自 衛 隊 百 科
(9月放送内容)



テ−マ:海兵隊の移転射撃訓練



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは、毎月1回、東北防衛局の中村吉利局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいております。局長、本日も、よろしくお願い致します。


中村局長:

 はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

先週なんですが、宮城県の西部、山形県との境にも近い、陸上自衛隊の王城寺原演習場に沖縄の海兵隊が移動して射撃訓練を実施したと聞きました。今日は、この訓練についてうかがいたいと思うんですが、まず、どうして沖縄の海兵隊が、わざわざ、東北地方に来て、訓練をしなければならなかったのかからうかがいたいと思います。


中村局長:

ご承知の通り、沖縄には在日米軍の多くが集中しているんですけれども、この訓練もさまざまな形で行われている、沖縄の基地負担の軽減策の一つなんです。もともと、この訓練は、沖縄本島の中部にありますキャンプ・ハンセンという基地で行われていたんですけれども、射撃はこの基地を横断する沖縄県道104号線をまたぐ形で行われていて、訓練の際にはこの道路は通行止めになっていたんです。このように、騒音ですとか、振動といった、射撃訓練自体に由来する問題に加えまして、沖縄の東海岸と西海岸を結ぶ重要な道路が訓練の度に閉鎖されてしまうことから、地元にはこの訓練を何とかしてほしいといった強い要望がありました。これを受けまして、日米間で協議をした結果、平成8年の年末に両国の外務・防衛担当の大臣レベルでこの訓練を日本の本土へ移転するということが合意されたんです。この合意に基づいて、平成9年度から本土にある5つの自衛隊の演習場において、周辺自治体の了解も得た上で、訓練を実施しているんです。この5つの演習場のうちの1つが王城寺原演習場というわけなんです。


パ−ソナリティ−:

なるほど。基地負担の軽減策というのは知らなかったですが、日本全体で東北地方も沖縄の基地の負担を軽くするのに貢献しているんです。


中村局長:
 その通りなんです。基地負担の軽減という意味では、その他、東北地方では青森県の三沢基地で、沖縄に所在する米軍航空機の訓練が行われることもあるんです。でも、よく言われていることですけれども、沖縄県には在日米軍施設の約74%が集中して、県の面積の10パーセント、沖縄本島については約18パーセントを在日米軍施設が占めているということになっているんです。このように、沖縄の基地負担の軽減にはいろいろな形で継続的に取り組んでいかなければいけないというように考えています。


パ−ソナリティ−:

 そうですね。では、王城寺原演習場での訓練の話をうかがってまいりたいと思うんですが、同様の訓練が今年2月にも行われていたようですが、この訓練はどのくらいの頻度で行われているんでしょうか。そして、また、どのような部隊が、どのような訓練を実施したんでしょうか。


中村局長:

 各年度、先ほど申し上げた5つの演習場のうちの4箇所でこの訓練は実施をされています。王城寺原演習場については、平成9年度以降、今回で11回目ということになります。ご指摘の通り、今年2月にも訓練をやっているんですけども、この訓練は年度で言うと平成24年度ということになるんですけれども、いずれにしましても、短期間で2回の訓練をお願いせざるを得なかったというのは、申し訳なかったことだなと思ってます。訓練を行う部隊なんですけれども、沖縄に所在する第12海兵連隊から中隊レベルの部隊がやって来ます。中隊レベルといっても分かりにくいと思いますけれども、今回の部隊の規模ですと、人員が約250人、車両が約60両、155ミリのりゅう弾砲が6門という形でした。この部隊が先月下旬に順次移動してきて、各種の準備を行ったうえで、今月初旬に6日間射撃訓練を行ったんです。訓練の中心は、先ほど申し上げた155ミリりゅう弾砲の実弾射撃です。りゅう弾といいますと、簡単に言ってしまうと、大砲の弾のなかに火薬が詰められていて、着弾したときなどに爆発をするといったものを、りゅう弾と言っています。155ミリは大砲の大きさ、口径と言っていますけれども、これは弾の直径と同じというように考えていいかと思います。この、155ミリのりゅう弾砲というもの、形は違うんですけれども、陸上自衛隊も装備をしていて、現在の陸上戦闘における火砲の代表的な装備の一つといっていいと思います。実は、在日米軍で陸上戦闘能力を有しているというのは、沖縄の海兵隊だけでして、こうした訓練を実施をして、部隊の能力を維持・向上させるということは、先に申し上げた、沖縄の負担軽減のみならず日本の防衛全体にとっても有意義なことだというように考えています。


