防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(3月放送内容)



テ−マ:震災から3年を経て


パ−ソナリティ−:

  防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をいただきます。本日もよろしくお願い致します。 


中村局長:

  はい、宜しくお願いします。


パ−ソナリティ−:

  東日本大震災の発生から今月で3年が経ち、マスコミでは、震災の被害を振り返るものや復興事業の進展状況など、関連する様々な番組が放送されていて、当時の自衛隊の救援活動についても取り上げられる機会が多くなっています。このときの自衛隊の活動は多くの人から大変感謝されていましたが、先月も東北方面総監部で大規模な訓練が行われるなど、災害救援活動について、自衛隊はよりよい活動のため努力しているようで、すごく心強く思っています。


中村局長:

 ご指摘のとおり、今月で震災から3年となりますけれども、まず、東日本大震災で被災された方々に改めてお見舞い申し上げるとともに、地域の復興が一日も早く達成されることを、心からお祈り申し上げたいと思います。
  一方で、震災当時の自衛隊の活動は、北本さんも仰ったとおり、内外で大変高く評価していただきましたけれども、これも、震災の以前から、地域の方々が自衛隊の活動を深く理解していただいて、さらに自治体なども含めた災害救援の演習などでご協力いただいてきたからこそというように感じています。しかし、当時のオペレーションの全部が全部うまくいったわけではなくて、当然のことながら、様々な教訓や反省などがありました。そこで今日は、震災以降、防衛省・自衛隊はどのような取り組みを行ってきたのか、紹介をしていきたいと思います。
  まず、防衛省が取り組んだ作業としましては、救援活動がまだ継続している平成23年8月の末に、それまでの活動から得られた教訓の中間的な取りまとめを行っていて、さらに翌24年の11月に最終的な取りまとめを行っています。もちろん、教訓事項というのはまとめればよいというものではありませんで、必要な部分の改善をできるだけ早くやっていかなければならないというわけでございますので、とりまとめ作業を行っている間においても、色々な改善を随時実施してきているんです。そして、改善が行われた事項も含めて、演習などによって救援活動全般の検証を行って、必要であれば、さらに改善を行ってきているというわけなんです。この演習の中には、自治体なども参加したものもあって、先月の東北方面総監部主催の訓練でも、各県や関連する国の機関、交通関係の機関、通信会社、病院なども含めたかなり大きな図上演習が行われているんです。さらに、この秋には、こうした演習を踏まえた大掛かりな実働の訓練というのも行われる予定となっております。


パ−ソナリティ−:

  なるほど、組織を挙げて、かなりコンプレヘンシブな取り組みが行われていることがよくわかりました。ところで、具体的な反省点、それに対する改善点としては、どのようなものがあったのでしょうか。

中村局長:

先ほど申し上げた多くの項目、さらにそれらを細分化した項目について、それぞれ詳細な検討を行ってきましたので、改善事項も、かなりの数になっているんです。と言っても、私の目から見ますと、大きく言って2つ、すなわち、自治体ですとか外国の機関も含めた関係機関と自衛隊との連携の強化、もうひとつが、自衛隊の大規模災害対処能力の充実・強化、このふたつに概ね集約されるように思います。
  まず、関係機関との連携の強化の中で私の目を引いたのは、民間の輸送力を積極的に活用していこうという点です。従来から、アウトソーシングしてきたんですけれども、防衛力の中でも枢要な部分のひとつである輸送能力への民間活用に踏み切っているというわけで、すでに民間船舶を利用した演習も行われているんです。と言いましても、欧米ではかなり以前からこうした民間輸送力は活用されてきておりますので、装備と予算が限られている中で、必然的な改善の方向性といえるかと思います。そのほかにも、通信会社や高速道路などとの連携強化のための協定の締結といったこともあります。自衛隊というと、かつては「自己完結」が基本だったんですけれども、様々な面で変わりつつあるようです。


パ−ソナリティ−:

自衛隊に限らず行政機関もですけれども、民間企業の繋がりというのも大切にして、連携を深めていこうという形が3.11から感じられるようになってきましたね。


中村局長:

 そうですね。自衛隊もその時流に乗っているということが言えるかと思います。次に、自衛隊の能力面なんですけれども、これにはヒトとモノと組織の面があると思います。ヒトとモノについては、必要な人員を増やすですとか、装備を取得していくということが挙げられます。といっても、人員も装備もやみくもに増やすことはできませんので、人員の配置換えですとか装備を買うための予算のやりくりといったことが必要になってきます。
  また、装備とはちょっと違うんですけれども、自衛隊の施設、基地・駐屯地ですね、こういったことの強化も、この範疇に含めたいと思います。みなさん、宮城県の松島基地で津波によって戦闘機が流されてしまったということをご記憶の方もいらっしゃると思います。このため、駐屯地ですとか基地を震災に強くするためには、建物を耐震化するということは元よりなんですけれども、松島基地と、これも宮城県なんですけれども、多賀城駐屯地の、津波対策のかさ上げをやっていますので、こうしたことも強化ということの中にあげておきたいと思います。基地・駐屯地というのは、文字通り、自衛隊の活動のベースとなるものですし、場合によっては被災した住民の方々を収容しなければならないので、地域の実情に合わせて、災害に強い施設に作り替えていかなければならないというわけなんです。
  一方、ヒトの面では、先ほどのアウトソーシングを進めることは、必要な部署に人員強化をしていくという面もあります。さらに、数を増やしたり、配置を工夫したりするだけではなくて、現に自衛隊に所属をして、活動する人たちの能力を伸ばして、さらにその能力が十分に発揮できるよう支えていくということも必要だと思います。具体的に申し上げますと、隊員の健康管理の充実、さらには心のケアのためのメンタル・ヘルス機能の充実、さらには派遣された隊員の子供の一時預かりといったことも挙げられています。


パ−ソナリティ−:

女性の社会進出も叫ばれていますし、まして、派遣される隊員のご家族も被災することも考えると、細かな心配りが必要になりますね。


中村局長:

はい、まさに仰るとおりだと思います。女性自衛官の割合はいまだ5%くらいですし、震災対処に限らず、今後さらに活躍の場は広がってくると思います。
  最後に組織面について申し上げておきますと、すでにオペレーションの指揮統制を行う統合幕僚監部に運用部の副部長というものが新設されておりますし、必要な組織ですとか人の増員といったことが新たに行われているところです。
   一方、先月ご説明をした「防衛計画の大綱」、ここでキーワードになっている「統合機動防衛力」ですけれども、当然のことながら災害救援活動も考慮していて、ここにも東日本大震災の教訓が活かされています。具体的には今後明らかになってくると思いますけれども、「防衛計画の大綱」の本文で、大規模災害への対応においては、初動に万全を期すこと、必要に応じて対処態勢を長期間にわって維持すること、被災した方などのニーズに丁寧に対応すること、関係機関と連携、協力するといったことなどが掲げられています。


パ−ソナリティ−:

大規模震災への対応に関しては、様々な面で工夫や改善が行われてきていて、さらに今後も継続するであろうということがわかりました。本日はどうも有り難うございました。


中村局長:
  はい、こちらこそ、どうも有り難うございました。

 
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