自 衛 隊 百 科
(1月放送内容)



テ−マ:自衛隊の国際緊急援助活動



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科としては、新年初めての放送となりますね。今年もよろしくお願いします。


中村局長:

 はい。今年もよろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

先月は、自衛隊の災害派遣について、活動の内容や派遣の手続、待機態勢などについてお話しをいただきましたが、国内だけではなく、フィリピンの台風被害に対しても自衛隊が派遣されて活躍している姿を見ました。今日は、国際的な災害救援でも活躍する自衛隊についてお伺いたいと思います。


中村局長:

フィリピンの台風被害というのは、本当に映像で見ると台風であんなことになるのだろうか、というくらいの感じがしたもんです。本当に人ごとではなくて被災された方に対してお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧復興というものをお祈りしたいと思います。
 さて、自衛隊の国際的な災害救援活動ですけれども、本題に入る前に、ちょっと先月の復習ということで、一つ伺いたいと思います。自衛隊の災害救援活動を開始するためには、通常、誰のどういう手続が必要だったか覚えていますか。


パ−ソナリティ−:

全く、カンニングしてこなかったんですが、県の知事の方、都道府県知事ですね、の要請からスタートしたと思います。


中村局長:
 その通りですね。自衛隊の国内の災害救援活動というのは、今お答えのとおり、基本的に都道府県知事からの要請によって行われるんですね。一方、海外での災害救援活動、これは別の法律がありまして国際緊急援助活動と呼ばれているんですけれども、こちらも基本的に災害のあった国からの要請に基づいて開始をされます。当然、外国ですから外交ルートを通じて要請が行われて、必要であれば、自衛隊だけではなくて、警察ですとか消防、海上保安庁なども派遣されることがあるんです。自衛隊が実施する活動ですけれども、一般的な救助活動の他に、輸送、後は医療ですとか、衛生事情が悪化した時の防疫ってものが主なものになります。


パ−ソナリティ−:

 そのようにお伺いしますと、災害救援活動の海外バージョンみたいなものでしょうか。


中村局長:

 基本的には、国内での活動の応用編といったようなものなんですけれども、海外の活動であるが故に、言葉ですとか文化といった問題は元よりも、他にも幾つか特徴があるんですね。
 まずは担当する部隊なんですけれども、国内での災害救援活動と違って、日本全国の部隊が国際緊急援助活動に常に備えているわけではないんです。陸上自衛隊ですと、5つある方面隊が持ち回りで待機していて、フィリピンの時には、東北方面隊の順番だったために、ここから部隊が派遣されたわけなんです。その待機なんですけれども、外国、それも衛生状況のよくない地域での活動もあり得るために、派遣要員は必要な予防接種を事前に受けているんです。海外旅行などで経験された方もいらっしゃると思いますけれども、場合によっては何種類もやらなければいけない、それも間を空けて、中には複数回注射をしないと効果の無いものもありますので、予防接種を完了するまでにはすごく長い時間を要することになります。予防接種自体に副作用の可能性もあって、けっこう身体にも負担がかかる大変なことではあるんですね。
 次に、被害の状況が現場に行かないと分からないということも多くて、最初は活動内容の確認と活動基盤の確保といったための要員を派遣をして、その上で本格的な派遣を行うことが通常になっています。この点、派遣可能で必要な部隊を直ちに動かすことが求められる国内での災害派遣とはちょっと違うところがあります。
 もう一つが、多くの国や国際機関、さらにはNGOが様々な組織を派遣してくるために、活動内容の調整を現場で継続的に綿密に行わなければいけないという点が違います。国内でも活動に従事する組織の間での調整はもちろん必要なんですけれども、共同訓練ですとか事前の調整などで顔見知りになっているケースも多くてそれほどでもない一方で、海外の活動では、初めて見る組織ですし、何ができて、どういう動きをするのかも分からないといったことのため、日々かなりきっちり調整しないと効果的な活動ができないと言うことになってしまいます。フィリピンのケースでも、自衛隊の部隊には、現地の関係機関ですとか各国との調整を行う現地運用調整所が設けられていたんですね。
 こういったように、さまざまな苦労ですとか工夫、ノウハウを積み重ねて、自衛隊は国際緊急援助活動を実施しているという訳なんです。


