防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(4月放送内容)



テ−マ:東日本大震災における教訓と課題C
      釜石の奇跡:防災教育の重要性

パ−ソナリティ−:

本日は、前回に引き続き、平成23年3月11日の東日本大震災時、岩手県の災害対策本部支援室において、指揮統括の中心的役割を果たされ、また、その際の体験をもとにした、「東日本大震災津波岩手県防災危機管理監の150日」の著者でもあります、岩手県防災危機管理監の越野修三さんをお迎えして、東日本大震災における教訓と課題をテーマとした、東北防衛局中村吉利局長との対談をお送りします。それでは、越野防災危機管理監、そして、中村局長よろしくお願いします。


中村局長:

はい。前回は、津波からの住民避難における課題と教訓についてうかがいました。一方で、岩手県の釜石市では、市内の小中学生約3000人のほぼ全員が避難して、津波被害を免れた「釜石の奇跡」というものが知られています。この、「釜石の奇跡」については、NHKの番組にもなっていますし、以前仙台市で行われた国際会議、「防災と開発に関する仙台会合」でも紹介され、国際的にも認知されてきています。言ってみれば、普段からの地道な防災教育が奇跡を起こしたということかと思いますけれども、そのあたりの取り組みからお話しをいただけますでしょうか。


越野防災危機管理監:

 はい。今、おっしゃったように、釜石市だけではなくて、岩手県では学校管理下にあった児童生徒これは一人も亡くなっていません。まさに、教育の成果といってもいいと思っています。釜石市をはじめとして、沿岸市町村の小中学校では、防災教育に力を入れてきました。先生方にも、津波教育ができるように、岩手大学と共同で教育用DVDを県で作成をしまして、先生方にも研修会を開いたり、そういう取り組みを行ってきておりました。釜石市のように、普段から「想定にとらわれるな」、あるいは、「最善を尽くせ」、それから、「率先避難者たれ」というようなことを教えられて、訓練していましたから、子供たちはいつもの訓練通りに行動して、一人の犠牲者も出さなかったと、こういうことだと思います。やはり、普段からの訓練あるいは教育、これは、とっさの場合にも行動になって表れるということを、今回の震災で得た教訓の一つです。


中村局長:

はい。本当に、平素からの準備というのは重要だと思いました。一方で、当然のことながら、住民の避難に関しては教育と住民の自助努力だけでは不十分であろうと思います。岩手県として、住民に避難が効果的に行われるための様々な努力を教育のほかにも行ってきたんだろうと思いますけれども、行政は実際どのような取り組みを行ってきたのでしょうか、また、今後どのような施策を実施しようとしているのでしょうか、といったあたりをうかがいたいと思います。


越野防災危機管理監:

今回の震災の教訓を踏まえて、行政として取り組まなければいけないということはたくさんあります。その中で、まず、避難行動を促すための警報の内容とか、それから、伝達の方法とか、これで良かったんだろうかというような反省があります。ですから、もうちょっと、例えば、命令口調で言うとか、そういう工夫が必要だと思っております。それから、防災教育も学校だけではなくて住民と一体となった教育でないと、なかなか、この大人の意識が変わらない。そういう側面がありますので、もっと住民の、特に若い人たちの教育が非常に大事だなぁというふうに思っています。それと、避難所の整備、それから、経路これも整備する必要があると思っています。今回、避難所に避難したくないというのは、やっぱり避難所に行っても不自由な暮らしを強いられるんじゃないかなぁと、そういう危惧を持っている住民の方って結構いらっしゃったので、そういうことを払拭するように、居住環境を整備するとか、そういうことをこれからやっていきたいなぁというふうに思っています。それと、要援護者とか高齢者などの避難をどうするかというのも課題の一つで、これはまだ結論出てませんが、これも、今後しっかりと詰めていきたいなぁと思います。それと、あと、地域コミュニティー、これの強化、これが非常に大事で、地域の活性化をどうやって防災につなげるかということも、これから重要課題として経説して取り組んでいかなければいけないなぁとこういうふうに思っています。

中村局長:

はい。ありがとうございます。行政としていろいろ取り組まなければいけない事項はあるというお話だったかと思いますが、他方で、われわれ一人一人としてはどのような取り組みをすれば良いのかということをお聞かせいただけますでしょうか。


越野防災危機管理監:

はい。三陸地方には、「津波てんでんこ」という言い伝えがあるんですが、これは、肉親も構わず、各自てんでんばらばらに逃げろということなんですが、これは家族の信頼関係がなければ成り立たないんですね。すなわち、うちの子供は絶対逃げてるはずだ、あるいは、うちの両親は絶対逃げてるはずだ、こういうふうに思っていなければ迎えに行って津波の犠牲になる。実際に、今回、子供を迎えに行って、津波の犠牲になったお母さん方って結構いらっしゃいます。そういったことで、「津波てんでんこ」、これを実践するためには家族ぐるみで話し合って、訓練しておかないと、これは成り立ちません。ですから、学校教育、そういうことだけではなくて、やっぱり家族ぐるみそれから地域ぐるみ、そういったことを一緒になって訓練してということが、これから非常に大事なことだろうと、こういうふうに思っています。


中村局長:

はい。大変貴重なお話をありがとうございました。越野さんは今回の震災対応の課題と教訓について著書とされたほか、様々な形でご講演をされておられます。今年2月にはオランダで開催された危機管理関係の国際会議でスピーチをされ、大きな反響があったと聞いています。これは、東日本大震災そのものへの関心もさることながら、ここで明らかになった日本の災害対策が各国にとっても有益であるということが理解されてきたことがあずかっていると思います。日本以外でも、地震ですとか津波で被害が生じていることを考えますと、海外への情報発信も非常に重要であると思います。越野さんのますますのご活躍を期待しております。


越野防災危機管理監:
 どうもありがとうございます。

中村局長:

はい。大体お時間となりました。これまで、4回にわたりまして、岩手県防災危機管理監の越野修三さんからお話をうかがいました。越野さん、どうもありがとうございました。


越野防災危機管理監:
 どうもありがとうございました。

パ−ソナリティ−:

今回は、岩手県防災危機管理監の越野修三さんをお迎えしまして、東日本大震災における教訓と課題をテーマとした、東北防衛局中村吉利局長との対談をお送りしてまいりました。越野防災危機管理監、中村局長、どうもありがとうございました。


中村局長:
 はい。どうもありがとうございました。

越野防災危機管理監:
 ありがとうございました。
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