防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(10月放送内容)



テ−マ:26年度概算要求について


パ−ソナリティ−:

防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をいただきます。本日もよろしくお願い致します。


中村局長:

はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

 8月下旬以降、防衛省がいろいろな事業を新たに実施しようとしているとか、新しい装備品を導入しようとしているという新聞記事をいくつか目にしたんですが、今日はその点についてお伺いしたいと思います。


中村局長:

はい。それは、たぶん8月末に行った来年度予算の概算要求の内容を記事にしたものがほとんどだと思います。概算要求といいますのは、次の年度にそれぞれの省庁として、どんなものを買って、どんな事業を行っていこうかという計画に基づいて、必要な予算の案を財務省に提出をするというものなんです。予算については、かなり早い段階から、実は部内的にセクションごとの案を作っていて、それらを最終的には防衛省としてまとめて、概算要求するわけなんですけれども、防衛省というのは陸海空自衛隊をはじめ、かなり大きな組織で、予算も多額になりますので、実はこれすごく大変な作業なんです。概算要求を行った後は、財務省とのすごく厳しいやりとりが始まるんです。これは、年末に政府の予算案ということになるわけなんですけれども、それまでの数ヶ月間というのは、担当者は昼夜も分かたず財務省に説明を行うということになっています。なにしろ、少しでも必要性に疑問符がつくと、その事業はすぐに切られてしまいますから、担当者は必死なんです。年末に政府の予算案が出来上がると、次は年明け早々から、国会での予算審議です。予算委員会での審議というのは国会の花形ですから、議員の皆さん力がすごく入るんです。政府側もそれだけ準備をきっちりやっておかなければならないということなんです。そして、予算が成立した頃には、次の年度の予算に向けた議論がもう佳境に入っているということで、予算担当者というのは一年中大変なんです。


パ−ソナリティ−:

なるほど。では、その概算要求の内容についても伺いたいと思います。


中村局長:

 先ほど申し上げました通り、今現在要求している内容というのは、今後財務省とのやりとりですとか、国会での議論を経ないと最終的には予算化されないというわけなんですけれども、今現在の要求の内容をお話したいと思います。まず、今年の特殊事情として、年末までに防衛計画の大綱というものの見直しが行われているんですけれども、それに向けての検討のなかで、日本の南西地域をはじめとする防衛の体制を強化するための重要課題がいくつか指摘されています。概算要求の内容というのもこれらを反映したものになってるんです。項目でいいますと、警戒監視能力の強化ですとか、島嶼部、離島ということなんですけれども、これに対する攻撃、弾道ミサイル攻撃ですとか、ゲリラ特殊部隊、サイバー攻撃、大規模災害といったようなさまざまな事態への対応、これらの基盤となる統合の強化、情報機能の強化、宇宙空間の利用の推進といったようなものが課題になっているんです。こうしたように、来年度の概算要求は、日本を取り巻く現在の安全保障環境に対応するためのこうした課題に応えていくことを主眼としたものなんです。


パ−ソナリティ−:

なるほど。日本の周辺では中国の軍隊がいろいろな動きをしたり、北朝鮮も弾道ミサイルを発射したりして、確かにそういったことに対応するための予算の案になっているんです。


中村局長:

はい。その通りなんです。では、報道されていたものなどを、具体的な中身をみていくことにしてみたいと思います。まずは、グローバルホークという、これはアメリカの無人偵察機なんですけども、これを導入するんじゃないかというような記事がありましたけれども、実は、概算要求のなかにはグローバルホークを代表とする高高度滞在型無人機、簡単に言ってしまうと、普通の飛行機よりも高いところを長時間飛んで情報収集を行う無人の航空機というものなんですけれども、その性能の検討を行う経費を盛り込んでいるんです。先ほど申し上げた課題のうち、これは警戒監視能力を強化するための施策なんですけれども、具体的に航空機を取得するための経費は再来年度予算を目指すということになるようです。また、自衛隊に海兵隊的な機能を持たせるという報道もありました。これは水陸両用機能の整備として、島嶼部に対する攻撃への対応の一環と考えているものなんです。実は、日本のように離島の多い国というのは、水陸両用作戦を専門とする部隊を有しているケースが多いんですけれども、今後、陸上自衛隊にこの機能を持たせようとしているんです。概算要求のなかには、仮称なんですけれども、水陸両用準備隊の編成ですとか、専門的な教育訓練を行うための基盤を整備するですとか、既存の自衛艦、これは船のほうの自衛艦ですけれども、これに水陸両用機能を追加するための経費といったものを盛り込んでいます。弾道ミサイル防衛の関係では、従来から行っている迎撃ミサイルの日米共同開発の推進ですとか、イージス艦にミサイル防衛能力を追加するための改修、既存のレーダーサイトの弾道ミサイル防衛の換装改修を引き続き行うといったほかに、防衛省のある市ヶ谷、ここに弾道ミサイル防衛用のPAC−3ミサイル部隊を展開させる基盤を作るということも検討することにしています。これまでは、部隊が展開する毎に対応していたということなんですけれども、やっぱり首都の防空は非常に重要ですから、平素から基盤を整備しておけば、いざというときの展開もスムーズになるというようなことです。それと、今年の初めに起きたアフリカのアルジェリアでの人質拘束事件、日本人10人を含む約40人が犠牲になったいたましい事件ですけれども、このような事件に自衛隊を邦人救出のためにどのように活用するのかといった点が話題になっていましたけれども、その一方で、政府としてのアフリカにおける情報収集の体制の問題も指摘されていました。今回の概算要求では、海外で情報収集などを行う防衛駐在官について、アフリカでの派遣国の増加ですとか、アフリカと密接な関係を有するヨーロッパ主要国への派遣の増員というものを行うほかに、関係する情報をさらに活用する体制を整備するということを計画しています。以上は概算要求の内容のほんの一部なんです。防衛省のホームページには予算関連のページを設けてありますので、その中に今回の要求内容に関するパンフレットが掲出されています。写真や図を使って分かりやすいものになっていますので、ご関心のある方はご覧下さい。


パ−ソナリティ−:

はい。分かりました。いろいろなことをやろうとしているんです。ところで、予算の金額的なところもお伺いしたいと思うんですが。


中村局長:

要求している額は約4兆8200億円で、今年の予算額と比較して約3%の増となっています。ただ、中身をみてみますと、隊員の給料を中心とする人件糧食費、これが5.3%の増加。以前に契約した装備品などのつけ払いである歳出化経費、これが3.8%の増となっているんです。こうした予算というのは、原則として問答無用で支払わなければいけないお金、義務的経費といわれていますけれども、来年度はこうした経費を増やさざるを得ないという事情があります。逆に、いわゆる活動経費にあたる、一般物件費、約3%の減となってしまっているんです。国の財政状況がたいへん厳しい中なので、引き続きいろいろな工夫をしていかなければならないということだと思います。


パ−ソナリティ−:

 私たちが日常で目にしている報道、海外に関するものであったり、国内のことであったり、いろいろとありますが、こういったものもしっかりと盛り込まれて、次に繋げられているんだなというところが、この予算の中身をみて、たいへん実感いたしました。

 今日は、平成26年度の概算要求について、その中身・詳細についてお話をお伺いしてまいりました。東北防衛局の中村吉利局長にお話をお伺いしました。本日も、どうもありがとうございました。


中村局長:

 はい。こちらこそ、どうも、ありがとうございました。

 
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