防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A
(11月放送内容)



テ−マ:日本の防衛航空機産業

パ−ソナリティ−:

 防衛省・東北防衛局がおくる日本の防衛Q&A、このコーナーでは防衛省・自衛隊や日本の防衛について、詳しく分かりやすくお話いただきます。今日も東北防衛局の増田義一局長にお話をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


増田局長:

 よろしくお願いいたします。


パ−ソナリティ−:

 それでは早速ですが、今日はどういったお話をいただけますでしょうか。


増田局長:

 はい、防衛省が、24年度予算の概算要求でですね、F−Xを4機要求しました。まだ具体的にどの機種にするかは決まっていませんけれども、今年中には決まりますので、これから年末にかけて、マスメディアでも頻繁に取り上げられるのかなと思います。この機種選定が、今後の日本の防衛航空機産業、ひいては防衛生産技術基盤に大きな影響を及ぼしますので、今日は、日本の防衛航空機産業についてですね、基礎的なことを交えてお話ししたいと思います。


パ−ソナリティ−:

 はい、よろしくお願いいたします。

増田局長:
  日本の防衛航空機産業というのは、戦前は皆さんご存じのとおりゼロ戦というですね、当時としては優秀な戦闘機を生産していたわけですけれども、敗戦でこれが途絶えまして、その後、1955年からF−86のライセンス生産というのを開始しましてですね、その後、綿々と50年以上戦闘機の開発・製造が絶え間なく続いてきたわけですね、それが先般F−2の最終号機の生産が終了しましたので、これで一旦終わってしまったわけですね。


パ−ソナリティ−:

 そうなんですか。それではこれまでどのような戦闘機が開発・製造されてきたのでしょうか。


増田局長:

 今までの歴史をたどりますと、最初がF−86でライセンス国産ですね、そのあとF−104をライセンス国産、T−2を国内開発、F−4をライセンス国産、F−1を国内開発、F−15をライセンス国産、そしてF−2を日米共同開発といった具合にですね、ライセンス国産と国内開発などを織り交ぜながら、戦後50年以上にわたって絶え間なく続けてきたわけですね。それで先ほど申し上げたとおり、先般F−2の最終号機の生産が終了しましたので、今年中に機種選定されるF−Xがですね、これがどうなるか、それが直輸入となってライセンス国産ということをしないことになりますと、今後最低15年間は戦闘機の国内生産は途絶えます。その場合、企業側はですね、仕事もないのに戦闘機の開発や生産に携わる技術者とか技能者をですね、雇用しておく余裕はありませんから、そういった方々は離散してしまうのではないかと、そうするとその将来いざ戦闘機の開発をですね、再開しようとしても、技術が伝承されませんので、戦闘機の開発生産ができなくなるのではないかということが懸念されている、まあそういった声があがっているわけですね。


パ−ソナリティ−:

 懸念されているということなんですが、戦闘機開発が出来なくなると実際に何か影響というのがあるんでしょうか。


増田局長:

 はい、戦闘機というのは、技術の粋を集めていますので、その波及効果が非常に大きいんですね。特に宇宙航空産業の中での波及効果が大きくて、たとえば民航機の生産をやるには、やはり戦闘機の開発生産をやって、そこからの波及効果を得るということが非常に大事なわけですね。そこで先進各国はですね、こぞって戦闘機開発生産に取り組んでいるわけであります。


パ−ソナリティ−:

 戦闘機の開発生産というのも、技術力というのがまた大切なんですね。


増田局長:

 はい、ただ近年ですね、これを1国だけで一つの国だけでやるのが難しくなってきています。戦闘機は技術の粋でありますし、先進技術を結集していますので、その開発には莫大な費用とそれに伴う大きなリスクがあるわけですね。それで各国はそれぞれ保有する叡智を結集する、寄せ集める必要がありますので、やはり1国だけで戦闘機を開発することが非常に難しくなってきているんですね。それで、戦闘機を複数の国で共同開発するという動きが加速しています。例えば、F−Xの候補機となっているのが3機あるんですが、そのうち2機種はですね、共同開発ですね。F−35は9カ国で共同開発、ユーロファイターは4カ国で共同開発しています。
こういった国際共同開発というのは、戦闘機にかぎらずですね、A400Mという輸送機があるんですけれども、こういったものとか、ユーロホークという無人航空機とかですね、あとはレーダーとか通信システムまで及んでいます。


パ−ソナリティ−:

 いろいろあるということなんですが、協力して開発しあっているということ自体知りませんでした。


増田局長:

 それで、こうした国際協調はですね、開発だけに留まらなくて、製造にも及んでいるんですね。戦闘機を部分部分に分けて、その部分を最も安くて最も良いものをつくれる国がその部分を分担して製造すると、つまり世界のベストバリューを採用していくと、そして最終的にこれを合体していくというですね、国際分業がワールドワイドでどんどん進んでいます。これで世界中で最も良いものを最も安い価格で生産しようということなんですね。そうでもしないと戦闘機の価格というのが非常に高くてですね、各国とも財政事情が非常に厳しいもんですから、そういった中で必要機数を調達するにはこういうことが必要だといったことになっています。
それとあと、こういった国際協調の動きは開発・生産にとどまらなくてですね、世界の防衛関連企業が、国境を越えた企業再編ですね、M&Aこれによって規模の拡大、あるいは競争力の向上を図っています。例えば、EADSといってヨーロッパを中心にした会社がありますけれども、これはドイツの企業とかスペインの企業などがですね、合併してできた企業であります。

パ−ソナリティ−:
 なるほど、日本の生産体制と何かよく似ていますね。

増田局長:
 そうですね、そういえば、F−X候補機種のですね、F−35の共同開発で中心的役割を担っているのはロッキード・マーチン社という会社ですけれども、この会社もロッキード社とですね、マーチン・マリエッタ社、ロラール社、その他主要企業7社が合併してできた企業なんですね。
こんな感じで防衛関連企業はですね、M&Aによって、しかも国境を越えてですね、開発・生産はもちろんのこと、販売や修理・補修に至るまで、ワールドワイドに最も効率的な形を追求していくと、それに伴ってコストダウンも図るという態勢になっているんですね。
ただ、日本はどうかといいますと、武器輸出3原則等という非常に厳しい制約がありますので、こういった動きには一切参加できません。いま流行りの言葉で「ガラパゴス化」というふうな言葉がありますけれども、こういった道を歩むことにならないかということを心配している方々もいらっしゃいますね。
いずれにしましても、50年以上に亘って続いた戦闘機生産の流れが、ここで本当に途切れてしまうのかどうかということでですね、それはこのF−Xの機種選定が終わる年末までには明らかになると思いますので、是非皆様注目していただきたいと思います。

パ−ソナリティ−:
 はい、わかりました。本日は東北防衛局の増田義一局長に日本の防衛航空機産業についてお伺いいたしました。どうも有難うございました。

増田局長:
 どうもありがとうございました。
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