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自 衛 隊 百 科
(2月放送内容)



テ−マ:「武器」の定義

パ−ソナリティ−:

 自衛隊百科のコーナーです。このコーナーでは毎月1回東北防衛局の増田義一局長にお越しいただいてお話をいただいております。
 局長、今月もどうぞよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 はい、それでは早速ですが、本日はどのようなお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、先般、内閣官房長官談話が出されましてですね、防衛装備品等の海外移転に関する基準が示されました。これによりまして、平和貢献・国際協力に伴う案件と我が国の安全保障に資する国際共同開発・生産に伴う案件についてですね、厳格な管理を条件に防衛装備品等の海外への移転が可能となったわけです。
それと、先般、南スーダン共和国における国際平和協力活動、いわゆるPKO活動にですね、自衛隊が派遣されました。はじめは宿営地施設等の整備を行いながら、今後、道路等の維持補修等のですね、本格的な活動を開始する予定であります。このような国際平和協力業務への派遣の際にはですね、「武器の使用」というのがいつも議論の対象になってきたんですね。
ここで「武器」という言葉が、「武器輸出」、「武器の使用」の両方の案件で出てきたわけですけれども、ここでいう「武器」というのはいったい何か?ということをしっかりと押さえておかないといけないと思いますので、今日は、この「武器」の定義といいますか、その範囲についてですね、お話をしたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、「武器」というと単純に攻撃するものというイメージしかないんですけれども、いろいろとこの範囲というのがあるんですね。

増田局長:
 はい、先ほど申し上げました「武器の使用」でいう「武器」ですね、それと「武器輸出」の問題でいう「武器」というのは同じではないんですね。というか、かなり異なりますので、以下、その解説をしたいと思います。
まず、「武器の使用」の方なんですが、PKOその他の国際平和協力業務においてですね、どういう場合にどこまで武器を使用できるかということが問題となるわけですけれども、そこでいう「武器」の定義というのは、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置」ということなんですね。少し硬い言い方になってしまいましたけれども、これが政府の公式な言い方です。要するに我々が一般的にイメージする「武器」にほぼ一致するんではないかなあと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、そうですね。


増田局長:

 一方、「武器輸出」でいう「武器」はどうかといいますと、国際紛争を助長させないために行う貿易管理を目的としてますので、さきほどの「武器の使用」の場合よりですね、広い範囲でとらえているんですね。一般の方はこれを聞いて、えっ? これもダメなの?と意外に思われる場合もあるかと思います。「武器輸出」でいう「武器」についてはですね、「軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの」というのが政府の公式の言い方なので、なんだ、我々がイメージする「武器」とほぼ一致するんじゃないかとお思いかもしれませんけれども、しかしながら、武器輸出三原則等の方はですね、「武器」については、実際にはかなり広い範囲でとらえております。専門的な言い方になりますけれども、「輸出貿易管理令の別表第一に記載されているもの」とこういう言い方になるんですけれども、この輸出貿易管理令別表第一ではですね、いかにも武器と思われているもののほかにですね、軍用の、車両、船舶、航空機、そして、装甲板とかですね、ヘルメット、防弾衣、仮設橋、探照灯などに至るまでですね、この別表第一に記載されています。また、付属品や部品も対象になるほかですね、製造用の装置や試験装置、またその付属品や部分品も含まれますので、非常に広い範囲でですね、規制の対象になります。また、これらハードだけではなくて、製造するための技術までも含まれます。この考え方は、先進国を中心に行われている武器等の輸出管理に関する国際的な合意に沿ったものとなっているわけであります。


パ−ソナリティ−:

 「武器輸出」の「武器」といっても本当に広い範囲なんですね。


増田局長:

 そうですね。先般の「防衛装備品等の海外移転に関する基準」ではですね、平和貢献・国際協力に伴う案件の輸出が可能となったわけですけれども、これは、これまでの国際平和協力業務での経験を踏まえて行われたものなんですね。


パ−ソナリティ−:

 はい、それでは国際平和協力業務、実際にはどのような経験を踏まえて作っていったんでしょうか。


増田局長:

 自衛隊はこれまで、様々な場所で国際平和協力活動を行ってきました。様々なミッションをこなしてきたわけですけれども、中でも、古くはカンボディア、東ティモール、イラクの復興支援、これらにおいてですね、施設部隊が、道路等の維持補修を行ってきました。その際に、パワーショベル、ドーザ、グレーダ、バケットローダ、こういった建設機材である装備品を持っていくわけですけれども、これらの建設機材を使って道路補修を行って、それが終了したときですね、撤収するという段階になりますと、受入国は、ぜひその建設機材を譲ってもらいたいと、ぜひ置いていってもらいたいというふうに要請してくるわけですね。自衛隊としても必要に応じて協力したいと考えているんですけれども、この自衛隊の保有する建設用資機材の中にはですね、民生用の建設機材と外見も機能もほとんど同じなんですけれども、武器に該当してしまうというものがあります。なんでそうなるかといいますと、よく見るとですね、パワーショベルとかそういうものに銃を掛ける取手のようなものが付いているんですね。危険な状況の下で銃を所持しながら道路補修等が出来るようにですね、こんなものがついているわけですけれども、それだけなんですけれども、だからこのパワーショベルは民生用じゃなくてですね、軍用ということになるんですね。まあ今後の国づくりのためにですね、建設用資機材は喉から手がでるほどですね、欲しいと受入国は思っているわけですけれども、PKO等への自衛隊の装備品の携行はですね、武器輸出三原則等の例外とされているんですけれども、現地でこれを供与するということは例外となってないんで、それを敢えて断って持って帰らなければならなかったと、そういう状況にあったわけですね。また、これらの建設用資機材が破損して使えなくなってしまった、そういった場合、これは現地で廃棄してきたいというふうに考えるわけですけれども、こういった場合でも、勝手に捨ててくればですね、勝手に武器輸出したということになってしまいますので、廃棄するようなものをですね、輸送費を払って持ち帰ったというようなこともあったわけです。
こういった問題もありまして、先般の防衛装備品等の海外移転に関する基準という中でですね、平和貢献・国際協力に伴う案件が示されたわけであります。


パ−ソナリティ−:

 なるほど、経験によっていろいろとこう、実際に変わってきたというわけですね。


増田局長:

 そうですね、「武器」といっても、場合によってですね、範囲がかなり違ってくるということにつきまして、今日は説明させていただきました。

パ−ソナリティ−:
 はい、わかりました。本日は東北防衛局の増田義一局長に「武器」の定義、「武器」の範囲について、お話を伺いました。本日もどうも有難うございました。

増田局長:
 有難うございました。


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