自 衛 隊 百 科・自衛隊インビテーション
(2月放送内容)



テ−マ:3自衛隊の特色、違い@ 四文字熟語



パ−ソナリティ−:

 局長は、防衛省の政策部門である内部部局、略して内局で長く勤務してきたと聞いています。内局の主要な業務に、陸海空各自衛隊などと調整して防衛省としての政策を決定し、さらにそれを対外的に調整して、予算化や制度化するというものがあると理解しております。局長は、前回まで制服のお話をされておりましたが、我々自衛官の間では、制服の色による仕事のやり方、文化の違いに驚かされることがあります。そんな意味で、関係省庁や政治家、自治体等との調整も大変なのでしょうけど、各自衛隊の調整にも苦労が多いのではないかと思います。


中村局長:

 そうですね。自衛隊は、防衛という国家存立の基本を任されている組織ですから、自分の仕事に誇りと強い思いがそれぞれにありますし、また、活動の場による違いも感じます。昔から、三自衛隊の特色をそれぞれ四文字熟語で示すことがありますよね。最近は以前よりも語られることが少なくなってきたように感じますし、色々とバリエーションもあるようですけれども、よく特徴を捉えているなと感じます。一般に、陸は「用意周到・動脈硬化」、これは動脈硬化が頑迷固陋になることもあるようですね。海は「伝統墨守・唯我独尊」、一致団結とか頑迷固陋もあるようです。空は「勇猛果敢・支離滅裂」ですね。勿論、人や案件によって違うので、いつでも100%合致するというわけではありませんけれども、各自衛隊の雰囲気について、言い得て妙なものがあると思います。


パ−ソナリティ−:

 なるほど私は、陸上自衛官なので「用意周到・動脈硬化」になる訳ですね(笑)局長は、どのようなところにそう言う大きな違いを感じますか?


中村局長:

 私の個人的なイメージでなんですけれど、例えば、陸上自衛隊は、どんな小さな案件でもすごく事前に詰めてくるって言うように感じます。それだけに、ちょっとしたことでも変えようとすると大変苦労することになります。やはり、大きな組織を動かすためには、周到な準備が必要で、一度決めたことを変更するのは、大変な労力が必要になる、ということなんだと思います。考えてみますと、この点は、陸上での作戦と言うのは海空に比較して時間的猶予がある一方で、最後の砦として、万全の準備で臨まなければならないという、戦闘様相に根ざしたものだというように感じます。また、これは、とある幹部の方から聞いた話なのですが、海空がオペレーションに没頭している時でも、陸上自衛官はの人は敵の行動の「意図ですとか目的」を考えていると言う傾向があるそうです。このあたりも、「最後の砦」って感じのある思考形態だと思います。


パ−ソナリティ−:

 そうですね、陸上自衛隊は大きな行事や訓練があると、確かにその為に何度も会議や訓練を何度も行って臨み、特に行事の時は必ず前日まで入念に予行を行って万全の準備を行いまので、正に用意周到です。海上自衛隊はどうでしょうか?

中村局長:
 海上自衛隊は、旧海軍のよき伝統を継承しているという自負のある故でしょうか、昔に対するこだわりが一番強いように思います。それと、一つの船の中で、苦楽はもとより、生死も共にするためでしょうか、非常に団結力が強いって感じがします。もちろん、陸空も団結はかなり強いんですけれども、やはり海上自衛隊は別格な感じがします。


パ−ソナリティ−:

 山形地方協力本部にも、海上自衛官がおりますけど一緒に作業を行っても必ず「海上自衛隊のやり方はこうだ」というこだわりはたしかにありますね・・・では、航空自衛隊はどうですか?


中村局長:

 航空自衛隊は、スクランブルに象徴されるように、取るものも取りあえず作戦を始めなければならないってケースがあるためでしょうか、すごくフットワークが良いし、判断も速くて、よく言うと融通無碍です。それと、比較的若い組織であるために、昔のことに対するこだわりが、陸海よりも薄いように感じます。
 こうして並べてみますと、陸海空それぞれの作戦速度の違い、すなわち、作戦を統制するのに、陸は「日」単位、海は「時間」単位、空は「分」単位で考えるってのが基本だそうですけれども、こう言ったことも影響している感じですよね。


パ−ソナリティ−:

 なるほど陸・海・空それぞれ個性がありますね。ところで、陸・海・空三自衛隊を統合運用する統合幕僚監部にはどんな四文字熟語がありますか?


中村局長:

 今の統幕、統合幕僚監部を示す四文字熟語について聞いたことはないのですが、かつての統合幕僚会議の時代は、「高位高官・権限皆無」とか言われていました。でも、統合幕僚監部になって、フォース・ユーザーの立場になったわけですから、「権限皆無」の方は少なくとも変更する必要がありますよね。


パ−ソナリティ−:

 そうですね。「権限絶大」とまで言いませんが、違う表現の四文字熟語が今後出てくるかも知れませんね。陸、海、空、統幕ときましたので、局長が勤務されていた内局を示す四文字熟語はあるんでしょうか?


中村局長:

 よく言われていますのが、「優柔不断・本末転倒」ってものですね。各自衛隊の方は、ある意味、プラス・イメージとマイナス・イメージの組み合わせになっていますけど、内局のは、どう考えても、どちらもマイナス・イメージですよね。


パ−ソナリティ−:

 どうしてそういうように言われているのでしょうか?


中村局長:

 それはやはり、内局の仕事に根ざしたものだと思います。省内の意見を調整して対外的に交渉した結果、さまざまな事情、例えば、過去の法律解釈でありますとか、政治的な観点、予算の問題等から、省内の決定を変更せざるを得ないことがままあるんです。となると、場合によっては「優柔不断」になってしまいますし、それがいわゆる「軍事的合理性」を損ねて、他の事情を優先すれば、「本末転倒」となるのは致し方無いんだと思います。

パ−ソナリティ−:
 なかなか、四文字熟語だけでは表せない実情もあるということですね。
 ところで、私は陸上自衛官なんですけれども、日常勤務していまして、他の海・空自衛隊と、ちょっとした規則とか、ものの言い方とか、所作などで違いを感じることがありまして、結構、新鮮な思いをすることがあるんですけれども、局長はいかがでしょうか?

中村局長:
 そうですよね。そういう個々の違いってものも、それぞれの自衛隊の任務ですとか歴史の違いなどに根ざしているようで、まとめてみると面白いかも知れませんよね。
パ−ソナリティ−:
 そうですね。つきましては次回、またお伺いしたいと思います。
 
 


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