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自 衛 隊 百 科
(5月放送内容)



テ−マ:防衛省・自衛隊の語学教育



パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越しいただいて、さまざまなお話をいただいております。
 局長、本日もよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 それでは早速ですが、本日はどういったお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、今日はですね、防衛省・自衛隊の語学教育について、話したいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、お願いいたします。

増田局長:
 防衛省・自衛隊が担う安全保障という仕事は、元来インターナショナルな性格を持っているわけでありまして、必然的に外国語の知識を必要とされる仕事が多々あります。従いまして、防衛省・自衛隊では語学のですね、専門家を採用いたしますし、部内でもですね、語学教育を盛んに行っております。また、留学生もですね、多数外国に送り出しております。


パ−ソナリティ−:

 最近ではどういった場面でこういった方々が必要とされたんでしょうか。


増田局長:

 そうですね、たとえば、先の東日本大震災では、初めて予備自衛官の招集が行われましたけれども、特に語学専門家の需要がありまして、そういった特技のある予備自衛官が招集されました。東日本大震災では、色々な国の軍隊等がですね、緊急援助隊として派遣されてきたわけですが、アメリカ軍はその中でもですね、トモダチ作戦ということで2万人規模の支援をしてくれたわけですね。それでこれらの国々とですね、オペレーション上の様々な調整が行われる際にですね、外国語が必要となったわけです。仙台駐屯地のですね、災統合派遣部隊の司令部、ここにですね、日米調整所というのが置かれていましたけれども、ここでもまさに英語によってですね、こういった業務が行われたわけです。


パ−ソナリティ−:

  はい、さまざまな国の方々の協力があったんですけれども、連携した業務の中でやっぱりこういった専門家の方が大変重要な役割を担っていたんですね。


増田局長:

 はい、語学専門職の採用に関しまして、ちょっと脇にそれるかもしれませんけれども、事務官等の採用試験の話をちょっとしておきたいと思いますが、防衛省職員の採用に当たりましてはですね、昨年までは、防衛省のI種、U種、V種試験という防衛省独自のですね、試験が行われていたんですけれども、今年度からは、原則、防衛省独自の試験はやめてですね、国家公務員採用総合職試験、一般職試験といったですね、試験の合格者の中からですね、防衛省も採用するということになりました。ただ、例外的にですね、語学職と国際関係職については、防衛省独自の試験を残すということになったんですね。こういったものを残すのは、やはり防衛省とか外務省ぐらいなものでしてですね、やはり安全保障には外国語とか国際関係というのは切っても切れない関係にあるんだなあということがよく解ると思います。


パ−ソナリティ−:

 独自の試験というのは、やはり専門的な単語とかもやっぱりあると思うんですけれども、そういったものも出てくるんですか。


増田局長:

 そうですね、いろんな例えば韓国語とかですね、そんなものもあります。それで留学については、防衛省・自衛隊から毎年かなりのですね、人数が留学するもんですから、その数を聞いてちょっと驚いたことがあります。私自身も、もう20年以上昔の話になりますけれども、アメリカの公共政策大学院の修士課程にですね、防衛庁から国費留学させてもらったことがあります。私のように一般大学・大学院にですね、留学するほかにですね、国防大学とか士官学校といった軍のですね、高等教育機関に留学したりとか、あるいはその外国のパイロット要成課程、その他の術科学校へですね、留学したりとかですね、実に様々な留学があります。


パ−ソナリティ−:

 留学先はやはりアメリカが多いんでしょうか。


増田局長:

 そうですね、特に日米同盟、これは一昨年、日米安保改定50周年を迎えたことからわかりますようにですね、長い歴史を持っておりまして、そういう意味では英語はかなり昔から重要であったわけですね。それで近年、更にですね、日米同盟、深化が進んでですね、自衛隊の現場レベルでもかなり日米連携が進んでいますので、以前に比べて英語の重要性が更に高まっているということは間違いないですね。もちろん国際共通言語としての英語の重要性もですね、世界のグローバル化に伴って高まっていると言えると思います。

パ−ソナリティ−:
 なるほど、アメリカは、大震災の際は、トモダチ作戦という、トモダチという名称を使われるほど、深くなっておりますしね。やはりそうなんですね。

増田局長:
 はい、あと防衛駐在官がですね、世界各国の在外公館ですね、具体的には38箇所の在外公館に派遣されていますけれども、また、文官もですね、重要な国へアタッシュ、あるいは領事として派遣されています。それとあと、自衛官が、警備官としてですね、派遣されている例もあります。これらに派遣される要員は、当然ながら任地で必要となる語学をですね、じっくりと勉強してから行くことになるわけですね。


パ−ソナリティ−:
 皆さんがしっかりと身につけてから、行かれるんですね。

増田局長:
 はい、近年、特に注目すべき点はですね、国際平和協力活動が活発化しているということがあります。92年にカンボジアPKOに派遣して以来、これまで約30の海外での活動を実施してですね、のべ4万人を超える自衛隊員が派遣されているんですね。現在でも、ゴラン高原、ハイチ、東ティモール、南スーダン、そして海賊対処のためにアデン湾等にですね、自衛隊が派遣されています。こういったことから、外国語の重要性は飛躍的に増大しているというふうに言えると思いますですね。