パ−ソナリティ−:

 はい。わかりました。フィリピンでは実際どのような部隊がどのような活動を行っていたのでしょうか。


中村局長:

 今回は、陸海空自衛隊の部隊からなる「統合任務部隊」といったものが編成されています。人員は約1200名でして、自衛隊の国際緊急援助活動史上で最大の部隊となっています。統合任務部隊の下には、医療・航空援助隊、海上派遣部隊、空輸隊といったような3つの部隊がありました。
 この名称から分かるように、医療ですとか防疫活動、被災者の空輸、医療用器材や救援物資の輸送といったものが主な活動内容でした。ちなみに、今回の活動について、自衛隊は「サンカイ作戦」というように名付けていますけれども、「サンカイ」とは現地語で友達を意味しますので、フィリピン版の「トモダチ作戦」ということになります。
 なお、この統合任務部隊全体の司令官は、海上自衛隊の第4護衛隊群司令官という人が務めていましたけれども、医療・航空援助隊の方は、山形県の神町駐屯地ここにあります第6後方支援連隊が主力となっていて、連隊長が医療・航空援助隊長をつとめていました。


パ−ソナリティ−:

 私たちの部隊が国際的に活躍していたわけですね。第6後方支援連隊の方もこのコーナーにご出演いただくこともあるので、とてもうれしいなと言うか誇らしく思ってしまいます。ところで、以前、青森県八戸市の部隊がアフリカに派遣されているというお話も伺いましたが、こちらでも同じような仕事をしていたのでしょうか。


中村局長:

 そちらの方は、南スーダンにおける、いわゆる国連のPKOですね。このPKOという活動は、国連の旗の下で、参加している各国が協力して南スーダンの国作りに貢献しているのですけれども、自衛隊は、インフラの整備面を担当していて、このミッションには一昨年から参加をしているんです。道路や橋ですとか、学校などを作っている傍ら、こういったものを作るノウハウを現地の人達に教えているようなので、すごく周りの人たちからは喜ばれているようです。この部隊、だいたい半年で交代をしていて、八戸の部隊は、第3次の派遣部隊として活動をしていました。
 ここで、いまのPKOと国際緊急援助活動の違いをちょっと申し上げたいのですけれども、これまでご説明したとおり、国連のPKOの方は国連がもちろん主導する活動で、後者、国際緊急援助活動の方は被災国の要請に応じた国ですとか国際機関が、それぞれに実施をする活動になっています。もともとの原因となっているのが、基本的に国連のPKOの方は紛争によるものである一方、国際緊急援助活動の方は自然災害によるものといったような違いがあります。
 ところで、このPKOに関する法律と自衛隊の国際緊急援助活動に関する法律というのは、一緒に今から
22年前に施行されたんですけれども、当時は、国会で大変大きな議論になっていました。法案の投票の際、のろのろ歩いて採択を送らせるいわゆる「牛歩戦術」というのでも有名になった法律ですよね。
 その後、自衛隊の部隊がPKOに本格的に参加をしたのは、
1993年のカンボジアでの活動からなんですけれども、実は、私、第一次に派遣された部隊と一緒に、現地に半年間滞在をしていたんです。当時は、やっぱりマスコミの関心が非常に高くて、一説には300人と言われていましたけれども、マスコミが大挙して現地にやってきて、ちょっとした事件でも連日、日本のニュースのトップを飾るといったような状態だったんですね。


パ−ソナリティ−:

 それに較べると、南スーダンでの活動というのは、マスコミの話題に上ることが少ないように感じますね。


中村局長:

はい。それだけ、PKOといった活動が自衛隊にとって通常の業務であるという認識が深まってきたのだろうと思います。とは言いましても、遠く離れた異国の地で、国際的な安全保障ですとか国作りに重要な業務を行っているわけですから、国民の皆さんの理解がもっと深まるよう、私たちも情報発信しなければならないと思います。そう言った観点で、PKOですとかその他の国際的な活動についても、回を改めて、お話をしていきたいと思います。


パ−ソナリティ−:
 では、そのお話を伺える日を楽しみにしております。今日は有り難うございました。

中村局長:

はい。有り難うございました。


 


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