防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(8月放送内容)



テ−マ:防衛白書のポイント


パ−ソナリティ−:

防衛省東北防衛局が送る、日本の防衛Q&A。このコーナーでは、防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をいただきます。局長、本日もよろしくお願い致します。


中村局長:

はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

 では、先月の初旬、防衛省は今年の防衛白書を発表しましたが、今日はそのポイントを、局長からうかがいたいと思います。


中村局長:

はい。


パ−ソナリティ−:

まずは、防衛白書に関する報道では、中国に対する見方が厳しくなったことが多く取り上げられていましたが、こちらはどうなんでしょうか。


中村局長:

はい。いまのご指摘は、たぶん、今年の白書本文30ページのことだと思います。ちょっと長いんですけれども、そのまま引用しますと、「中国はわが国を含む周辺諸国との利害が対立する問題がめぐって、既存の国際法秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを含む、高圧的とも指摘される対応をしており、その中には不測の事態を招きかねない危険な行動もみられる」という部分です。この既存の国際法秩序とは相容れない独自の主張の例としては、いうまでもなく、日本の領土である尖閣諸島について自らの領有権を主張しているという点です。高圧的とも指摘される対応は、昨年の白書にも用いられた言葉なんですけれども、アメリカの政策文書ですとか報告書で用いられているアサーティブという単語に示されている国際社会の懸念を表現したものです。中国については、ご承知の通り、カイカンといったような船が尖閣諸島周辺の領海に頻繁に侵入していますし、去年の12月には中国の航空機としては初めての領空侵犯が発生してます。このように、中国は海・空域における活動を活発化させているんですけれども、そのなかで今年の1月には自衛隊に対してかきかんせいようのレーダーを照射するといったような事案も起こっています。 防衛白書ではこうした事実関係ですとか、国際社会の反応なども分析して、その時々の記述を行っているんです。


パ−ソナリティ−:

はい。確かに中国については、私たちでも心配になる動きがありますけれども、もっと心配なのが、白書の書いているような不測な事態を招きかねない危険な行動が起きて、それがもっと大変なことになってしまわないかということです。


中村局長:

はい。これは、自衛隊に限らずということだと思いますけれども、現場にいる人たちは中国の行動に対して、毅然として守るべきものは守るという一方で、事態をエスカレートする口実をこちらから与えることがないように対応していかなければいけません。本当に大変だと思います。また、おっしゃる通り、現場でのちょっとした出来事が大きな問題に発展してしまう可能性も否定できません。このため、防衛省は、すでに多くの国との間で構築してるんですけれども、海上で何か起こったときの連絡のメカニズム、これを中国とも構築することが急務だと考えていて、いろいろな働きかけを行っているんです。そのあたり、白書の中でも日中の防衛交流・協力の部分に記述されています。


パ−ソナリティ−:

はい。お隣どうしなのですから、お互いによく話をして理解をするというのがすごく重要だと思います。その他のポイントはどんなものがあるんでしょうか。


中村局長:

はい。いま申し上げた中国の動きのほか、日本の周辺では、例えば、北朝鮮のミサイル発射ですとか核実験といったような挑発的な行為、ロシアも軍事活動を活発化させていますし、また、領土問題が不透明・不確実な要素が残されているというようなこと、さらには、多くの国が軍事力の近代化を継続しているといったようなことから、わが国周辺の安全保障環境は一層厳しさを増していると、新たに評価をしています。こうしたなかで、今年の白書では小野寺大臣の巻頭言にも示されている、「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜く」という言葉がキーワードになっているように感じます。一つの例としては、昨年の白書では「自衛隊の運用」としていた章のタイトルを「国民の生命・財産と領土・領海・領空を守る体制」に変更して内容も充実させているんです。


パ−ソナリティ−:

 はい。東北地方には、自衛隊の運用というと、最初にイメージするのはやはり災害での救援活動という方も多いと思うんですけれども、それは、どこに書かれているんでしょうか。


中村局長:

はい。災害派遣も、やっぱり、国民の生命・財産を守るためのとても重要な活動ですから、今申し上げた章のなかで主に取り上げられています。ただし、東日本大震災の発生した一昨年の白書が記述の対象の期間中に、災害派遣が継続していた去年の白書、これらに比較すると今年の白書は東日本大震災関連の記述というのは簡潔になっています。これは、今年の白書が原則として去年の7月から今年の5月下旬までを対象としているためであって、災害派遣の重要性が低くなったというわけでは、決してありません。では、白書のポイントのほうに戻りたいと思います。日米安保体制が日本の防衛の柱の一つであることは言うまでもないと思いますけれども、去年の白書では「第3部 わが国の防衛に関する諸施策」の一つとして記述されていた日米安保体制の強化を、その重要性を踏まえまして、第2部のわが国の防衛政策と日米安保体制で記述をしています。場所を変えただけではなくて、今年2月の日米首脳会談をコラムで紹介したり、オスプレイの沖縄配備などに関する記述といったようなところも充実をさせているんです。また、今年の白書では国家安全保障会議、いわゆる日本版NSCといわれているものなんですけれども、その創設に関する法律の内容ですとか、防衛計画の大綱の見直しについての検討状況、防衛省改革に関する議論など、今後、防衛に関して国会などで議論されることが見込まれている内容も盛り込んでいるんです。こういったところに目を通しておいてもらうと、これからの議論の背景を理解するうえで役に立つんじゃないかと思います。他にも、ちょっと時間の関係があるんで、詳しくは申し上げませんけれども、サイバー攻撃に関する体制の充実ですとか、アルジェリアの事件を受けた在外邦人の輸送に関する輸送手段の追加ですとか対象の拡大、装備品の生産技術基盤の維持・強化といったような重要な点があります。

パ−ソナリティ−:

 今年も盛りだくさんの白書です

中村局長:
  はい。実は、全体のページ数は1割ほど減ってはいるんですけども、図表ですとかコラムをさらに充実をさせて、分かりやすさを工夫しているんです。特にコラムは、去年の36個から50個に増やしまして、なかには三沢基地に勤務するE−2C搭乗員のコメントですとか、ブルーインパルスの松島基地帰還、さらにはドラマー空飛ぶ広報室への協力、ロンドンオリンピックでの隊員の活躍に関するコラムといったものもあります。とはいっても、全体はかなりの分量なので、今年は例年同様の電子書籍版に加えまして、その後、本用にダイジェスト版というのも用意をしているんです。ダイジェストといっても、内容は結構充実していますんで、これをごらんいただくだけで今年の白書の骨格部分は押さえることはできるんじゃないかと思います。そのうえで本文を見ていただけると非常にいいかと思います。
 
パ−ソナリティ−:
 はい。確かにスマートフォンだと、ちょっと時間があるときに見ることができます。今日は、ありがとうございました。 
 
中村局長:
  はい。どうも、ありがとうございました。
 
 パ−ソナリティ−:
  以上、防衛省・東北防衛局が送る日本の防衛QA。本日も東北防衛局の中村吉利局長にお話をいただきました。
 
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