パ−ソナリティ−:
 いろんな国ともやはり交流も出てくると思うんですが、英語以外にも学ぶ外国語というのがあるんでしょうか。

増田局長:
 はい、あります。自衛隊の内部での語学教育といえば、小平学校が有名ですけれども、それに限らずですね、行われてましてですね、同盟国の言葉である、また国際共通言語である英語はもちろんですけれども、「露華鮮」に伝統的に力を入れてきました。「露華鮮」というのはですね、「露」はロシア、「華」は中国ですね、「鮮」は韓国、北朝鮮の言葉でありますけれども、要するに我が国周辺国であるこれらの国の言葉ですね。それでやはり一国の安全保障にとっては、良きにつけ悪きにつけですね、周辺国の存在が大きな影響を与えることは否定できない事実だと思いますですね。そういう意味では、防衛省・自衛隊が「露華鮮」の教育に力を入れてきたのは当然のことだと思います。ただ、昔と異なるのはですね、近年これら周辺国との防衛交流が活発化しておりまして、韓国はもちろんのこと、ロシアやですね、中国とも共同訓練を行う時代となりました。こういったことから、「露華鮮」の教育はですね、大変重要だというふうに言えると思います。

パ−ソナリティ−:
 はい、その他にもこの周辺国以外にも学ばれることはあるんでしょうか。

増田局長:
 はい、更に、最近ですけれども、アラビア語の教育にもですね、力を入れ始めております。アラビア語圏である中東へのですね、派遣が増えてきたからですね。実際、イラク、ソマリア、ジプチ、こういったところではアラビア語が使われておりまして、今後の中東への更なる派遣に備えるという意味でもですね、アラビア語の教育は重要なんじゃないかなと思います。

パ−ソナリティ−:
 派遣先、活動内容により、やっぱり必要な言語というのもどんどん拡がっているんですね。

増田局長:
 そうですね、私もですね、2005年に約半年間、イラクのサマーワでですね、ポリティカル・アドバイザーをやっていたということはこの番組でも再三話してきてますけれども、そのときのアラビア語にまつわる失敗談をですね、したいと思います。

パ−ソナリティ−:
 はい。

増田局長:
 当時はまだ防衛省・自衛隊にはアラビア語の教育課程というものは無かったものですから、独学でですね、アラビア語を勉強しました。NHKラジオのアラビア語コースというのはまだ出来たばかりの頃でありまして、アラビア文字とか文法の基礎はですね、それで学んだんですね。そこまでは良かったんですけれども、更に上を目指しまして、ロゼッタストーンのアラビア語コースという、こういう語学教材を買いましてですね、当時日本のアラビア語教材というのはまだあまり良いものが無かったもんですから、このロゼッタストーンという教材をアメリカからですね、個人輸入で買ったんですね。ただ、ロゼッタストーンのアラビア語コースには2種類ありまして、Eastern Arabic Course というのとですね、Egyptian Arabic Courseがありました。要するに、東のアラビア語コースというのとエジプトのアラビア語コースというわけですけれどもね。
アラビア語は東はイラクの辺りから西はですね、モロッコの辺りまで非常に広い範囲で話されてまして、結構方言がいろいろあるというのを聞いていました。それでコースも2種類あったわけですけれども、イラクと言えば、アラビア語圏の中では東側にありますしですね、エジプトと比べても東にあるわけですから、Eastern Arabic かEgyptian Arabicかと聞かれれば間違いなくEastern Arabic であろうというふうに判断しまして、Eastern Arabic CourseのLevel IとLevel IIというのを買って結構真面目に勉強したんですね。
アラビア語って結構難解なもんですから、「出来る」というにはほど遠いレベルであったんですけれども、イラクに赴任したときにですね、まずはサマーワ宿営地内のイラク人スタッフにアラビア語を使ってみたんですね。
ところが、これが全然通じないんです。相手が話す言葉もよく分かんなかったんですね。よくよく聞くと、私のアラビア語というのはその辺りの方言とは大分異なるものでありまして、レバノン辺りであれば通じるんじゃないかなということだったんですね。これで私もガクゼンとしまして、イラクに行く前は、現地でアラビア語を更に学べるんじゃないかということで期待に胸をふくらましていたんですけれども、一気にですね、学ぶ気力も無くなっちゃったんですね。まあ、そういう失敗談です。

パ−ソナリティ−:
 せつないお話ですね。日本にも結構方言はありますけど、ある程度は通じるんですけれども、同じアラビア語というくくりで通じないほど分かれているんですね。さて本日の自衛隊百科は、「防衛省・自衛隊の語学教育」について、東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきました。局長、本日もどうも有難うございました。

増田局長:
 どうも有難うございました。




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