自 衛 隊 百 科
(6月放送内容)



テ−マ:自衛隊とはA 自衛隊のモノ



パ−ソナリティ−:

自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは、毎月1回、東北防衛局の中村吉利局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいています。局長、本日も、どうぞよろしくお願いします。


中村局長:

 はい。よろしくお願いします。


パ−ソナリティ−:

では、早速ですが、今日ですね、これまで自衛隊の組織とヒトについてお話をうかがいしてきたんですが、今日はヒト・モノ・カネシリーズのうちのモノについてお話をうかがいしたいと思います。


中村局長:

はい。自衛隊のモノというと、装備品ですよね。本題に入る前に、ちょっと、質問したいと思います。他の国の軍隊は持ってても、自衛隊は持つことが許されない装備品があるっていうことをご存じですか?


パ−ソナリティ−:

そうなんですか。核ミサイルとかでしょうか。


中村局長:
 そんな感じですね。これまでの、国会での議論などから、もっぱら他の国の壊滅的な破壊のために用いられる兵器、例えば、大陸間弾道ミサイル、ICBMといわれているものですね、それと、長距離戦略爆撃機ですとか、攻撃型の空母というものの保有は憲法上許されないと考えられてきています。これは、日本が保有できる実力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならないとされていて、今、挙げたような兵器はこうした限度を超えていると考えられているためです。では、本題に戻りたいと思います。装備品と簡単に言っても、これこそ無数にあるので、今日は陸海空自衛隊で最近話題になった装備品、それぞれ1つについてお話していきたいと思います。キーワードは、メイドインジャパン、国産です。国産のメリットは、いくつかあるんですけれども、やはり、いざというときの修理ですとか、部品の提供、さらには、追加的な生産がやりやすいということが大きいと思います。それと、日本人に合ったものを開発できること、また、装備品用に開発した技術を、いわゆる、民生品にも転用できるということも、挙げておかなければならないと思います。それでは、まず、陸上自衛隊です。陸といえば、やっぱり、戦車ですよね。陸上自衛隊は、現在、74式、90式、10式といわれる3種類の戦車を保有してるんですけれども、この○○式の意味って分かります?


パ−ソナリティ−:

 いろいろと、この自衛隊の方から戦車の○○式というのはうかがいするんですが、漠然としか考えてなかったので、今、一生懸命考えているんですけれども、強さとか、この機敏性というんでしょうか、機動性なのかなぁと思ったんですが、いかがでしょうか。


中村局長:

 強さというのは、そうかもしれないですね。実は、これは、他の装備品というのも同じなんですけれども、その装備品が正式化された年。ちょっと、難しい言葉なんで、簡単に言いますと、開発から試作品を経まして、そのモノが自衛隊の装備品のリストに載った年を示しているんです。従って、いまの戦車は、それぞれ、1974年、1990年、2009年12月に、それぞれ正式化されているというものなんです。74式戦車の前は61式だったのでこの4代、61、74、90、10というのを並べてみると、あいだが13年、16年、20年とだんだん長くなってきてるんです。これは、ある型式の戦車はより長く使われるようになってきているということですね。こうした、戦車なんですけれども、いまの防衛計画の大綱では、400両を保有することになっています。一方、昭和51年、1976年に作られた最初の防衛計画の大綱のときには、1200両を保有していたので、比較すると3分の1になってしまっているんです。今後を担う、最新鋭の10式戦車なんですけれども、それだけに、優れものになっているということなんです。特筆すべきことは、最新のCFORI、これは、指揮、統制、通信、コンピュータ、情報システムの頭文字をとったものなんですけれども、ここに優れた能力を備えています。どんなことができるかと言いますと、戦車の中のモニターで味方の故障の状況ですとか、残っている燃料までも、リアルタイムで把握できて、また、複数の目標を自動的に追尾したり、敵のもっとも弱い部分に照準を合わせたりということもできるようなんです。さらに、富士総合火力演習というのをやっているんですけれども、ここでも披露されたスラロームといわれるもの、蛇行走行しながら射撃をできる機能なんですけれども、これは世界中で10式だけができることといわれています。


パ−ソナリティ−:

 すごいものなんですね。最近、アニメでも戦車を使ったアニメというのが流行ったんですけれども、そういったもん、ちょっと見ていたこともあって、確かに、すごいなぁと実感しました。


