際に射撃訓練を実施をするのは、このうちの7日間ということになっています。
  訓練の中心は、今申し上げた155o榴弾砲の実弾射撃なんです。この155o榴弾砲、型は違うんですけれども、陸上自衛隊も持っていて、現在の陸上戦闘における火砲の代表的な装備の一つと言っていいと思います。それだけに、かなりの威力がありますので、演習場はもとより、2〜30キロ離れた仙台市内でも音が聞こえることがあります。とは言いましても、在日米軍で陸上戦闘能力を有しているのは沖縄の海兵隊だけですので、沖縄の外でこのような訓練を実施をして、部隊の能力を維持向上させるということは、沖縄の負担軽減だけではなくて、日本の防衛全体にとっても意味のあることというように思ってます。
  ところで、こうした訓練の場合なんですけれども、どうしても騒音ですとか事故に目が行きがちなんですけれども、実は、海兵隊は訓練終了後に、毎回さまざまなボランティア活動を演習場の周辺で実施をしてるんです。たとえば、福祉施設へ行って掃除や草むしりをしたり、恵まれない子どもにおもちゃをプレゼントしたり、歌やゲームの交流会も実施をしています。

 


パーソナリティー:

 

 海兵隊って強面な印象が先に立ってしまいますが、意外な面があるんですね。一知半解は厳に戒めないといけないですね。

 

中村局長:
 

 ボランティアに限らず、海兵隊の隊員は、地域と良好な関係を保つために、例えば、地元の町長や村長を表見訪問したり、訓練を見学する機会を設けたりするなどして、色々と努力をしていることも知っておいてほしいと思います。
  次に、移転訓練でも今度は戦闘機の移転訓練についてご説明をしたいと思います。
  日米間では、平成18年に合意をして、協力して作戦を行う能力の向上と米軍の飛行場周辺への影響を少なくするために、米軍の飛行場から自衛隊の飛行場へ戦闘機を移動させての共同訓練を実施をしてきました。米軍機を受け入れる自衛隊の飛行場は6つ、その移転元となる米軍の飛行場は3つあるんですけれども、このうち東北地方で唯一名前の出てくるのは三沢飛行場で、自衛隊と米軍が同居をしていますので、唯一、移転先にも、移転元にもなってきたという飛行場なんです。
  他方で、従来の訓練は、戦闘機同士のいわゆる空対空の戦闘訓練だったんですけれども、日米は、これを拡充をして、さらに沖縄の負担を少なくすることも考慮して協議を重ねてきました。この結果、航空自衛隊の三沢か千歳に米軍機がやってくる共同訓練では、三沢対地射爆撃場という施設で、空対地、すなわち、戦闘機から地上を攻撃する訓練も実施することで最近合意をしました。具体的には、海兵隊の岩国基地に所属するFA-18という戦闘機が、空自との共同訓練のために三沢にやってきた場合はF−2戦闘機と、千歳にやってきた時はF−15戦闘機の空対地の訓練を年間最大で約30日間行うことにしました。
 このように申し上げると、やってくるのは岩国の飛行機で、沖縄とは関係ないように思われるかもしれませんけれども、実は、岩国の戦闘機による空対地訓練は、嘉手納基地に移動をして、沖縄の離島にある訓練場を使って実施をしていたので、三沢の方で実施される分については、沖縄の負担を軽くするということにつながるわけなんです。

 

パーソナリティー:
 

先ほど「射爆撃場」というお話が出てきましたが、あまり聞いたことがない単語なんですが、どのようなところなんでしょうか。爆撃という言葉が入っていますので、実際に爆弾が落とされるようなところなんでしょうか。

 

中村局長:
 

三沢対地射爆撃場はですね、三沢飛行場の北約20キロにあって、太平洋に面して、三沢市とお隣の六ヶ所村に跨がる地上部分約8?と、それに接続する扇形の海上部分で構成されているんです。一般的に、爆撃訓練は、太平洋側から戦闘機が飛んできて、旋回して射爆撃場の中のターゲットに向けて、実弾ではなくて模擬弾を落とすという形で行われているようです。このため、飛行ルートの関係から、三沢市と六ヶ所村だけではなくて、近隣の東北町などにも騒音の影響が及んでいるんです。
 ところで、先ほどの榴弾砲の訓練も同様なんですけれども、沖縄の負担を軽くすると言っても、結局は負担のたらい回しで、抜本的な解決にはなっていないと批判されることがよくあるんです。一部、航空機の訓練をグアムにも持っては行ってはいるんですけれども、いずれにしても、日米双方とも、無駄な訓練をしているわけではなくて、防衛のために必要な訓練を実施しているのです。今日申し上げた訓練の受け入れによって影響を受ける自治体も、沖縄の負担ということだけではなくて、日本の防衛にも思いを致して、苦渋の決断をしているんです。是非、この点をご理解頂きたいと思います。

 

パーソナリティー:
 
   苦情がある裏側ではやはり防衛局のみなさまも理解した上で、そして日本の防衛のために訓練が行われているという面もしっかりと私たちも認識して、そしてですね、基地周辺のみなさまのそういった負担もまた心を向けていきたいなと思いました。本日はどうもありがとうございました。  
 
中村局長:
 

 こちらこそどうもありがとうございました。

 

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