パ−ソナリティ−:

 なるほど。訓練の内容や意味については理解しましたが、射撃に伴って騒音や振動が出ていますし、万が一の事故という不安もあります。


中村局長:

 はい。おっしゃる通りです。それだけに、周辺の自治体の方々は苦渋の決断ということで、この訓練を受け入れて頂いているということなんだと思います。この点、改めて、感謝を申し上げたいと思います。他方で、国のほうも、関係自治体からの要望等を考慮して、前後の移動の期間も含めまして、訓練の安全な実施について米軍と調整することはもとより、地元の懸念に配慮して、例えば、米軍人が外出するときには職員の同行を行うというようなこともやっているんです。また、演習場周辺の自治体ですとか、住民の方々に対しては、日頃から様々な施策を実施してきています。例えば、騒音振動に関しては一定値以上を示すエリアを指定して、その中にある住宅などについて、振動も考慮した防音工事を実施をしてきました。現在は、工事を希望するお宅はすべて完了しているというような状況です。また、演習場の周辺では大型の車両の通行によって道路が傷ついたりとか、訓練に伴って土砂が演習場から周辺の川に流れ込んだりということも起きますので、道路ですとか河川の改修への補助も行っています。補助という面では、万が一の事故が起きたときなどのための防災無線ですとか、消防の施設、さらには公園ですとかコミュニティーの教養施設などにも補助金を出しているんです。さらに、王城寺原演習場周辺の自治体には2種類の交付金も出しています。1つは砲撃が行われる演習場であることに伴うもので、もう1つは、まさに、海兵隊の移転訓練を受け入れていただいていることに伴うものなんです。こうした交付金は、一定の縛りはあるんですけれども、自治体独自の様々な施策に利用することが可能になっているんです。とは言いましても、安全という面では、実際射撃を行う部隊が事故無く、所定の訓練を終えてくれるということが最も重要なんです。特に、今回の王城寺原演習場での訓練の場合、直前の北海道での訓練で演習場の外への着弾という事故があったんです。そういった意味で、アメリカ側は様々な再発防止策を講じて、今回の訓練実施に際しても安全措置を徹底してきました。


パ−ソナリティ−:

 北海道の訓練ということなんですが、演習場の外に弾が飛び出すというのは、とても怖いです。山形県まで飛んでくるということ、あり得たわけなんです。でも、大きな事故がなく訓練が終わって、ホッとしているんではないでしょうか。


中村局長:

 はい。もともと、演習場の外への着弾などあってはならないことですし、北本さんおっしゃいましたけども、山形県まで飛んでくるなんてことはあり得ませんので、ご安心ください。


パ−ソナリティ−:

 はい。


中村局長:

訓練が無事終わって、ホッとしているかと言われれば、正直なところ、そうです。そのなかにあって、山形県の第6師団には訓練の安全かつ円滑な実施のために、いろいろな面でご支援を頂きました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。ところで、どうしてもこうした訓練の場合には事故とか騒音とかといったような面に目が行きがちなんですけれども、実は、海兵隊は訓練終了後に毎回様々なボランティア活動を演習場周辺で実施をしているんです。例えば、老人ホームへ行って掃除ですとか草むしりをしたり、恵まれない子供たちにおもちゃをプレゼントしたりして、その際に歌とかゲームといったような交流会も実施をしているんです。今回も障害者の方ですとか子供たちとの交流会を行ったというようなことです。


パ−ソナリティ−:
 それは、知りませんでした。海兵隊の皆さんって何だか怖いイメージがあるんですが、意外な面があるんです。今日は、ありがとうございました。

中村局長:

こちらこそ、どうもありがとうございました。


パ−ソナリティ−:
 以上、本日の自衛隊百科のコーナーも、東北防衛局の中村吉利局長にお話をおうかがいしました。自衛隊百科のコーナーでした。インタビュアーは北本沙希がお送りしました。


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