自 衛 隊 百 科
(8月放送内容)



テ−マ:防衛白書の豆知識



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは、毎月1回、東北防衛局の中村吉利局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいております。局長、本日も、よろしくお願い致します。


中村局長:

 はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

本日は、先月発表されました、今年の防衛白書についておうかがいしたいと思います。本題に入る前に、各省庁の作っているこうした毎年の文書を、なぜ白書と言うんでしょうか。


中村局長:

はい。よく言われているのは、イギリス議会への報告書であるホワイトペーパーから来ているというものなんです。ただし、イギリスのホワイトペーパーというものは、政府の政策を必要の都度、議会ですとか国民に示すという位置づけなんです。よくあるのが、政権が交代したときに新しい政府として政策を示すというために、発表されるものなんです。このため、イギリスのホワイトペーパーと、年次報告書的な日本の白書とはちょっと性格が違います。イギリスのほうは中身のイメージとしては、日本でいうと防衛計画の大綱みたいな感じになると思います。もっとも、最近では英語のホワイトペーパーというとマーケティングのツールとして用いられるということが多いようです。ところで、今、各省庁の作っている白書と申しましたけれども、一体どのくらいの数出ているのかご存じですか。


パ−ソナリティ−:

いくつくらいなんでしょうか。30くらいでしょうか。


中村局長:
 いい線だったですね。首相官邸のホームページにまとめているところがあるんですけれども、これをみると40くらいあるような感じなんです。40あるなかの防衛白書は一つなんですけれども、どうもやっぱり、他の省庁の白書とはちょっと違った役割があるように、防衛白書は感じているんです。まず、国の防衛というものは、もちろん防衛省・自衛隊の任務ということになっているんですけれども、やっぱり、国民の皆さんの理解と協力なしには達成できないというものなんです。そのため、日頃から自衛隊の活動ですとか、防衛政策ですとか、その背景にある安全保障環境なりを国民の皆さんにも、よく理解してもらうという必要があります。防衛白書はその重要なツールの一つになっているわけなんです。ということもありまして、防衛省では毎年すべての都道府県と市町村などに対して、白書の説明を行っているんです。東北地方での、私を含めまして、東北防衛局で自衛隊の部隊ですとか各県の自衛隊地方協力本部とも協力して、東北六県のすべての自治体の説明にまわっているところなんです。次に、防衛白書が他の省庁の白書と違う2点目なんですけれども、外国との関係で日本の防衛政策ですとか、防衛力に関する透明性を高めて、信頼関係を構築するという役割があるという点が違っています。このためもあって、資料編も含めて、毎年詳細な内容を公表しているんです。私の感じるところ、防衛に関してこれほどの内容のある白書、報告書を毎年発行している国というのは少ないと思います。また、諸外国のなかには、日本の防衛白書をモデルにして年次報告書を作っている国もあるというように聞いています。


パ−ソナリティ−:

 なるほど。それにしても、これだけボリュームのある文章を毎年作るというのは大変です。


中村局長:

 はい。役所のなかには既存の組織が通常業務の傍ら白書を作っているというところもあると思います。しかし、防衛省では白書のためのプロジェクトチームを毎年立ち上げているんです。このチームは、いわゆる、背広組の補佐クラスをとりまとめ役としまして、陸海空の幹部自衛官それぞれ1名を中核とする6名ほどの組織なんですけれども、だいたい冬に立ち上がって、毎年夏の刊行まで約半年、白書の作成に専念します。このプロジェクトチーム方式の良いところと言いますと、自分たちの白書だという意識が生まれて、国民の皆さんにとって読みやすいものにするために、いろいろ工夫をして、さらには、それぞれの内容を担当している部署との間で、できるだけ分かりやすくするよう、バトルするというところだと思います。実は、私、だいぶ前の白書のとりまとめ役をやったことがあるんですけれども、そのときに、例えば、全体の構成をどうするかとか、目玉的な内容をどんなものにするかとかいったようなところから、細かいところでは文章のてにをはですとか、図表の色使いといったようなところまで、夜遅くまで議論したような記憶があります。また、担当課との間で、こんな書き方じゃ分かってもらえないじゃないかというような論争をしたという記憶もあります。


パ−ソナリティ−:

 裏話を聞くと、今手元にある白書の見方がちょっと変わってくるような気がします。それでは、今年の白書について、特徴的なところをうかがいたいと思います。


中村局長:

  はい。まず、私の考える今年の白書の内容面でのポイントをご紹介したいと思います。第1部の「わが国を取り巻く安全保障環境」ですけれども、ここでは、北朝鮮によるミサイル発射ですとか核実験を含む挑発行為、わが国周辺海空域における中国の活動の活発化・拡大化、ロシアの軍事活動の活発化といったような面から、わが国周辺の安全保障環境については、昨年の今なお不透明・不確実な要素が残されているとしていたものを、今年は一層厳しさを増しているというように評価をしています。これを背景としまして、小野寺防衛大臣の巻頭言にも示されている通り、「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜く」という言葉が今年の白書のキーワードになっているように思います。その一つの表れが、去年は「自衛隊の運用」としていた章のタイトルを、今年は「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守る体制」に変更して、内容も充実をさせているということです。また、去年は「第3部 わが国の防衛に関する諸施策」の一つとして記述されていた日米安保体制の強化を、第2部のわが国の防衛政策と日米安保体制で記述をしています。場所を変えたというだけじゃなくて、内容も充実をさせているんです。さらに、防衛装備基盤の維持・強化等に関する章を新たに作っているというのも、今年のポイントになるんじゃないかと思います。続いて、内容以外の特徴について2つほどご紹介をしたいと思います。まず、コラムが去年の36個から、今年は50個に増えているということです。コラムには、解説とQA、ボイスと3種類あるんですけれども、これらを読むだけで防衛の今というものがかなり理解できるんじゃないかなと思います。2つ目は、従来の電子書籍版に加えて、今年はスマートフォン用にダイジェスト版もご用意をしているということです。スマートフォンですので、ちょっとした空き時間にでもご覧いただければと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい。分かりました。500ページ近い本なんですが、これは読む方にとって、いろいろな読み方ができそうです。


中村局長:

 ええ、そうです。もう一つご紹介をしておきますと、今年の白書は39回目のものになります。最初は昭和45年で、少し空いて昭和51年以降は毎年発行されているんですけれども、防衛省のホームページではこれらすべての白書を閲覧することができます。最新のものだけではなくて、昔の白書を紐解いてみるということも面白いんじゃないかなと思います。あと、私としては、読むというある種覚悟が必要な行為です。これは。そういったことではなくて、パラパラと眺めて頂くということだけでもいいんじゃないかなと思っています。


パ−ソナリティ−:

 なるほど。こう気になった部分とか、興味のある部分を、こう気になったときに読む。そうこうしているうちに、防衛に対する理解が多少なりとも深まってくるということです。


中村局長:

はい。その通りです。


パ−ソナリティ−:
 はい。さて、本日の自衛隊百科のコーナーは、『防衛白書の豆知識』と題してお話をおうかがいしました。東北防衛局の中村吉利局長からお話をおうかがいしました。今回も、どうもありがとうございました。

中村局長:

はい。こちらこそ、どうもありがとうございました。


パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーでした。インタビュアーは北本沙希がお送りしました。



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