中村局長:

 はい。現物もマンガくらいにすごくなっていることだと思います。この10式なんですけれども、ほぼ純国産になっています。例えば、もっとも重要な部品の1つである主砲、大砲ですよね、90式はドイツ製だったんですけれども、10式は国産になっています。また、10式で開発された技術は、例えば、ハイブリッド車のエンジンですとか、月の月面周回衛星「かぐや」にも転用されてもいます。次は、海上自衛隊にいきたいと思います。海上自衛隊というと、どうしても船なんですけれども、最近、初の国産哨戒機P−1が配備をされたので、そちらを紹介したいと思います。海上自衛隊は、アメリカ生まれのP−3C哨戒機を使用してきているんですけれども、P1はその後継となる飛行機なんです。2001年以降、防衛省の技術研究本部とメーカーが開発を進めてきていて、この3月に神奈川県の厚木基地に配備されています。P−1の開発は、実は、航空自衛隊の次期輸送機と同時に行われていまして、この2つの飛行機に共有部分を持たせるようになっています。当然のことながら、全く別々に開発するよりも、開発費用がかなり削減されているということなんです。こういったP−1なんですけれども、今後、乗員の訓練と運用試験を行って、2年後には日本周辺の海の警戒監視任務に就くという予定です。


パ−ソナリティ−:

 海上自衛隊のこのP−1と、航空自衛隊の次期輸送機と同じパーツというんでしょうか、使っているというのは、すごいですね。国産ならではの話ですね。それでは、局長、日本の周辺海域では、特に、南西諸島を中心にいろいろな事件が、今、起きておりますし、海の監視活動というのは益々重要になってきていると思うんですけれども。


中村局長:

 はい。おっしゃる通りですよね。今使っているP−3Cも、まだまだ優れた哨戒機なんですけれども、それと比較しても、P−1は、例えば、敵の潜水艦などの探知識別能力が格段に向上していますし、飛行性能ですとか通信能力もアップしています。また、省エネ低騒音という面でも、時代に合った飛行機なんですね。


パ−ソナリティ−:

 この、優れた飛行機も国産なんですね。


中村局長:

はい。そういうことなんです。最後、航空自衛隊にいきたいと思います。また、飛行機になってしまうんですけれども、今年の予算ではF−35戦闘機2機の予算が認められています。昨年の予算にも4機分が盛り込まれていたんですけれども、こちらの完成した飛行機を輸入するということを前提としていました。これに対しまして、25年度予算の2機は国内の企業も製造に参加した機体を取得する予定になっています。F−35は全体で42機を取得する予定になっていますので、残りの分も国内企業が参加したという機体になってくるはずだと思います。ご承知の通り、F−35は第5世代といわれる、レーダーに映りにくいステルス性能と多様な情報収集能力を有する飛行機なんですけれども、これまでは、アメリカを中心とする9か国による共同開発でした。このような、国際共同開発は最近の流行りなんですけれども、背景には、資金面ですとか、技術面で、一国だけでハイテクの塊のような戦闘機を一から開発することは、なかなか難しいというような事情があるようなんです。ここに、日本の企業が参加すると、国内で機体の最終組み立てですとか、検査を行うほか、一部の部品製造なども行う予定になっています。と言っても、やはり、国産のものと比べると、いざという時に部品は提供されるんだろうか、修理はしてもらえるんだろうかというような不安はありますよね。でも、F−35については、アメリカの一元的な管理のもとで、すべてのユーザー国のあいだで部品を融通しあうような枠組みができているんです。これによって、部品がプールされて、必要なときには速やかにここから補給修理を受けるということができるようになっていまして、同時に、これによって、コストの削減にもなっているというわけなんです。


パ−ソナリティ−:
 いろいろな工夫が行われているんですね。

中村局長:

はい。


パ−ソナリティ−:

今日は、たくさんある自衛隊の装備品、そのうちの3つだけでしたが、それぞれ、様々な背景があることが分かりました。局長、どうもありがとうございました。


中村局長:

はい。どうもありがとうございました。


パ−ソナリティ−:

以上、自衛隊百科のコーナーでした。インタビュアーは北本紗希がお送りしました。

 


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